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砂鯨を追う 三砂目 港へ

ぜひ一砂目二砂目もお読みください。オリジナル物語の三話目です。



 リリベットと歩きながら僕は景色を見渡す。
砂埃がひどくてあまり見えないが、どうやら空は淡いエメラルドグリーン、いや翡翠色?
そして、地球のものより小さめの太陽のような星が2つ。砂埃の中で淡く光る。
あと、空に緑が茂る島が浮いている…。どういう原理だろうか。

「他の人もリリベットみたいに綺麗な色の髪なのかな」
「この星の人の髪は綺麗みたいね。旅行の人は良くそれを言うのよ。」

僕はわくわくした。
次はどんな綺麗な色をみれるだろう。
何も知らない異星で、何も持たないのだから、もっと慌てればいいのにと誰かは思いそうだが、慌ててもどうにもならな過ぎるから、思いきり楽しむ事にしたのだ。

「港のみんなは良い人達だけど、ちょっと荒いの。他の星の礼儀はあまり解らないから、失礼があったらごめんなさいね。」

少し先を歩くリリベットの髪がキラキラと光をうけて輝いているのに見惚れていた僕は、ハッとする。
そういえば、この星の資料はほぼ無かったから、何も解らない。

リリベットとの接触があまりに違和感なく済んでしまったから、油断していたが…確かに全員が目の前の少女のように友好的とは限らない。

とりあえず、聞けることは聞いておこうと僕はリリベットに質問をすることにした。

「僕も、星の旅行は慣れてないんだ。物覚えも悪くてね。ガイドブック…的なモノを読んだけど、ほとんど忘れちゃったんだ。失礼があったら嫌だから、質問させて欲しいんだけど…」

「いいわよ。私も解らないことは答えられないけどね。」

「じゃあ、あの、この星って何で生計を立ててるの?」

地球のように様々な職業が成り立ってるのかどうか。ここは気になる。だって、今の所見渡す限り砂ばかりだ。

「んー。漁ね。基本的に。あとは漁で採れたものの加工品の輸出かしら。」

漁?海はなさそうだし、川もなさそうだし、ぱっと見上げた空に鳥の影も無い。
なんだろう?砂を掘ると貝がいるのか。
どうしても地球の基準で考えてしまう自分がいる。
ここは太陽系からも遠く離れた異星だというのに、呼吸ができ、会話のできる人型の生命体がいるだけで気が緩む。

「輸出って他の星とやりとりしてるの?」

「そうよ。この星の加工品は、とても丈夫だから人気なの。」

「へぇ!それはぜひ見てみたいなぁ。」

「港のみんなに紹介したら、見せてあげる。」

「有り難う。楽しみだなぁ。」


後ろをノコノコついてくる異星人は、キョロキョロと辺りを見回している。
『落ち着き無くて…まるでウィーウィーみたい…』とリリベットは思う。
どう見ても旅行者ではないが、危険そうにも見えない。しかし、異星人というのは解らない事だらけだから、油断してはいけない。
港のレーヴェに見せれば、この異星人の本性を暴けるはずた。

異星人の質問に答えつつ、リリベットは彼の観察を続ける。

「そういや、リリベット」

「なぁに?」

「君は何歳なの?」

何歳?ナンサイ?なにかしら?知らない言葉にリリベットは困惑した。
少し考えて見るけれどさっぱり解らない。

「せんせい。ごめんね。ナンサイってどういう事?」

素直に聞くことにした。
そう言われた異星人は、とてもビックリした顔をしたあとに、少し困った顔をして頭を掻いた。
そうか。この、異星人の星では「ナンサイ」は定番の質問なんだろう。

「えーっと、そっか、ごめんね。僕の星では普通の質問なんだ。えー、なんていうか、生まれてからどれくらい経ちますか?」

今度は解った。なるほど。生まれてからの期間かぁ。

「今度は解ったわ。有り難う。でもね、せんせい。この星の命は期間をはかったりしないから解らないわ。私は夜の期間を20回くらいと昼の期間を20回くらい過ごしてると思う。でも、あなたの星に夜の期間と昼の期間がなければ解らないわね。」

私の答えを興味深そうな顔で聞いている。
他の星ってどんなものなのかしら?

「ねぇ、先生の星の事も教えて」

リリベットは後ろをノコノコついてくる異星人の星が少しだけ気になった。
こんなに無防備な生き物がいる星。
一体どんな星なのかしら。

せんせいは、いっしゅんキョトンとして、それから思い出すように上を向いて自分の星の事を話し始めた。

「僕の居た星は、地球って呼ばれていてね。青くて丸くて綺麗なんだ。人間って呼ばれる僕達みたいな見た目の生き物の他にも、沢山の生き物がいて、植物もたくさんあって、文明が発展しているんだ。太陽は1つで、朝と夜がある。夜になると月という衛生が見えるようになるよ。陸と海がある。」

「海があるのはお揃いね」

私は目の前の海を横目に、せんせいの顔を見た。
せんせいは困ったような顔をする。

「あのね、リリベット…起こしてくれた時にも言っていたけれど、海って…どこに?」

「?どこって…」

私は砂流れの激しい海を指差して

「目の前に広がってるじゃないの。砂の海が。」

と言った。
それを聞いたせんせいは、頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
え…?どうしたの?!何かまずかったかしら?

「そ…そっかぁ…そうだよね。うん。水が満たされたものだけを海って言うわけではないかぁ…」

何かをブツブツ言っている。
もしかして、この異星人の星の海は全く違うものなのかもしれない。
星ごとに特色ってあるものね。と、リリベットは冷静に思うのだった。同時に、本当にガイドブックの中身を何も覚えていないか、見てこなかったなのだなと思う。
頭を抱えてしゃがみこんでいた異星人は、乾いた笑いをしながら、あり得ない質問をしてきた。

「じゃ、じゃあさ、リリベット。砂の海では、砂浴というか、泳いだり遊んだりするのかい?」

「はぁ?砂の海で泳ぐ?そんなのっ」

「ありえないね。砂の海は落ちたら終わりだよ。」

リリベットの言葉に続けるように、大人ひだ声が答える。

「リリベット。その異星人はお客様かい?」

「レーヴェ…」

「誰?」

赤い髪をなびかせて、金褐色の瞳をした長身の老女が二人の前に立っていた。
 

新たな出会いは導き。
動き出す物語。

四砂目へ


《作者のモニょモニョ》

ちょっと時間経ってしまった。
色々楽しくて…。
やっと新しい星の人を出せました。
やっと先生が沙の海に気づきました。

他の星の事を書いているので、地球基準にしたくないのですが、なにせ私のこの体は他の星を知りません。
それと、人型の星のほうが少ないと思うので…なかなかその感覚を文字に出来ず、地球よりな話になりがちです。
まあ、宇宙は広いし地球みたいな星もありますよ。

次は砂の海を舞台に少し話を進められるかなと思っています。

のんびり進行ですがお付き合いいただけたら幸いです。

銀河の果から愛をこめて。
動き出す物語。
知らない星の物語。

©2022koedananafusi

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