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砂鯨を追う 二砂目 砂の…

よろしければ、一砂目からお読みください。オリジナル創作の続きです。




―彼は旅に出た。
-それは遠い銀河の果。

そして、青年は知るのだろう。

銀河の果から愛を込めて。
辿り着く物語。
始まった物語。




目は開かないがジャラジャラという音が聴こえてきた。

あ…波の音が聴こえる…
砂を動かす波の…

あれ…
もしかして地球かな…海…
失敗…したのかな…

あーあ…
刑務所嫌だなぁ…

どうも身体は完全に起きてはいないらしく、聴覚しか役に立たない。意識は覚醒しているので、耳からの情報で推測する。
この擦れる砂利のような音。
海だろう。ということは、地球だ。
いや、他の星にも海はあるのかもしれない…。いや、きっと地球だ。
だいたい、星間移動なんてものは無理だったのだ。
人間一人分を分解してもう一度組み直すなんてやはり夢のまた夢だったんだな。

そんな事を考えていると、聴覚に何やら砂の音以外のものが混じってきた。

「…!…って!」

え?なに?
今身体がクタクタなんだ…

どうせ研究所関連の警備隊か何かだろう。
埋め込まれたGPSチップめ。仕事が早いんだ。
地球の技術はやはり素晴らしい。
でも、僕は地球の外にでたかったのになぁ…。


どうせ捕まるなら…
あと少し…波の音を…

「もうっ!起きてってば!!」

その声に体が覚醒した。
ガバッと起き上がって、目に飛び込んできたのは、1面に広がる……砂だった。

「海…じゃない?」

「何言ってるの?海でしょ?」

ハッとして声のした方に視線を向けると、ローズクォーツにそっくりな髪色の少女が腰に手をあて呆れた表情でたっていた。
まんまるなその瞳もローズクォーツの色だった。

綺麗な色だな。

一瞬そんな事を思い、すぐに考え出す。

あぁ、ここは地球ではないんだ。
地球人にはない色素をみて確信する。
それにしても、海じゃなかった。砂?しかし目の前の少女は海だといった気がしたが……
あの、シャリシャリした音は砂単体の音か。
確に、嗅覚の戻った今感じるのは乾いた砂の香りだ。潮の香りはこれっぽっちもしない。
どうやら、どこかの星には辿りつけたようだ。


そして、良かった。本当に…良かった。

「良かった……人型だ」

思わず本音が漏れる。様々な形の知的生命体がいるだろうと心してはいたものの、やはり自分の出身の星に近い形をしていると安心する。

「ねぇ…あなた変よ?大丈夫?」

心配そうな顔をした少女に大丈夫だよと言って立ち上がる。

良かった。つま先もちゃんとついてきた!
体を伸ばして隅々まで確認したが、欠損はなさそうだった。頭に埋め込んできたAIの異星語変換装置も上手く作動しているらしい。この星の言語は地球と交信のある星と似ているようだ。
少女とのやり取りは問題なさそうに見える。

「えーっと、こんにちは?」

まずは現星住人と交流しなければ。
僕は目の前の小柄な少女に挨拶をした。

「……。」

あれ?反応がない。もしかして、こんばんはだったかな?それとも何か他の国の言語でのほうが…いや、そもそもさっきも通じたと思っただけで、変換がどうされてるかも…

「ねぇ…あなた、旅人?」

色々と考えだした僕に、少女はそう問いかけてきた。
おっと、確に何者かも言ってなかった。怪しいから黙ってたのか…。

「そう…なんだ。旅を、しててね。ちょっと失敗しちゃって気を失ってたんだよ。声をかけてくれて助かったよ。有り難う。」

地球の事は言わないでおこうと思った。
この星の決まりもわからないし、何がきっかけで地球に強制送還されるかわからない。
まぁ……データが正しくて、目的の星ならば、ここは地球からものすごく離れた惑星なんだけれど……。

「そう。この星に旅で来る人って珍しいのよ?何もないんだから。」

少女は少し安心したのか、そんな事を言った。
な、なるほど。星間旅行が他の星では盛んだと言うのは地球での交信で聞いてはいたが…まさか、観光に適した星とかそういう括りがあるとは思ってもみなかった。
いや、そんな作り物の話ならいくらでも地球にだってあった。それに、交信したなかでもそういう話は出ていたんだ。
でも、それをいざ目の前にすると『夢みたいだ』と思わずにはいられなかった。

「実は、この星の石に興味があるんだ」

僕は、とりあえず話を繋いだ。
貴重なこの星の人だ。
なんとしても繋いで、もっと大人に会わなくてはならない。そして、色々お願いしないとならない。
なぜなら…なぜなら僕はあの隕石と、少しのお金と小鳥のついた家の鍵が白衣のポケットに入っているだけで何も持っていないのだから。
さっき思い出した。


未完成の移動装置だから、なるべく何も持たずに来ようとは思ったが、まさか小さなバックパックを飛び込む直前に落とすとは思わなかった……。
観測所の所長がやれやれと溜息を付き『お前はそういう奴だよ先生。』と言うのを想像して苦笑いした。
そういや、彼にも何も言わず来てしまった。
せめて言うべきだったか。
いや、いい。情報は何処から漏れるかわからないから。
きっと、感の良い所長ならわかってくれるだろう。
いつか…地球と通信する術が見つかったら、その時はきっと一番に連絡をとろうと僕は思った。 

少女は僕の言葉に首を傾げた。

「この星の?そのへんの石?」

「いや、友達がこの星にはとても綺麗な石があるって言ってたから見たくてね。」

ぼくの持つ隕石がこの星にとってどんな物か解らない以上、迂闊には出せない。
もしかしたら、そこら辺の石ころくらいの価値しかないかもしれないし、地球で言うところのダイヤモンドかもしれない。
解らないことだらけだ。慎重にいこう。  

わからないといえば、先程から目の前に広がる砂も解らない。
風が吹いているとはいえ、ジャラジャラ音がなり過ぎな気がする。まるで流れがあるかのようだ。

「綺麗な……。」

少女は少し考えるような顔をしたが

「私じゃきっと、力不足よ。いいわ。旅人さん、なんだか危なっかしい気がするから、港のみんなを紹介してあげる。そしたら、石のこともわかるかもしれない。」

そう言った。
有り難い申し出だ。なんて、優しい子だろう。
その髪や瞳の色の石と同じく愛に溢れているのだろうと思った。

「有り難う!助かるよ!ところで君の名前を聞いてもいいかな?」

「リリベット。みんなはリリって呼ぶよ。」

「リリベット!素敵な名前だね」

どういう変換をしているかは不明だから、僕が聞いた少女の名前は、この星での本当の名前と言うわけではないのだろう。
しかし、僕の中で少女はリリベットとして記憶された。

「あなたは?」

リリベットの瞳がキラキラと光を浴びている。
やはり綺麗だな…。

「…実は記憶が曖昧で名前を忘れちゃったみたいなんだ。先生って呼んでくれる?故郷の星ではそう呼ばれていたんだ。」

そう。これは嘘でも何でもなく、本当に自分の名前を忘れてしまっていた。思い出そうとするが思い出せない。移動の副作用かもしれない。
この感覚は、忘れたというより消えたに近い気がするが…今はそっと横に避けておこう。

「せんせい、は名前じゃないんだ?ふーん。まぁ……いいわ。じゃあ、よろしくね、せんせい。」

こうして、僕の旅は始まったのだった。


-少女は出会う
―それは星の欠片の導き


どう見ても、旅人ではない。
荷物が少ないというか、無い。
星旅行なのにありえない。
ここ数日、エアポートが動いたのを見ていない。

この人は嘘をつている。
でも悪い人ではないと思うの。

この星のことを一つも知らなそう。
でもだから、この人なのかもしれない。

とりあえず、一人ではどうにもできない。
まずは、みんなにあわせてみよう。

今日は砂流れが速いから、みんな岸にいるはず。


にこにこと人当たりのいい笑顔を浮かべる異星人を見つめリリベットはそんな事を考えていた。

三砂目へ


《作者のぐだぐだ》
お読みくださった皆さま、有り難うございます。お疲れ様です。
ちょっと長くなってしまったうえに、全く話が前に進みませんでしたね。
その場から動かずして二砂目が終わってしまいました。

主人公は考え出すと止まらないタイプです。
そして、おっちょこちょい。
なのに、行動が大胆すぎる。

実は色々決めていません。大まかには決めてるけど。
だって、彼は彼なんだから、何時だって彼でしょう?という私の謎思考。笑
書いているうちに知ると思います。


私の物語は何時だって白紙に思うままに足跡をつけるようなものなの。
本当、その辺り物書きに向いていません。笑

こんな感じなので、結末までに一体何砂必要なのでしょう。作者は飽き性なので、ヒヤヒヤします。
まぁ、誰か見てくれてれば少しはマシだろうというわけで
良ければ次回作もご覧くださると嬉しいです。


銀河の果から
愛を込めて。

出逢う物語。

©2022 koedananafusi


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