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男の甲斐性

新大阪駅の改札を出てすぐにある蕎麦屋。
ここは、女の行きつけの店である。
どれも美味しいが、イチオシはきつねそば。700円だ。
丼を埋め尽くすほど大きな揚げはジュワッと甘く、
関西風のお汁は出汁がきいて、たまらなく美味しい。


その日は、土曜日だった。
旅行客やビジネスマンで満席となった蕎麦屋の店内。
一番奥の席では、いつものように女がきつねそばを食べていたが、
今日は珍しく男と一緒だ。何やら話し込んでいる。


女:このあいだ初デートに誘われて食事に行ったんですけどね、
  合計金額が13000円ほどだったんですよ。そんな時、どうします?
男:当然、男が払うやろ。
女:やっぱ、そうですよね!それが『男の甲斐性』ってもんですよね?
  ところがその人、どうしたと思います?私がお財布を出したら
  「6000円でいいよ」って言ったんですよ!要するに
  「500円ほどは僕が持つから、6000円でいいよ。」ってこと。
  どう思います?
男:何やそれ!しょうもない男やな!幾つくらいの男?
女:私より1歳年上だったので、39歳です。
男: しょうもないのう。大した金額違うねんから、それくらい出せよ。
女:そうなんですよ!うちはね、父が
  「女性と食事に行ったら、男がご馳走するものだ」という人で、
  私もそう教えられてきたから、それが『男の甲斐性』だと
  思ってしまうんですよね。もちろん『出して当然』なんて
  思いませんよ。「ありがとうございました。」って思います。
  そして、その心意気が嬉しいなぁと思います。
男:うんうん。
女:それとね、私自身が人によくご馳走するんですよ。
  例えば年下の子を連れて行ったら、男だろうが女だろうが
  絶対に一円のお金も出せないしね。
  自分が気前よくご馳走するからこそ、ケチな男が大キライなんです!
男:当然やろ。
女:もちろんね、一軒目ご馳走になったら、二軒目は全部私が
  払いますよ。別にお金に困ってご馳走になりたいわけじゃないし。
  要するに、せめて初デートくらいは、
  男としてカッコつけてほしいと思うんです。
男:わかるわ。で、結局どうしたん?
女:正直なところ、500円余分に払ってもらって「ご馳走さまでした」
  というくらいなら、一円単位までキッカリ割り勘にした方が、
  よっぽどスッキリするでしょ?
  だから「500円も払わせてください。ちゃんと半分に割りましょう!」
  と言ったら、「いいよ。残りは僕が払うから。」だって。
  端数支払ったことをカッコつけるんです。
  もうそれ以上、強く言えませんでした。
男:何じゃそれ!しょーもないヤツやのぅ!
女:まだ続きがあるんです。二軒目に誘われたんですよ。
  私としては興ざめしたから帰りたかったんですが、
  それもあからさまなので、ひとまず行きました。
  それに、もしかしたら会話していて良い所も見つかるかも
  しれないしね。
男:そしたら?
女:楽しくなかったです。会話をして気が合うわけでもなく、
  話を聞いて尊敬するような部分も特に無く、
  「早く帰りたいなぁ」って。
  だから1杯飲み終えたところで「そろそろ帰ります。」と。
男:ほう。ほんなら?
女:一杯ずつお酒を飲んだので、合計1000円ですよ。
  で、私が「さっき多めにお支払い頂いたので、ここは私が
  お支払いします。」と言ったんです。
  そしたらあっさり、「ごちそうさま!」だって。
男:何やそれ!しょうもない男やのぅ。男なら1000円くらい出せよ!
女:別に私も1000円くらい払うけどね。自分から誘ったデート
  なんだったら、初回くらいカッコつけてよって思うわ。
男:しかも年上の男やろ?・・・ありえへんな。
女:でしょ?ホント、ケチな男なんて大っキライ!!!
男:そろそろ行こか。
女:はい!


男と女はレジへと向かい、男がポケットから財布を取りだした。


女:あ!お支払いします!
男:いらんわ。あの話の流れで割り勘にしたら、
  あとで何言われるかわからん!
女:ちょっ、ちょっと待ってください!
  そういうつもりで言ったんじゃないんです(汗)
  あくまでデートでの話なんで、これは、、、
男:新手の詐欺かと思ったわ(笑)
女:いや~ん。


これは、MBSラジオ『それゆけ!メッセンジャー』放送後、
メッセンジャー黒田氏と六車奈々の会話である。
黒田氏は、『美味しい蕎麦屋があるから』と連れて来られたのであった。


念を押すが、そういうつもりで、あの話をしたわけではない。
そして私は、男でも女でも、ケチな人間は大キライだ。


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