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#小説
小説『Here and Now』試し読みその1
※この小説には暴力的な描写がごさいます。そういうものが苦手な方は、お手数ですがブラウザバックをお願いいたします。
一
何故こんな目に遭うのだろう。 閉じ込められたロッカーは、カビ臭かった。 「おら、高島、出てこい!」
罵声がロッカーにぶつかって、いくらかくぐもる。 ロッカー越しの蹴りは、身体を蹴られるよりも、大きな揺れを起こした。 ――いっそ、ここから出ない方がいいんじゃな
小説『Here and Now』試し読みその2
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孝雄は汗まみれになって目覚めた。
なんて夢を見ちまったんだろう、と、憂鬱な気分が背中にのっかかっていた。
――まったく、いつになったらお前らは俺を解放し てくれるんだよ。
防音カーテンのせいで、部屋は真っ暗だった。外からの光は、自分で開かないかぎり、入ってこない。もっ
小説『Here and Now』試し読みその3
※この小説には暴力的な描写がごさいます。そういうものが苦手な方は、お手数ですがブラウザバックをお願いいたします。
――で、今日はどうする? 孝雄は考えた。靴屋のバイトは九時からだ。そこから八時間働いて、帰るのは六時過ぎ。ケーキでも買うか。独りでお祝いして、適当にマスかいて寝るだけなんだろうな。
俺がこんな底辺の人生を歩んでいるのは、過去のせいだ、と孝雄はいつも強迫的に考えていた――あんな目
小説『Here and Now』試し読みその4
※この小説には暴力的な描写がごさいます。そういうものが苦手な方は、お手数ですがブラウザバックをお願いいたします。
過去を振り返ることは嫌でたまらなかったが、深夜の雨音は孝雄をいっそう内向させた。現実にあった悪夢を見たことも作用していた。
もし、俺にあの学生時代がなければ、と孝雄は仮定した。もしあんなことがなけ れば、俺にだって青春といえるものがあったはずだし、自分を消すことを常に考え