Sweet 19 Blues
私は19歳。
電話の相手の声は多分私より若い。
『あ、じゅあ間違いですね!すいませんでした。それじゃ…』
それじゃ…の『じゃ』くらいの時に、食いぎみに私は言った。
「よかったら今度会わない?」
すんなりと相手の女の子はOKしてくれた。
そう私は知り合いに電話したつもりが、後で知るのだが、後楽園の近くに住む16歳の女子高生に間違い電話をしてしまったのだ。
時代は90年後半、まだ世の中はアムラーだの、タイタニックだので騒いでいた。
今思うとドラマのような出逢い方である。
間違い電話→会う約束。
私は当時神奈川県に住んでいたのだが、そこはレディーファースト、後楽園の駅の一番後ろの場所(当時椅子があった)で待ち合わせることになった。
正直めちゃくちゃ緊張した。
とりあえず清潔感ある服装にしたくて、友達に借りたラルフローレンのシャツに、ブルージーンズ、靴はクラークスのワラビーを履いて待ち合わせ場所へ向かった。
松たか子に似てる。
それと女子高生。それくらいしか情報がないのだ。
私は予定の時刻よりも早く後楽園に着き、一番後ろの席を確認し、駅にある鏡で何度も、何度も髪型、服装をチェックした。
私は大人しく一番後ろの席に身を置いた。
しばらくすると、ひとりの女子高生が遠くからこっちに歩いてくる。
『あ、あ、はじめまして』
私は言った。彼女も後に続いた。
相手は松たか子より全然可愛く思えた。綺麗な長い黒髪に幼さの残る笑顔女の子だった。
そねまま改札を二人で出て後楽園遊園地へ向かい、そこで学校のこと、友達のこと、親のこと、間違い電話のこと、色々話しあった。
もうこの時点で私は彼女に恋心を抱いていた。
とにかく笑顔が素敵な女の子なのだ。
彼女がつけていた香水の香りも、彼女の言葉使いも、好きな芸能人の話しをしている彼女も、全部可愛く思えたる。
その日は帰らないと親がうるさいからとのことで、夜の10時頃別れた。
それからは間違い電話ではなく、彼女に正式に正確に電話した。
それから何度かデートして、私たちは付き合うことになった。
私はまだ19歳だった。
それから彼女とは4年間付き合った。
彼女は短大へ進学し、そして就職のタイミングで彼女から別れ話を言われた。
それは私にはなんとなく予期してたことであった。
お互い会う機会が徐々に減り、4年間も付き合っていると会話に新鮮さも生まれなくなっていた。
でも彼女への好きな気持ちは私の中では変わってなかった。でももううまく伝わらない。
彼女はスヌーピーが好きだった。
4年目の記念日にと、大きいスヌーピーのぬいぐるみを買って彼女に渡す準備もしていた。
結局スヌーピーのぬいぐるみは渡せぬまま、私たちは別々の道に進むこととなった。
今でもスヌーピーや、ラルフローレンのシャツ、クラークスのワラビーを目にすると、19歳だった当時の自分と彼女のことを想い出す。
今となっては良い想い出。
きっと今ごろ、彼女は誰かのお嫁さん。
彼女が選んだ旦那さんはきっと笑顔の素敵な人だろう。
あの頃ふたりで過ごした時間は戻ってこない。
でも紛れもなく私たちは時代を共にした。
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