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こどもになる

 人の話に出てくる場所や本の中に、自分のアンテナに直球で引っかかってくるものがあって。記憶力が随分怪しい私でも、それだけは心の中の引き出しに大事にしまってある様。いつでも引っ張り出すことが出来るから不思議。

 お江戸に行く機会があったから、ずーっと行ってみたかった、大好きな人の話に何度も出てきた場所に、これまた大好きな人を伴って行ってきた。

 入った途端に空気がおいしくて驚いた。私の居心地の良さ基準は空気。おいしい空気はすぐにわかる。体も心も一瞬でほぐれるから。
 地下の席に案内されたら、そこはまた隠れ家みたいな別世界。大きな木そのまま切り出したみたいなテーブルの周りに知らない人たちとグルっと座る。

 でも不思議なのは、そこにいる人たちがまたみんな気まずさもなく、約束していた同士みたいにごくごく自然にグルっと座ってること。それでいて、それぞれがそれぞれの時間を楽しんでいる。

 テーブルの上にはクルミが入った小さなカゴが置いてあって「おひとつどうぞ」って書いてある。使い慣れないクルミ割りでクルミを割りながら、みんな笑う。割りながら「リスってすごいな」ってリスの歯の強さに改めて感激する人の声、赤ちゃんを抱っこ紐で前抱きした男性が友達と入ってきて、話をしながら赤ちゃんが泣いたら立ち上がってあやす姿。4歳くらいの娘と友達同士みたいに笑い合う母親や、絵本をめくるパートナーと小さな我が子の写真をさりげなく撮る父親の姿。
 気がつけば私も娘に自分の夢なんて語ってた。「いいじゃんいいじゃん」って盛り上がって。みんなが森の学校に集まった子どもたちみたい。大人も子どもも、性別も何も関係なく無邪気に笑い合っている空間が、本当に居心地良かった。

 生姜たっぷりのチャイは、病で大好きなコーヒーが飲めなくなった私の身も心もポカポカにしてくれたし、バナナのアイスは人生最高に美味しいバナナ味だった。

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