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授業を作るのは、あなたです

 小学校英語で中学年を担当している。私自身自分の英語教室で乳幼児から人生の先輩方まで、幅広く英語を指導しているからこの「小学校3-4年生」がどれだけ大変な時期か、よくわかっている。
 まず、基本的に視野がとても狭い時期。自分のちょっと周りのことで精一杯。でもその中でも家庭環境なのか性質なのか、ググッと視野が広い子がいたり、そんな風になりたい子もいたり。そんな子たちに英語で広がる世界をどうやって見せていこう。正に自分の身の回りの狭い世界の先に未来があり世界があることをイメージさせていく必要がある。

 4年生になり、小学校英語ではアルファベットの導入が始まる。もう3年生でローマ字を習っているから小文字は任せて!という子もいれば、ローマ字で全くわからなかったので英語はNO!になっている子もいる。私がすべきことは、その苦手意識のある子を引っ張り上げること。小学生半ばで英語を諦めたら、そこから先の人生ずっと英語と喧嘩しながら過ごさなければいけなくなる。「日常会話で英語使わんし」と言って諦めるのも一つかも知れないが、今の教育課程の中では英語は切り捨てられない存在。どうせなら早々と捨ててしまうよりも、今まだ浅い内に仲良くなるきっかけ作りくらいしておきたい。

 ということで、4年生のアルファベット導入。いつもはあれこれ準備したり歌ったり踊ったり...と汗だくの私だけれど、今日は子どもたちに授業してもらおう。子どもたちに汗をかいてもらおう。
おもむろにクラスに向かって言う。
『あのさ、私もMr.○○(担任の先生)も、実はもうアルファベット、コンプリートしてるのよ。ぜーんぶ覚えちゃってるの。』
クラス、どよめく。担任の先生が「何疑ってんの。覚えてるさ」と笑う。
『だからさ、正直先生たちはみんなに何から何までを教えたら良いかわからないの。今日はみんなの困りごと教えてくれる?アルファベットと仲良くしたいけど仲良くできないのは、どこがわからないからか、教えてくれるかな』

 難しそうだったら、「例えば、これとこれが似ててわからないとかさ」と付け加えると、少しずつ質問が出だす。「小文字のpとqの見分け方がわかりません。」「bとdは」「hとn」「wって書きにくい」「aとoが一緒になってしまう」「大文字のIとLの小文字lの違いは」更には「bとvの発音の違いがわからない」など出るわ出るわ。質問は、想定外のものや発音にまで及んで、私はそれを板書しながらワクワクが止まらなかった。
 私が好きな瞬間は、誰かが質問を出す時に他の生徒たちがテレビショッピングのお客さんみたいに「あぁ〜」とか「おぉ〜」とか言う、あれ。でもこの子どもたちの場合は本気の声。「はい、質問して」っていきなり言われても思い付かなかったけど、人が尋ねる質問に「確かにそれ難しいわー」という共感が声に漏れ出す。最高の学びやん、とグッとくる。
 そして驚くのは、授業が始まってもずっと大声で全然関係ないことで私語をしていた子や、だらんとして「英語、無理やし」「英語全然わからん」と言っていた子たちが、この質問タイムでかなり良い質問を次々に繰り出してくれること。この子たちは自分で「オーダーメイドな時間」を作り出そうとしているんだ。学びが嫌いなんじゃなくて、自分に当てはまらないものをただ受け取るだけの時間に不安があるのかも知れない。そんなことも感じた。

 もちろん私は100%の答えはここでは出してはあげられない。それも正直に伝える。でも、私や担任の先生みたいにコツコツ何度も書いたり読んだりして覚えてきた中で見つけたちょっとしたコツみたいなものはシェアできるかも。使えたら使ってみて、と言って紹介した。そこからもまた前のめり。「なるほど〜」「おぉ〜」という声が上がったり、笑顔で頷く生徒。
ある生徒は「ぼく、その見分け方わかります」と前に立って先生役をしてくれた。時には私の引き出しになかった様な新しい発想での見分け方を教えてくれたり。いつしかそこは生徒と生徒が学び合う場所になる。
 専門的な知識が必要な部分や、生徒が見分け方を紹介した時ちょっと伝わりづらかったら、そこに少しだけ補足したり。先生の役割ってこれなんだろうな、って思った。

 子どもたちはいつも希望で光。持っている力をいろいろな角度から刺激して引っ張り出していくことが、私の仕事。
「英語」という一つの切り口からだけれど、そこから射す光や可能性を子どもたち自身が感じてくれたら、それはその人を一生支える力の一つになると思う。

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