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人生は実験

心を凪にするための試行錯誤

 なんとなく悶々とすることってある。元々心が揺さぶられやすく気性が荒い性質を持つ私。今は自分のため、愛する人たちのために心を凪に保つように心がけている。それが出来るだけ自分の負担や無理にならないように…いろいろな方法を試してみたけれど、「理解」「納得」「反応」を大切にすると良いことがわかった。要は、頭で心をコントロールしている感じ。全く無理がないと言えば嘘になるけれど、これが今のところは一番うまくいっている。

 例えば、教えているクラスに挑発的な態度の子どもがいる。何も考えなければ相手は敵だ。私を試し、揺さぶる相手。でもこう考えることにする。

「この子は、自分の中の感情や要求をうまく伝えることを知らない事情があるはず。そしてそれを彼なりの方法で私に伝えようとしている」

 そうなると私の心の中に理解と納得、愛が生まれ、反応は敵に対するものとは全く変わる。それに更に教育者としての知識が加わり、この子にどう向き合うのがベストかを心に余裕を持って選ぶことができる。その自分の反応が相手のニーズとピシャリと合った時、私たちの間にハーモニーが生まれる。最初は少しの我慢が必要かも知れないけれど、私自身この小さな成功体験を積むことによって、子どもへの対応の方法や度合いを少しずつ調整して目の前の子どもに一番良い方法がわかるようになってきた。
 
 もちろん子どもにとどまらず、人は千差万別。全く同じパターンを持つ人はいない。顔も違えば反応も出し方も違う。だから、大きく言うと私は「目の前のその人を見る」ことを経験で身につけてきたのだと思う。「その人」ではなく「目の前のその人」すなわち「その人の今」を見るのだ。
自分自身でさえ状況によっては思わぬ行動を取ることがある。自分がその時に置かれた状況や困り度合いによっては、その人が普段しないことをすることもあるしパニックに陥ることもある。「こういう性質を持った人」という判断だけではなく、今その人が今置かれている状況やその人の気持ちにも出来るだけ細かく寄り添うことが大事だってことに気付いた。

 そしてその「目の前のその人」という考え方が私の仕事だけでなく、人と関わる環境全般で必要な考え方だと気付いた。これは対人関係だけでなく自分自身と向き合う時にもかなり楽になる考え方だ。

自分の舵を人に取らせるな

 ご相談を受けてよく感じることだが、例えばおうちの方がお子さんのことでご相談に見える時、おうちの方の目には実際はお子さんは映っておらず他の子や周りの人たちの方がたくさん映っている。「よそのお子さんはうまくやってるのに、どうして」とか「普通こんなこと、しますか」と。
 相対的な判断が正しい、と思い込んでいる私たち。その仕組みがなぜどうして自分に備わってしまったのか。恐らく小さい子どもの頃から人と比べたり周りと足並みを揃えることが絶対の正義だと学んできたからだと思うが、それを全て取り去ることが出来た時、初めて目の前のお子さんと向き合えるのではないかと思う。
 一番大切なのは、そのお子さんが困っていないか、ということ。もし困りごとがあるのならば、なぜそれが難しいのか。そうやってお子さんの目線で見ることが最初の一歩。
 私の尊敬する先生は、「子どもの中に入って、その目から世界を見るんだよ」と言われていた。

 そして私たちがどうしても拭い去れない「自分が親として人からどう見られるか」、それはお子さんの問題とは切り離して考える必要があると思う。それは子どもではなく大人自身の問題だから。大人が自分自身の「人から認められなくちゃ」の気持ちに向き合う必要があるから。
 これを言われるとガンと落ち込むし、相談された時に面と向かってこれを言う人はあまりいない。大人全般、ここには蓋をしているから。だから自分で気付くしかないのだけれど。私はこれはごく自然なことだと思うから、思いっきり認めてしまった方が楽な気がする。前述の通り、私たちは「失敗をしてはいけない」「人からバカにされてはいけない」「みんなと同じでいなくちゃ」という気持ちをどこかで学んできてしまった。それは自分だけの特別な感情ではない。
 ただ、私が出会ってきた素敵な人たちの多くは、それに気付きそんな自分と向き合っている人たち。子どものことを愛して子どものためを思っていたはずなのに、いつしかその気持ちは「保身」や「自分を認められること」とすり替わる。そこに気付かなければ、子どもに向き合うことは難しい。私もそんな弱い大人の中の一人だからこそ、常に自分に問いかける。

 だからこそ、子どもたちに同じ思いをさせてはいけないのだ。ここで断ち切らなくちゃ。誰かに自分の舵を握らせるのではなく、自分で舵を取らなきゃ。

人生は実験

 ふと何かで拾ったこの言葉がピシャリきた。人生をうまくやろうって誰もが願ってはいるけれど、結局それぞれ性格も環境も状況も全然違う。自分でやってみるしかないのだ。
 幸せへの最短距離を探そうとする人も多いけれど、そこには落とし穴がボコボコある。自分は人とは違うということを忘れてはいけない。人の成功例を真似したり多くの人がうまくいったからといってその方法を過信しては、うまくいかなかった時に自分や我が子が落ちこぼれだと感じる。そうなったら、この実験は失敗なのか。否。実験なんだから、この方法が違うなら他の方法を探すのみ。
 みんなが良いと言ったこと、みんなが出来ることができなかったから自分は終了、なんてもったいないの一言。「この方法が合わなかった」という答えが出たのだから、次の方法を考えたら良いのだ。

 そして、その時の基準はいつも「人」ではなく「あなた」であり「お子さん」。自分の舵を取る人を育てるには、まずは大人自身が自分の舵を取るべきなのだ。


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