花束みたいな恋をしてきた
高校2年生から6年間付き合った彼がいた。
その人は音楽好きで、ギターの専門学校に通っていて調布に住んでいた。
CDをたくさん持っていて、バンドでベースを弾いていた。
独特の絵心をもっていて、よく私の変な顔の絵を描いてくれた。
会う場所はいつからか、吉祥寺が定番になった。
タワレコの前のベンチで缶コーヒー片手に何時間も話した。
中道通り沿いの公園でキャッチボールして、知らないおじさんに怒られた。
井之頭公園でソーセージとドイツビールを買って、吉祥寺のディランの歌声を聴くのが大好きだった。
何をするでもなく、本当に毎週プラプラして、いろんなことを話した。
私が知らない音楽をたくさん教えてくれた。
PUNK、HARDCOREは彼が。
ROCKは私が。
POPなんて糞だ!と言ってたのに、なぜか二人でOASISにはまった。
毎日毎日飽きることなく、WonderWallとChampagneSupernovaを聴いた。
さくらいのラーメンにもはまった。
なぜだかあの味が忘れられなくて、毎週のように食べてたっけ。
ずっと学生でいられたら、あのまま毎日を一緒に生きられたのかな。
大人になるって嫌だなって、あの頃毎日思ってたな。
帰り道は彼の自転車に2けつして、真っ暗闇を二人で駆け抜けた。
たまに警察官に怒られたりもした。
二人で、ごめんなさい。と謝った。
シェモアっていう喫茶店もお気に入りだった。
水槽があって、ちょっとかわった親子のマスターたちがいて、
漫画が置いてあって、二人でだまって漫画や小説を読んだ。
イヤホンを分け合って彼のおすすめの音楽も聴いた。
特製のマグカップがお気に入りだった。
ユニオンで毎回無駄にレコードとCDを漁った。
レコードをめくるのが地味に早くなった。
たまに見つかる名盤に二人で感動した。
FRAPBOISのパンツにバンTを合わせたスタイルを
吉祥寺系と名付けた。
青く、生々しく、刹那的だった私たちも
6年の間にmatureになった。
お金はずっとなかった。CDと服とデートに消えていった。
平和で、純粋で、生活のことなんて考えず、まさに刹那的だった。
それが死ぬほど心地よくて、大好きだった。
ばあちゃんになって、死ぬ最後の瞬間まで、忘れないと思う。
あなたとの6年間が私を作って、開いてくれた。
自分のままでいいんだって思わせてくれた。
刺激を求めて手を放してしまった代償は
大きすぎて
何度も何度もあなたを求めた。
でも、なくなっちゃった。
ぜーんぶなくなっちゃった。
会いたい。
一目でいいから会いたい。
でも、勝手だから、会わない。
今も心の奥でいびつな形をしたあなたとの記憶が息をしている。
今でも息が詰まりそうになる。
生きるってこういうことかって思う。
一緒に過ごした吉祥寺の街が今も目の前に広がってる。
あなたと生きたあの時間はもう戻ってこない。
あなたがいない吉祥寺はもう私たちの吉祥寺じゃない。
ふとした時に思い出す。
今も涙が出ちゃうくらい、私の記憶にずっといる。
ずーっといるんだもの。
花束みたいな恋をしたって映画を見たのよ。
菅田将暉くんが好きだからね。
でもあの映画の菅田将暉くんはね、あの頃のあなたにそっくりだったのよ。
びっくりするくらい。
カーディガンが似合うところも、表情も、センスも、場所も。
私たちを見てたんか?ってくらいめっちゃかぶってるのよ。
びっくりだよね。なんか、胸をえぐられたよね。
こんなかぶることあるかね?って。
胸が痛くなっちゃって、まだ最初の10分しか見れてない。
君との時間も、花束みたいな恋だったな。って思うのよ。
もう手に入らないけど、でもずっと心にあり続ける。
あなたが今、あなたなりの幸せを感じて生きているといい。
それだけを願って、これから先も生きていく。
愛してる。愛してた。ありがとう。これからも心の奥で願わせてください。
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