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対象者を見つける旅⑥〜宝箱に入れたい三日間〜

⑤の続きです。
やっと!「三日間」が始まります。

《一日目》
前夜、母から着信があったので、何かあったかな?と、駅へ歩きながら電話をしたが繋がらない。

運賃を少しでも節約すべく、
愛知県の逢妻駅を目指す私は、名古屋経由はせず、
豊橋まで新幹線「ひかり」の自由席に乗るため、
30分前にホームに並べるよう、家を出ていた。
このタイプの新幹線の本数は少ない。逃しちゃならん。という気合いで、時間にルーズな私が、ちゃんと並べた。
待ち時間に母と電話が繋がった。
昨夜、父が発熱したから病院へ連絡する、と。
詳しくは、また後で…と、一旦切った。

新幹線に乗るのは久しぶりだ。
10年程前、親の会社が倒産しそうで手伝いに通った時は、節約の為いつも高速バスだった。
それ以降、バスが標準になった。安いし、長時間はキツイけど、景色が見られるのが結構好きだった。
新幹線は速すぎて、景色も十分見られない、ただの移動手段だ。

今だってお金は無い。寧ろ今の方が無い。
でも、今回の旅の目的を存分に全うするには、移動に余計な体力を消耗してはいけないし、そこに時間をかけるべきではないと判っていたので、新幹線にした。

案の定、豊橋まで、めっちゃ速かった!!
note一記事投稿して終わりやん!
距離感、まったく感じられん…
やはり、あまり好きじゃない、新幹線。
寒すぎるし…馬鹿じゃない?と思った(笑)。

新幹線乗車中、また母と話した。
病院に行くから、今日は会えないらしい。
それでも私は、特に何をを変更するでもなく、
何も考えず、予定通り逢妻駅を目指していた。
一応、最悪の事態は想定した。
透析をしている父が発熱、もしコロナだったら…
命の終わりすら連想する。
私が帰省したのがそういう意味でちょうど良かった、という結末。私が何らかの役に立つという結末。そのために、会う約束をした人達には会えないけど、それで良かったんだ…という結末。
どんな結末も受け入れる心の準備は、すぐに出来ていた。

私は、皆さんと会う約束ができただけで、十分だった。本当に満足。幸せだった。と、思えた。

逢妻駅の隣、刈谷駅に停車中、母から電話。
迷ったけど、長めの停車中だし、エイヤと口元を抑えて電話に出た。
「病院で待ち時間が長いもんで、お父さんが『もうどうでもいい。ナミちゃんに会いに行く』って言って、病院抜け出して今逢妻駅に来とるんだわ。ナミちゃんどこにおる?」と。
「どうでもいい」って!笑った。本心炸裂じゃん、いいぞ、お父さん。
少し前のイベントで読んだ紙芝居が思い出された…
病気のおじいさんが、キツネの化けた変テコな虹を見て喜んで、すっかり元気になっちゃうんです…
あ、この人、私に会ったら元気になっちゃうかもな、、って、大丈夫な気がしました。

そして、無事に逢妻駅で会うことができました。
その時は父も熱は無く、なんだか無口だったけど、
何かを受け止めているような、父の人生が大丈夫なように見えました。
母は、キャラは相変わらず。ただ足腰が弱ってて、母の方が心配になりました。
数分だったと思いますが、娘の成人式の写真を見せたり、三人の心がちゃんと巡った時間を過ごせました。

最悪の為の心の準備は、幸い、無駄に終わりました。

続く

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