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茨城・大子町で災害ボランティアをやってみて 【前編】 #06 旅

知らない誰かに出会うことは、もわっとした霧から抜けるように視界を開けてくれることがある。

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茨城県久慈郡大子町。私がワークショップで2年前に初めて訪れた、本当は誰にも教えたくないくらいの一推しの町だ。台風19号で被害が大きかった地域の一つで、鉄橋が流されるほど大きな被害もあったことから、今回再会も兼ねて災害ボランティアとして再訪した。

世間の人がほとんど知らないであろう、山奥にあるこの小さな町は、大変住みよい町だ。

町の構成は極めてシンプルである。町の中心は2つの川が合流する開けたところにあり、この2つの川を跨ぐように駅前から伸びる3つの商店街がある。ホール、図書館を持った文化施設が商店街沿いに併設され、すぐ上の丘の上には神社と学校があある。大きな道路や鉄道は全て川沿いにあり、中心の商店街をうまく迂回しながら、山奥にある名産のりんごや奥久慈茶の生産地につながっている。川沿いはカヌーが盛んで、ちょっと車を走らせた丘の上には温泉もある。

商店街には、味のある建物や蔵がたくさんあり、最近では若い芸術作家やこれからお店を開きたい人(しかも行政がコンペを行なっていて通過者は東京藝大出身などと大変レベルが高いよ!)に活動場所として提供することで誘致したり、蔵を改装したカフェやお土産もデザインに力を入れている。町全体が今でも盛り上がっており、まるで「高度な自治」が行われているような素晴らしい町である。

町の素晴らしさは、次週【後編】でしっかりお伝えするとして、【前編】は初めての災害ボランティアでわかったこと、思ったことを書き残そうと思う。

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報道等ではもうほとんど取り上げられていないが、今回の台風では多くの河川が氾濫し、今でもボランティアを必要としている地域が多い。大子町もその一つだ。

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大子町は久慈川という大きな川が流れており、台風による豪雨によって橋沿いから商店街に向かって浸水、さらに下流の地区ではカーブを曲がりきれず泥水が大量に流れ込んだ。そして不運にも川沿いに保管してあった大量の材木が流されてしまい、下流にある鉄橋に引っかかり、鉄橋がいくつか流されてしまった。

東京から水戸へ行き、水郡線に乗り換えると大子町まで辿りつけるのだが、今回の台風で水郡線の鉄橋が土台ごと流されたため、水郡線の西金から先は代行バスに乗って到着。

災害ボランティアセンターは文化施設の一部が使われており、そこで手続きを行なった。現在は個人ボランティアは事前登録制になっている。

そこで、初めて顔合わせとなる他の個人ボランティアの方と車に乗り込み、要請している住宅へと移動した。

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災害ボランティアが初めての私にとって、作業内容はとてもギャップがあるものであった。泥掻きをしたり、ものを運んだり、何かを洗うのかな?というイメージで来たが、そうではなかった(もちろん、そのような仕事もある)。私たちに与えられた仕事は、泥水で駄目になった床や壁が剥がされて、躯体がむき出しとなった木造住宅の柱や、床板を支える木材の全てをひたすらブラシでブラッシングし、ほんの表面に残っている乾いたわずかな泥を限界まで落とす作業であった。この作業の目的は、消毒の事前準備であるという。

住宅に付着した泥は生活排水も含んでいるため、衛生上よろしくなく、少しでも残った状態だと木材の腐敗につながってしまう。そのため、汚染物質である泥を限界まで取り除いた上で消毒をするという。ここまでやるとは気が滅入る。小さな小屋くらいの広さの空き家であったが、もうすでに2日に渡って作業が行われたそうだ。

他の個人ボランティア4人と現場で昼食休憩のピクニックをしてから作業をした。とにかく安全に留意し、貢献というよりは最低限迷惑にならないように声を掛け合って分担しながら作業した。

リーダーっぽいおじさんに車に乗せていただき、全員で丘の上の温泉に入った。この町で災害ボランティアに参加した人は無料となっていた。もうそろそろ終わってしまう紅葉を見ながらお湯に浸かり、その後、飯まで一緒に食べた。めちゃくちゃうまかった。

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私たちは、自分たちの世界を知った気になっているだけで、何も知らないのだと思う。

やっぱり、自分の目で確かめて、世界と接続するのが一番良い。私たちは情報の断片を全て手に入れることができているように思い込んでいるが、全治全能の、いわゆる神の視点を持つことはできない。自分が社会と接続してみると、知らなかったことが見えたり、興味深いことが見つかるのだと思う。

今回、ボランティアに参加してみて、まちが人々の力によってどのように成り立っているのか、それから現場を知ることの大切さを身をもって学ぶことができたのは、大変有意義だった。

人生もまた然りなようである。個人ボランティアでご一緒した、リーダーっぽいアウトドア大好きおじさんから学んだことは、20代はできるだけ人の幅を広げるくらいでよく、30代で何かやりたい時に繋がりをうまく生かすくらいで良いこと、60歳だけれども仲間と新しい山道ルートを開拓したいと仰っていてこれから先もずっと野望は持てるということでした。中の人は20代前半のくせに絶賛モラトリアム中の人間ですが結果を求めて焦ってました。もうすこし緩やかに生きてみます。

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最後に初めての災害ボランティアだったので、意外と必要だった持ち物を書いておきます。ボランティアの際に足を滑らせて頭を打ち亡くなった方もいるそう。現場のリーダーは「人なんて簡単に死んじゃうよ」とおしゃってました。参加の際は十分気をつけてください。

汚れても良い服・・下は丈夫な生地の方が良いです

ゴム製の長靴か安全足袋・・できれば中敷きがあった方が良いとのこと。部材から飛び出た釘で貫通することがある。

ゴム製の作業用手袋・・軍手よりメジャーでした

帽子かタオル・・粉塵が舞います。

マスク(必須)・・普通のもので良い。粉塵が舞います。

他にも場所によっては必要なものがたくさんあると思います。十分に下調べをしてから行くことをお勧めします。

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【後編】は次週、内容は大子町の良さとそれを支える人との再会のことを書きます。気になった方はフォローとスキのボタンをよろしくお願いします。皆さんのおすすめの町を知りたいので、コメントをぜひお願いします。


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