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大嘘の作り話 【本を読む】 #02

この本にはほぼほぼ嘘しか書かれていない。”嘘は方便”とは言うけれど、正直者にはけっこうしんどい。だって嘘は良くないじゃないですか。けれども、人から勧められたら読みたくなるものだ。なんとなくだけれど、人から勧められたものってその人のキャラクターがほんのり現れている気がする。

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『じつは、わたくしこういうものです』 クラフト・エディング商曾 著

この本は、この世に存在しない(し得ない)職業に就いている人が、自分のパーソナリティや仕事を始めたきっかけ、仕事に対する思いを、インタビュー形式でお届けしているものです。例えば、ワインのコルク栓が抜けない時に、救急隊のように駆けつけてくれるコルク・レスキュー隊であったり、人生の様々な迷っている人に対してずばっと決断してくれる洗濯士といったり。需要ありそうだけれども、資本主義では実現しそうにない職業がたくさん出てきます。 

この本はびっくりするほど嘘の話です。95%くらいは嘘です。フィクションの小説ならば共感したり、あるいは没入できるような話に仕立てられているから、話の内容自体は本当にあってもおかしくないなと思います。けれども、この本にはそういった感覚が全くと言っていいほどありません。人によっては、ペテン師がたくさん登場するやばい本に思えるかもしれません。

しかし、あからさまな大嘘ながら、どこか一瞬、人間の本質的な部分に訴えてくる部分が不思議なところがあるのが、この本の不思議なところです。例えば、誰かとの忘れたくない大切な時間を木の箱に保管してくれる時間管理人。預かってくれた時間は再生もできるけれども、大切な時間を取り返しにくる人は滅多にいなくて、みんな箱の鍵の方を大切にしてしまい、箱は引き取り手のいない記憶となってしまう。確かにそうだなあと考えさせられます。宝石の原石をいろんな角度から見ていると、一瞬だけ鋭く光るような感じに似ています。

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この本は大嘘しか書かれていないのだけれども、創作のヒントを与えてくれると思います。

建築専攻をかじっていたので、創作に関しては少しだけわかるつもりなのだけれども、何か新しいものをつくるときには、今の世の中にない新しいものを概念レベルで一旦作る必要がある。ものが完成し、人にちゃんと伝わり、作りきることができて初めて本物になるが、成功させるためには、本物になる以前の、概念の段階で議論しなければならない場面が多く、それを気持ち悪いと感じることも多い。それは概念というのは大嘘だからだと思う。大嘘を堂々とプレゼンテーションしなければならない。人の感性が違う以上、絶対に評価される確証の無いものを、声高に説明しないといけない。生真面目な私にとっては正直辛い。

だけれども、どこか1%くらいでも本質を射抜くような光るものがあればあんまり怖くないと感じさせられました。つくる自信が底をついてしまった今、なんとか自信を取り戻したい。こんなに堂々とした大嘘な本でも、温かな気持ちにさせるのでね。

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この感想文はフィクションです。




なんちゃって。

 

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