鯰川ゆら

ふつうの大学生。 気分で考えたことをつらつらと書きます。 趣味で詩や小説も書いてます。

鯰川ゆら

ふつうの大学生。 気分で考えたことをつらつらと書きます。 趣味で詩や小説も書いてます。

最近の記事

詩「終日」

梢の擦れる 小鳥のさえずる 風にゆらめく 気取らない五線譜 途絶えることのない 有機のながれに 耳をすまして 朝をむかえる 揺れるつり革 疲労の色 車窓越し 水平線から夕陽に染まっていく 思い出されるのは── 夕焼けこやけの町内放送 枯れ草を積んだのろまの軽トラ あぜ道と斜陽 大きなランドセル 小学生 黄色い声 ──暮れなずむ日 影の伸びた駅前で 高校生が手を振りあっている 暖簾をくぐる中年のサラリーマン 缶チューハイを開ける 駅前のコンビニ

    • 短編『夜風のラジオ』

      「夜の一時三十分をまわりました。十一月九日木曜日、ここからは、『夜風のRADIO』のお時間です。パーソナリティは、わたくし、室山風花が担当させていただきます。よろしくお願いします〜」  勉強机の上のポータブルラジオが、肌寒い夜に彩りを与える。僕はそんな放送をバックミュージックに、大学入試の過去問とにらめっこをしながら、手元のルーズリーフにシャープペンシルを走らせている。  大学入試を二ヶ月後に控えた僕は、内心、それなりに焦っていた。古文の単語は未だに語呂合わせの域を出ない

      • 詩「放課後」

        はるか遠くの 呑気なチャイム 人類の放課後 昨日おきた 天変地異 (ほんもの) 校庭の遊具の全部がひしゃげて 机や椅子のガラクタが宙に舞う。 ぜんぶ嫌なものだったのだけれど ちょっとだけ、哀の微動。 小さなうさぎ小屋と 揺れる木々の緑の見える あの窓だけは わたしに寄り添ってくれたっけ。 今なら、ほんのすこしだけ、 また屋上へ続く階段で ひとりで三角座りをしてもいいよ。

        • 短編「ロボット修理工」

          【まえがき】これを書いた当時、治す(直す)ことと労働について考えていました。  ファミリーレストランは、今日も大勢の客で賑わっている。ここでは、特に夕刻から夜中にかけて、多くの客が訪れる。その客というのも、一人暮らしの若いサラリーマンから、部活帰りの学生、家族連れなど、年齢や性別ともに様々である。様々な背景を抱えた様々な人間が、この場所でひとときの時間を過ごし、どこかへ去って行く。  さて、そんな店内は、当然のことながら常にてんてこまいである。ひとつ注文を捌いたかと思えば

        詩「終日」

          詩『ドーナツと愛』

          隣人愛なんて嘘っぱちかと思ったわ だって自分のことさえわからないし 自分のことさえ愛せないから。 でもふと思いついた 隣人のことであれば 自分のことよりもわかる気がするので わたしは愛を振りまける。 ドーナツ型の愛情で まんまるの穴から 愛が溢れ落ちてゆく。 愛が溢れ落ちてゆく。

          詩『ドーナツと愛』

          今年書いたお気に入りの詩②

          ①に続けて、拙作ですが、誰かの心を少しでも揺らすことができれば嬉しいかぎりです。 『白玉』 白玉の 甘く冷たいシロップの膜に 提灯の淡いあかりが映る もうじき、花火が打ち上がる   『流れ星』 わたしが流れ星と添い遂げるこの夜は 皆さんにとっては、平凡で、たいそう退屈な夜だと思いますが どうか、流れ星に照らされるわたしを いや、わたしの隣で身を削りながら光る流れ星だけでも  こころに焼き付けていただきたいと そう思うのです。 わたしの最後のわがまま。

          今年書いたお気に入りの詩②

          今年書いたお気に入りの詩①

          他の皆様のものと比べるとずいぶんと拙作ですが、私が今年書いた詩のうち、お気に入りのもの①です。 『さるかに』 抜けるように青い空 突如として ぷかりぷかりと宙を舞う橙 ──そして降りそそぐ 柿!柿!柿! それは燦爛たるエンドロール 『共鳴』 きみとの共鳴 自と他を超えたその響きに うるおい、隅々にまで沁みわたる 親和性の彼方にあって わたしたちは渇きを忘れる 『特急列車』 ぶ厚い車窓を隔てて  あちらとこちらでは 時間も空間もねじ曲がっていて

          今年書いたお気に入りの詩①

          詩『白玉』『生命』『スワイプ』

          『白玉』 白玉の 甘く冷たいシロップの膜に 提灯の淡いあかりが映る もうじき、花火が打ち上がる    『生命』 幾本もの手足をばたつかせながら 見えない炎に焼かれるように 藻掻き苦しみ 息絶えるまでの数十秒 僕は目をそらして 一本の化学兵器を右手に持ったまま 遍く生命が平等であることを願う 『スワイプ』 眼の前にとまったトンボに 人差し指を向け 左から右へスワイプしてみるが トンボはピクリとも動かず 終いには、指とは逆の方向に飛んでいってしまって

          詩『白玉』『生命』『スワイプ』

          詩『純粋、時間』『生命体系』

          『純粋、時間』  大きく振りかぶって  打ち下ろす  閃光  とび散る煌めき、歪ひずみ、蝸牛の秒針、廻る灯籠、ちりぬるを  知床の流氷  白神の山々  それより、もっと自然。  『生命体系』  命の滴る  鉤爪を食い込ませて  空高く誘われる。  その光景にあっけにとられ  空を見上げる私、それを捉える視線、一閃  そうしてまもなく、私も体系の一部だったのだと知る

          詩『純粋、時間』『生命体系』

          [小説]世界消滅寸前物語

          窓から見える空は、今日も青く澄んでいて、雲はのんびりと漂い、太陽がそこから顔を出したり、隠したりを繰り返している。 時々見える灰色がかった雲は、雲の白さと空の青をより際立たせている。 いつもと変わらない日常。 しかし────。 僕は隣にあるタイマーを見た。 デジタルのシンプルな画面には90:00の文字が映されている。 そこに示されているのは、地球が跡形もなく爆発するまでの時間だった。 地球消滅まで、あと九〇分。 僕は思う。 おそらく僕らは地球史上最大のテロリ

          [小説]世界消滅寸前物語

          コーンフレーク

          パジャマ姿と寝ぼけ眼。とりあえず器に注いだコーンフレーク 牛乳を上からたっぷりと注いで でも、大して食欲もない。 だから数口だけ食べて、あとはスプーンでそれを左右にかき混ぜていた。 サラサラと音が鳴る。爽やかだ。 この音、この動き。私は知っている。 海だ! 幼い頃、旅行先で見た海に似ている! 迫り来る波とサーファー! ヨット! 遠くに見える船! 海面に反射する太陽! 砂浜と、砂まみれの海藻、そして繰り返し押し寄せる波!波!波! あぁぁ!海だ!海に行こう!

          コーンフレーク

          頭痛

           コンビニ弁当は、生ぬるくて、それでいて冷たくて、ぼんやりとしている  眠気覚ましのインスタントコーヒーは、気持ちの悪い酸味と、粉っぽさが際立つ     エナジードリンクは、香料が脳みそを掻き乱して、得体の知れない液体が炭酸が抜けた身体を巡る    それら全てが、慢性的な頭痛を鈍く響かせる

          春うららかに

           開園前のそこは、私の知っている、人で溢れかえった賑やかな場所とは程遠くて、視界に入ってくるのは、風になびく木々と、園内に咲き誇る色とりどりの花々だった。  昨日の閉園から誰の靴も踏み入っていないこの道には、淡い色の桜の花びらがコンクリートの黒を塗り替えるように敷き詰まっていて、ふわふわと朝日に照らされて眩く光っている。  頭上を覆うように伸びるたくさんの木々から、鳥のさえずりが甲高く響いた。どんな鳥かと見上げてみるが、その姿は青く透ける葉に阻まれてよく見えない。  そ

          春うららかに

          バックホーム!! 【短編】

           日差しの降り注ぐ地方球場のスタンドには、ちらほら人影が見える。  夏の暑さを思い出させるように日が照りつける、六月。まだ少ない蝉の声が微かに聞こえる。そんな甲子園の地方予選。  まだ地方予選の二回戦ということもあって、応援とかはほとんどないけれど、そんなことはグラウンドに立つ僕らにとっては関係なかった。  ただ汗を流しながら白球を追うことだけに、僕らは集中し、熱中していた。    プレイボールが宣告されてから、はや二時間。     試合前は汚れていなかったスパイクも、

          バックホーム!! 【短編】

          パワポケ13のすすめ

           私がこの記事を書く理由。それは、紛れもなく現在進行形で私がそれをプレイし、毎日のように熱狂しているからである。  新作の発売から10年以上の年月が経ち、パワプロクンポケット(通称パワポケ)シリーズは、かつての人気は影を潜めていた。    しかし、なんと過去作のリメイクがNintendoSwitchで登場した。これはほんとうに嬉しい誤算だった。  悲しいかな、売上はボチボチだったようだが、それでもその復活が嬉しかった。  そして、その発売によって感化された私は、ホコリを

          パワポケ13のすすめ