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ひとり起業家のブランディングとは|5万文字で徹底解説します

「結局、自分らしい発信って何だろう…?」
ひとり起業をして、少し稼げるようになった頃、僕はそんなことばかり考えていました。WEB上でひとり起業する人たちが増えていく中、どうやって自分の個性を発揮したらよいのかわからずに迷子になっていたからです。

もう一度自分のビジネスを見直そうと思い、そして行き着いたのが「ブランディング」という言葉でした。ですが、ブランディングに関する情報は、ひとり起業家に寄り添った内容のものは少ないと感じています。そこで自分なりにnoteにまとめてみたところ、なんと5万文字を超えるボリュームになってしまいました…!

もしこのnoteにたどり着いたあなたが、

  • やっていることが”自分らしい”と感じられない…。

  • 自分のスタイルがまるで誰かのコピペみたいだ…。

  • 今のビジネスに全然ワクワクしなくなった…。

  • 「やりたい」から「やらなきゃ」になっててツライ…。

  • もっと楽しく稼げるようになりたい…!

このような悩みを持っていたら、このnoteの内容は少しは役に立つと思います。

僕はブログ運営のコンサル活動を経て、その後ひとり起業家のWEBマーケティングを本格サポートするためにセールスライティングを学びました。今は現役のWEBマーケッターとして、年商数千万〜億超えの起業家さんのマーケティング代行をしています。またこのnoteの執筆にあたって、ブランディングに関する知識を補完するために35〜40冊ほど書籍を購入して読み漁ったり、魅力的に感じた経営者のコラムやSNS、YouTubeまで調べ尽くしました。このnoteには、その中からひとり起業家にとって重要だと感じたエッセンスを抽出したつもりです。きっと何か新しい発見があると思いますので、ぜひ最後まで楽しみながら読んでみてくださいね。


ブランディングとは

そもそもブランディングとは何か…。ここではブランディングの語源から、マーケティングとの違いまでについてまとめてみました。ブランディングに成功している経営者や、最前線で活躍するブランドプロデューサーの書籍を参考にしながら解説しているので、ひとり起業家のブランディングにも応用できるかと思います。それでは一緒に見ていきましょう。

ブランディングの語源

もともと「ブランド(brand)」という言葉は、放牧されていた牛が、他の牛と混ざっても区別がつくように「焼印を押す(brander)」が語源だとされています。(諸説あります)

また、日本で「ブランド」「ブランディング」という言葉が普及したのは、1990年代前半に出版されたデービッド・A. アーカー氏の著書『ブランド・エクイティ戦略』をきっかけに使われるようになったとされています。(参照:日経トレンディより)もっと歴史があると思っていたのですが、日本のビジネス界隈ではわりと最近使われるようになった言葉のようですね。語源をたどれば何か新しい発見があると思いましたが、特筆すべき情報はあまりありませんでした…。重要なのは言葉の意味よりも考え方なので、ブランディングの語源についてはこれくらいにしておきます。

ブランドは頭の中のイメージ

次に「ブランド」について見ていきましょう。ブランドとは「イメージ資産」と言われたりします。ブランディングの最終目的は、自分の価値を向上させることです。これは目に見えない価値なので、数値で判断できません。好き嫌いを判断するのは、いつもお客様の「気持ち」になります。

例えば、あなたが真剣にビジネスに取り組んでいても、情報発信のInstagramが旅行や食べ物の投稿ばかりだと、一発屋のキラキラ起業家みたいに思われるかもしれません。また、毎回セールスのメルマガばかりだと、この人は売り込みばかりしてくるというマイナスイメージを持たれてしまいます。最終的にポジティブなイメージなのか、それともネガティブなイメージなのかを判断するのはお客様なので、僕たちは常にそのことを意識しながらアウトプットする必要があるのです。

数々のトップ企業のブランドプロデュースを手掛けてきた柴田陽子さんの著書『勝者の思考回路 成功率100%のブランド・プロデューサーの秘密』では、どんなに些細なことでも「感想」を持つことの重要性を何度も繰り返し説いています。なぜ「感想」を持つことが重要なのか。それは、「この商品・サービスを手にをとったら、相手がどう感じるのか」ということを正確に把握することで、アウトプットの質が格段にUPするからです。

例えば、とある発信者がSNSでエルメスの財布を購入したという投稿をしたとします。ただ購入したというだけの話なら、なんだか自慢っぽく見えちゃいますよね。ですが、「貧しい家庭で育った私は、年商1000万を超えたら一つの節目として絶対に購入しようと心に決めていたんです。」という起業家としてのストーリーや、「エルメスのような、高級メゾンの中でもトップオブトップのブランドから、何かビジネスに繋がるヒントを学びたいんです。」というビジネスに対する姿勢なども一緒に語られていたらどうでしょうか。その投稿を見たユーザーは、ポジティブなイメージ資産として心に残りそうですよね。元アメリカ大統領のジョン・F・ケネディ氏は、このような名言を残していました。

富は手段であり、その目的は人間である。
物質的な富は、人間の向上のために用いられなければ意味がないと言っても良い。
ー 1962年の年頭教書より

引用:スターバックス成功物語

SNS映えや自分を大きく見せようという目的でブランド品を買う人と、歴史あるメゾンの背景やクラフトマンシップを学ぶ目的でブランド品を買う人とでは、同じブランド品を所有する発信者でも、相手が抱く「感想」は全くの別物になります。どちらが素敵なブランド人になれるのかは、その人の発言や姿勢から感じ取れるものですよね。こういった日々のアウトプットから生まれる小さな「感想」たちが、イメージとしてあなたの解像度を上げていき、少しずつMy Brandが構築されていくのです。地道にコツコツとポジティブな「感想(イメージ資産)」を積み重ねていくことは、「この人なら信じられる」「ぜひこの人にお願いしたい」という「信頼」にも繋がっていきます。

では、どうやったら本命の見込み客から「信頼」を勝ち取ることができるのか。さらにブランディングについて深掘りしていきましょう。

ブランディング=「差異化」

ブランディングを解説する書籍では、差別化ではなく「差異化」という言葉が頻繁に登場します。辞書で調べると、差別化と「差異化」は同義のように紹介されているものが多いです。ですが個人的には、差別化することは区別を目的とする姿勢で、差異化することは自分が誰かのために「唯一無二の存在」で在り続けることを目的とする姿勢だと捉えています。

ここであなたに質問です。
ここに2つのノートPCがあります。あなたはどちらが欲しいですか。

1つ目は、Appleの新型MacBook Pro。
2つ目は、㈱中園が新しく開発したNakazono Pro。(もちろん架空の会社です。笑)

ちなみに2つ目のNakazono Proは、MacBook Proよりも処理スピードやグラフィックなどの性能が優れていることを一生懸命PRしたり宣伝しています。比較サイトの検証結果でも、MacBook ProよりもNakazono Proの方がスペックが高いことが証明されているようです。

さて、あなたはどちらのノートPCが欲しいでしょうか。
ちなみに僕は、断然Appleの新型MacBook Proが欲しいです…!

なぜなら、MacBook Proを使っている方が、なんかスマートでかっこいい気がするし、所有することで自分のステータスが上がる感覚もあるからです。また、Appleから発売される商品なら、僕の期待を裏切らないという無条件の「信頼」もあります。

これは、経営者がステージアップの節目として、ROLEXを手に入れようとしたり、ファッショニスタがCartierのタンクを身につけたいと考えるのと同じかもしれません。また、女性がわざわざ値段の高いCHANELのルージュを愛用したり、The RowのマルゴーやHERMESのバーキンが欲しい、と憧れるのも同じ感覚でしょう。この会社の製品なら、過去の体験や周囲の評価から、無条件に「この製品なら間違いないハズだ」「これより優れているものは他に思いつかない」「これ一択でしょ」という強い信頼があるからです。

このようにブランド化できている製品は、誰かにとって他では替えの効かない「唯一無二の存在」になっているということがわかります。つまり、僕たちひとり起業家も、本命のお客様にとってあなた以外の選択肢が考えられないような、「唯一無二の存在になる」ことがブランディングのゴールの一つになるのです。

差別化をおすすめしない理由

ここで、差異化と同じ意味で使われる「差別化」という言葉が気になってきます。ビジネスでもよく使われる言葉ですよね。ですが、僕は基本的にこの差別化を意識することはあまりおすすめしていません。

なぜなら、差別化を意識するということは、他の同業者のサービスとの優劣(区別)にベクトルが向いてしまい、「お客様のために」という視点からズレてしまうリスクがあるからです。2つの違いについて僕なりにまとめてみました。

差別化と差異化の違い - WHY BRANDING

先ほどご紹介したように、僕はApple製品を愛用しています。他社からMacBookより性能が優れたノートPCが発売されたとしても、iPhoneよりも安くてスペックが高いスマホが発売されたとしても、僕は見向きもせずにApple製品を選びます。なぜなら、僕の期待を裏切らないと感じているからです。正直、ここに理論や理屈などの合理性はありません。ただ、自分の感情のままに選んでいるだけなのです。

別の例もご紹介します。僕はこれまでSEOコンサル、起業塾、セールスライティング、WEBマーケティングなどなど、累計400万円以上はビジネス講座に自己投資してきました。そのなかで最終的に決め手となったのは、いつも講師の人柄でした。その講師が信頼できそうな人で、なおかつ人として魅力的だと感じたときに、参加費が100万円を超える金額でも迷いなく購入していました。一方で、どれだけ魅力的なコンテンツだったり、講師がものすごい経歴だったとしても、人柄がどうしても好きになれないときは、購入しないと心に決めています。

というのも、講師の人柄には惹かれなかったけど、コンテンツの内容が欲しくて購入したことが2回ほどあるのですが、いずれも参加後に後悔したという経緯があるからです。(高い投資でした…泣)つまり、どれだけコンテンツが良くても、最終的には僕自身の感情に従って購入を決断しているということです。

LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンの北米地域社長を務めたポーリーン・ブラウン氏は、著書『ハーバードの美意識を磨く授業』でこのように語っています。

消費者が購入するかどうかを判断する際、その動機の約85%を占めるのは、製品やサービスに対する感覚や感情(感性)だ。製品の特性や機能を意識して、合理的に下している判断は、15%に過ぎない。しかし皮肉にも、マーケティング担当者は製品の特性や機能を宣伝することに、ほぼ100%の力を注いでいる。

出典:ハーバードの美意識を磨く授業: AIにはつくりえない「価値」を生み出すには

同業者との差別化に一生懸命になってしまった先には、価格競争しかありません。さらに、そういったサービス比較の発信だけでは、あなたの魅力が伝わらないので、仮に「今日から3日間だけ◯%OFF」みたいな値引き策を講じても、本当に参加してほしい本命のお客様からはご購入いただけないでしょう。ちなみに過去にスターバックスが倒産寸前になったときも、競合カフェとの差別化に必死になってしまい、お客様の方に意識が向いていなかったことが要因の一つとされています。世界屈指のブランド企業でさえ、差別化に一生懸命になってしまうとこのような状態になってしまうのです。

このように、人はサービスの優劣や値段などの合理的な判断よりも、自分の気持ち(感情)での意思決定を優先しています。この考え方は、ひとり起業家として長期的に成功するためにはとても重要な視点です。

今まで市場になかったような独創的で新しいアイデアは、目の前のお客様のニーズを真剣に追求していくときに生まれるものです。そのため「他社よりも優れたサービスをつくるべきだ」という視点からは、お客様にとって不要なサービスを+αするだけになりかねません。また、どこかで見たことがあるような、ありきたりで魅力に欠ける発想しか生まれません。その結果、顧客単価と満足度は下がってしまい、経営も悪循環になってしまうのです。

とはいいつつも、差別化という視点はとても重要です。なぜなら、自分の適切なポジションを把握するためだったり、短期的なマーケティング施策や競合リサーチをするときにその効果を発揮するからです。利益を追求するなら、差別化は一番の最適解かもしれません。その一方で、必要以上に追い続けることは、長期的な視点で考えるとデメリットになりやすいので注意したいですね。(自戒の念も込めて)

マーケティングとブランディングの違い

あらゆるビジネスにおいて使われる、マーケティングとブランディングという2つの言葉。この2つには、どのような違いがあるのでしょうか。せっかくの機会なので、今回は語弊を恐れずにあえてこの2つの違いについて僕なりに言語化してみました。

マーケティングとブランディングの違い - WHY BRANDING

ちなみにこの図は、グローバルブランドの構築方法について、デザインの視点で情報発信しているFreshtraxさんの『意外と知らないマーケティングとブランディングの違いとは』の記事を参照して作成しました。僕なりにコーチ、コンサルなどの講座型ビジネスを実践しているひとり起業家に当てはまるように編集を加えています。

比較してみた結果、マーケティングは「反応してもらうための施策」で、ブランディングは「関係構築するための施策」であると定義してみました。どちらもひとり起業家のビジネスにおいて、とても重要な要素であると考えています。また今WEBマーケティングを実践しているひとり起業家さんたちは、マーケティング寄りの傾向が強いとも感じました。これからは、「見せる」と「魅せる」はしっかりと意識していく必要がありそうです。

一応このように2つの違いを区別してみたのですが、そもそもの話をすると、マーケティングとブランディングという言葉はわりと最近生まれた言葉で、世の中の経営者たちにわかりやすく説明するために、識者たちが後付けした概念だと個人的に考えています。というのも、実際にマーケティングやブランディングをほとんど気にしていないのに、上質なブランドを構築している企業やひとり起業家はたくさん存在するからです。

例えば、Snow Peakを業界屈指のブランドにした山井太さんは、著書の『スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営』でこのように語っています。

多くの企業は経営戦略の決定をする上で市場を調査し、同業他社の取り組みを研究したりしながら、「競合に対してどう手を打つか」といったマーケティング戦略に力を注いでいる。しかし、最初のテントで分かるようにスノーピークはこうしたマーケティングを一切行ってこなかったし、これからもそのつもりはない。他社の製品をベンチマークして研究したところで新しい製品は生まれない以上、スノーピークがそんなことをする必要がないからだ。

出典:スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営

ちなみにこの著書では、愚直なまでのミッション経営と、突き抜けたユーザー目線の商品開発について語られています。

一昔前なら、この2つの違いについて、わざわざ区別して解説する必要はなかったのかもしれません。ですが現在は、WEB上で「マーケティング」と「ブランディング」の2つの言葉が乱立していて、どの情報を信じたらいいのかわからない状況になっていますよね。そういう意味では、この2つを明確に言語化することで、そういった方の悩みを解決できる可能性があると感じたので、語弊を承知の上であえて区別してみました。人によっては考え方も違うと思うので、あくまで一つの参考事例として活用してみてください。

ブランディングでやること

ここまで「ブランディングとは」について解説していきました。なんとなく理解はできたけど、結局ブランディングって何をするの…?と疑問に感じた方も多いかと思います。そこで次は「ブランディングでやること」についてまとめてみました。すでにマーケティングを勉強したり実践している方は、耳馴染みのある用語も登場してくると思います。どの考え方が正解とかはありませんので、ぜひ参考までにチェックしてみてください。

自分の価値を具現化する

ブランディングでは、まず自分の価値を具現化することから考えていきます。ここでいう自分の価値とは、主に機能的価値と感情的価値の2つに分類されます。

ブランディングとは一貫性を出すこと - WHY BRANDING

機能的価値とは、提供する商品やサービスが持つ機能のことを指し、ひとり起業家の場合は、自分がお客様に提供できるスキルとも言えます。一方で、感情的価値とは、自分の信念や情熱、ビジネスに対する想いなど、あなたの価値観のことです。また、理想のライフスタイルや生き方なども、感情的な価値になります。そして「具現化」とは、この機能的価値と感情的価値を、文章やコピーライティングをつかって言語化したり、写真やイラスト、ロゴなどのデザインとしてビジュアル化して、あなたの世界観をWEB上で「見える化」することです。

いくらあなたが、素晴らしいサービス、素晴らしい理念、素晴らしい価値観を持っていても、WEB上で「見える化」できていなければ、この世に存在していないのと同じです。なぜなら、ブランディングはイメージ資産の積み重ねなので、お客様が見ることができなければイメージする”きっかけ”すら無いからです。もちろん、見る”きっかけ”が無くても、リアルの口コミで広がる可能性はあります。ですが、WEBが主戦場の現代では、地域ビジネスなどの小さなコミュニティでない限りかなりキツイと思われます。さらに、今のWEBマーケティングの状況は、ただそれっぽく「見える化させれば売れる」という時代は終わったと感じています。

というのも、まだWEBのコンテンツ販売(無形商品の販売)があまり普及していないときは、テキストベースの単調なLPでも50万円や100万円の高単価な講座が売れる時代がありました。今それをやるとちょっと怪しい感じすらあるので、みんなcanvaなどを駆使して見栄えの良いLPやSNSの投稿が大量発生しています。そんなカラフルなアウトプットが溢れる中で、何の戦略も工夫も無しに自分のコンテンツを「見える化」させても、残念ながら誰の目にも留まらずに埋もれてしまいます…。InstagramやYouTubeに特化したコンサルタントが増えているのも納得です。

このように、具現化(見える化)する能力は、これからの時代ではますます重要になってくると考えられます。言い換えると、今後は「見え方をコントロールする力」が求められていくということです。これについては、後ほど詳しく解説していきます。

すべてのタッチポイントに一貫性を出す

先ほどブランディングとは、お客様の頭の中のイメージ資産であると説明しました。では、具体的に何をしたら僕たちのイメージは形成されてくのでしょうか。

その答えは、「タッチポイント」です。タッチポイントとは、お客様とあなたのコンテンツが触れる部分のことを指します。InstagramやXの投稿、LP、ホームページ、ブログ記事などのWEBコンテンツは、すべてあなたとお客様のタッチポイント(触れる場所)です。タッチポイントは、下図のようにコンセプトを軸に見える化していく作業になります。(ちなみにコンセプトは、ミッションを軸に検討していきます。詳細は記事の後半で。)

参考文献:コンセプトの教科書 あたらしい価値のつくりかた

また、コンサルやコミュニティ運営ではZOOMを使うことが多いですが、このときの服装や話し方なども、あなたというブランドイメージを固めるタッチポイントになります。他にも、チャットでの言葉遣いや接し方、相手への気遣い、ビジネスに対する姿勢なども、あなたのブランドイメージを形成する重要なタッチポイントです。

さらにいうと、デザイナーさんや税理士さんなどの外注さんも含めた、すべてのビジネスパートナーと触れ合う部分もタッチポイントになります。なぜなら、表面上に見えているコンテンツは、こういった縁下の力があってこそのアウトプットだからです。ちなみに僕は、ビジネスパートナーを大事にできないブランド(そういう発信者たち)は、どんなに良いプロダクトやサービスでも個人的に好きになれません。

少し話はそれましたが、タッチポイントに一貫性を出すことは、僕たちがブランド構築をしていくなかで常に意識しておく必要があるのです。くまもんや中川政七商店など、数々のブランドを手掛けてきた水野学さんは、慶應義塾大学で開催した講義の中でこのように語っています。

以下「アップルは”すべてが”かっこいい」より
アップルの商品は同じジャンルのなかで比べても安いわけではないし、スペックだけを見れば、ほかの企業からもっと手ごろな価格で高スペックなものも出ています。なのに、なぜアップルは、ここまで人気が出たのか。やっぱりそれは、「商品がかっこいい」からだと思うんですよ。
もっというと、本当はかっこいいのは商品だけじゃないんです。アップルは、あらゆるアウトプットがかっこいい。ニューヨークや銀座にあるアップルストアの建物もかっこいいし、ウェブサイトもかっこいい。商品の梱包の仕方もかっこいい。すべてがかっこいいから、新しい商品が出るときにも、まだ見ないうちから「かっこいいものが発売されるに決まっている」とまで思ってしまう。

以下「ブランド力がある企業の3条件とは」より
そこまで徹底しているから、消費者はアップルに対して、「高い美意識をもって、デザインに力を入れている企業」というイメージを抱くんですよね。

出典:「売る」から、「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講座

つまり、あなたが本命のお客様から、自分のことをどんな風にイメージしてもらいたいか、自分に対してどんな感想をもってもらいたいのか。この見え方をコントロールする作業こそが、ブランディングでやることなのです。

僕も個人的にAppleのファンですが、福岡の西通りにあるアップルストアもめちゃくちゃかっこいいです。ちなみに、2023年にAppleの向かい側にARC’TERYXのストアも完成したのですが、こちらの作り込みも半端じゃなかったです。ARC’TERYXはアウトドアに特化したブランドで、こだわりが強すぎる企業なのですが、そのタッチポイント(アウトプット)が見事に店舗にも反映されていました。

繰り返しになりますが、ブランディングとは、お客様の頭の中のイメージ資産です。つまり、今ご紹介してきたすべてのタッチポイント(アウトプット)に、あなたという価値を具現化していくことで、ブランドとしての一貫性が出せるようになります。

成功者のマネをしても上手くいかないというのは、ここにヒントがあると感じています。なぜなら、学んだことをそのままInstagramに投稿したり、最新の広告集客のやり方を実践しても、あなたの考えや価値観を反映させていなければ、誰でも言えるような薄っぺらいコンテンツに見えるからです。特に広告経由で集客したお客様は、あなたとの関係性がかなり薄いので、セールスまでにしっかりと価値観を伝える必要があります。

このように、すべてのタッチポイントに、あなたの一貫した価値観やメッセージを反映させていくことが、あなたのブランドを強くしていきます。いつもブレないし、カッコいいと感じる発信者は、無意識にここを徹底できているのでしょう。すべてのアウトプットに対して、あなたのブランドがしっかりと反映されているのかどうか、公開ボタンを押す前にぜひチェックしてみてください。

見え方をコントロールする

ブランドは細部に宿ると言います。WEBサイト、SNSのプロフィール、言葉遣い、姿勢、行動など、露出しているすべてのアウトプットに対して、徹底的にあなたのブランドを反映させて「見え方をコントロールする」という意味です。

ちなみにこのアウトプットは、お客様だけでなく、自社のスタッフや取引先のビジネスパートナーに対しても同じです。中川政七商店さんがリブランディングを実施したときは、バックヤードの段ボール箱にまで新しいロゴデザインを反映させたそうです。それくらい会社が徹底してくれたら、もし自分がお店のスタッフだったら嬉しいですよね。働くのが楽しくなります。

もしかしたらあなたは、この「見え方のコントロール」について、あまり重要ではないと考えているかもしれません。ですが、数々の有名ブランドを手掛けてきた水野学さんによると、上質なブランドを持つ経営者は、共通してこの「見え方のコントロール」を重視していると強調しています。

以下「ブランド力がある企業の3条件とは」より
力のあるブランドをつくろうと思ったら、あらゆるアウトプットをコントロールする、つまり、見え方をコントロールする必要がある
じつはそれが実現できている企業、つまりブランド力がある企業には共通点があります。ぼくがみたところでは、その条件は3つ、です。
ひとつは、「トップのクリエイティブ感覚が優れている」こと。
もうひとつは、「経営者の”右脳”としてクリエイティブディレクターを招き、経営判断を行っている」こと。
そして最後は、「経営の直下に”クリエイティブ特区”がある」ことです。

出典:「売る」から、「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講座

同著では、経営者がクリエイティブに尽力しているブランドとして、ユニクロ(ファーストリテイリング)を事例に紹介していました。もともとユニクロは、90年代はじめ頃まで山口県で展開していた地方ブランドでした。ですがユニクロの柳井社長は、ナイキやコカコーラなどのブランディングを手掛けてきた、クリエイティブ業界の世界的権威であるジョン・C・ジェイ氏を迎えることで、日本全国のユニクロへと発展していきます。その後、ジェイ氏は契約終了のため一度ユニクロを離れますが、世界展開をするために改めて柳井社長から熱烈なオファーがあったとされています。その結果、あなたもご存知の通り、ユニクロは世界的にもファンが多いグローバルブランドに成長できたのです。Appleのスティーブ・ジョブズ氏も、ドイツのバウハウスのクリエイティブに大きな影響を受けたとされていますよね。このように、経営をしていく上でクリエイティブの重要性は、どんどん高まっていると考えられます。

ひとり起業家の情報発信を見てみると、このクリエイティブの部分に関しては、まだまだ未発達の分野だと感じています。反応率を高めるコピーライティングばかりが駆使されており、アウトプットには発信者の個性や価値観が反映されておらず、魅力的なコンテンツが少ない印象です。(もちろん僕も含めて…汗)逆に言えば、すべてのアウトプットに対してクリエイティブの質にこだわることで、ブランド力を高められる可能性は十分にあると考えられます。

僕の感覚では、数億単位の販売実績のあるWEBマーケッターさんでも、このクリエイティブの分野に関しては、力を入れている方がまだまだ少ない印象です。というより、今までこの分野のクオリティが低くても、コピーライティングなどのテクニックで売れてしまうので、伸ばす必要性が無かったというのが正しいのかもしれません。

これからのWEBマーケティングでは、AIが本格参入してきます。AIは綺麗なデザインや、見栄えの良い写真を作ったりはできますが、人間の感情は理解できないので、この「見せ方のコントロール」は僕たち人間の強みを活かせる分野になると考えています。

今後はデザインや写真、動画などのクリエイティブな部分が、今まで以上に求められるようになるでしょう。クリエイティブは好き嫌いがはっきり分かれる分野なので、ユニクロの柳井社長のように外部から優秀な”右脳”(クリエイティブディレクター)を招くか、Appleのスティーブ・ジョブズ氏のように自分自身でその力を磨いていく必要が出てきそうですね。

ミッションがブランドを強くする

僕は、ひとり起業家向けのビジネス講座の立ち上げにあたって、自分の知識を補うために、手持ちの書籍に加えてビジネス書を30冊以上追加で購入して読み漁りました。他にも、自分が愛用している商品やサービスについて、その成り立ちや経営者のインタビューコラムなど、ブランディングに関係しそうなものはとにかく調べまくりました。(もはや趣味レベル。笑)

そのなかで、長く愛されているブランドには、ある共通点があることに気づきました。それが、自分たちが言語化したミッションを愚直に遂行する経営をしているという点です。「何をどう売るのか(What、How)」ではなく、「なぜ売りたいのか(Why)」というミッションに対して、どれだけ自分たちがコミットできるか、これがブランド構築の本質であるという結論に至ったのです。

ここでは、なぜひとり起業家にミッションが必要なのか、について僕なりにまとめてみたので、ぜひ参考にしてみてください。

ミッションとは

ミッションとは簡単にいうと、なぜそのビジネスをやるのかという「存在意義」のことです。「何をどう売るのか(WHAT、HOW)」ではなく、「なぜ売りたいのか(WHY)」を言語化したもの、という言い方もできます。つまりミッションとは、自分のビジネスがどのように世のため人のために貢献できているのか、その「志」を言語化したものです。

企業によっては、経営理念やビジョンとして定めている内容がミッションに当たる場合もあります。また最近では、パーパスという言葉で表現している企業もありますが、ほとんど同じ意味だと思っていただいてOKです。(厳密に言えば違うようですが、詳細は省きます)大事なのは言葉の定義よりも使い方なので、お好きな解釈をしてもらえたらと思います。

ひとり起業家たちのなかで、自分のミッションを真剣に考えて、明確に言語化している人はあまりみかけませんよね。僕がこれまで参加してきたひとり起業家向けのビジネス講座でも、ミッションの重要性を教える先生は一人もいませんでした。むしろ、ミッションなんて起業初期には考えなくて良い、後から自然と湧いてくるものだよ、みたいなスタイルがほとんどだと思います。僕自身、脱サラして年商1000万を超えたあとでも、目先の数字を追いかけるばかりで、ミッションの必要性なんて考えたこともありませんでした。確かに、短期的にまとまったお金が稼げれば良い、ブランド構築なんてしなくても良い、ビジネスはラクして稼げればOKと考えるなら、ミッションについて考える必要は無いでしょう。

ですが、もしあなたが自分のビジネスについて、家族や友人に認められたい、誇りと信念が持てるブランドにしたい、世間に認められて応援されたい、お金だけの関係ではなく心から信頼できる仲間と出会いたい、仕事と遊びの境目がわからないくらいビジネスに夢中になりたい、このように考えるなら、やはりミッションは必須だと思います。

長く愛されるブランドの共通点

ミッションは額に入れて、とりあえずみんなの見えるところに飾って、朝のミーティングでルーティン作業のように唱和するだけでは意味がありません。

上質なブランドを持つ企業は、重要な経営判断をするとき、マーケティングの戦略と戦術について判断をするときには、必ずミッションに立ち返ります。また、新入社員やアルバイトの研修でも、ミッションの浸透を怠りません。社員に何かメッセージを伝えるときは、事例を交えながら、どのように自分たちが社会貢献しているのか、という自社のミッションに関連付けて語ります。このように、上質なブランドを構築してきた経営者は、掲げたミッションの浸透に全力を尽くしているという共通点があるのです。

ミッションの重要性については、多くの経営者のバイブルにもなっている名著ビジョナリー・カンパニーでこのように語られています。

ビジネス・スクールの教えに反して、「株主の富を最大限に高めること」や「利益を最大限に増やすこと」は、ビジョナリー・カンパニーの大きな原動力でも、最大の目標でもない。ビジョナリー・カンパニーの目標はさまざまで、利益を得ることはそのなかのひとつにすぎず、最大の目標であるとはかぎらない。確かに、利益を追求しているが、単なるカネ儲けを超えた基本的価値観や目的といった基本理念も、同じように大切にされている。しかし、不思議なもので、利益を最優先させる傾向が強い比較対象企業よりも、ビジョナリー・カンパニーの方が利益を上げている。

引用:ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

ビジョナリー・カンパニーについて補足します。1950年以前に設立された企業のなかでも、業界で卓越している25社を対象に、成功の原理原則をまとめたものです。調査対象には、ウォルト・ディズニーやSONYなど、僕らと馴染みの深い企業もあります。

ちなみにSONYは、1945年に戦後の荒廃した日本で設立されました。東京の日本橋にあった空襲で焼け落ちた古いデパートのビルのなかで、多くの経営者にリスペクトされている井深大氏や、スティーブ・ジョブズ氏のアイドル的な存在だった盛田昭夫氏を含む7人の社員とともにスタートしたとされています。そんなSONYですが、設立時にまず行ったことは、現代のミッション・ステートメントにあたる「設立趣意書」の作成です。一部のみですが、ビジョナリー・カンパニーにて現代文に翻訳された内容をご紹介します。

会社創立の目的
・技術者たちが技術することに喜びを感じ、その社会的使命を自覚して思いきり働ける職場をこしらえる。
・日本再建、文化向上に対する技術面生産面よりの活発なる活動。
・非常に進歩したる技術の国民生活内への即時応用。

経営方針
・不当なるもうけ主義を廃止しあくまで内容の充実、実質的な活動に重点を置きいたずらに規模の拡大を追わず。
・技術面の困難はこれをむしろ歓迎し量の多少に関せず最も社会的に利用度の高い高級技術製品を対象とす。
・一切の秩序を実力本位、人格主義の上に置き個人の技能を最大限に発揮せしむ。

引用:ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

創業者の井深大氏は、資金繰りの計画や事業路線など、まだビジネスの方向性が何も固まっていない状態のときに、このミッションを定めたとされています。ビジョナリー・カンパニーでは、このような状態の会社が、SONYのようにミッションを明確に言語化している事例は少ないことが強調されていました。現代に至るまで、なぜSONYが素晴らしいプロダクトを生み出し続けて、世界中からリスペクトを受けてきて、たくさんのファンに愛されてきたのか…。この「設立趣意書」からもその理由が伝わってきますよね。経営者たちが啓蒙する「WHY」に心を動かされて、優秀な技術者たちが集まってくるのも納得できます。原文はもっと長いので、気になる方はSONYの公式サイトで確認してみてください。ちなみに、現在のSONYはパーパスも策定しているので、こちらも参考になるかと思います。

スティーブ・ジョブズ氏も、Appleに復帰した際のキャンペーン広告で「Think different」というスローガンを掲げました。歴史上の偉人たちを「世界を変えたクレイジーたち」と表現することで、Apple社内で強化させたかった価値観や哲学を浸透させたとされています。TEDの人気スピーカーであるサイモン・シネック氏は、Appleが成功できたのは「なぜ売るのか」という「WHY」を説いたからだ、とその成功要因について解説していました。TEDのサイモン・シネック氏の提唱するゴールデン・サークル理論は、ミッションの重要性について深く関わりがあるので、まだ見ていない方はこちらからぜひチェックしてみてください。

Snow Peakをアウトドア業界の唯一無二のブランドにした山井太社長も、愚直にミッションを軸にビジネスを展開してきた一人です。自身の著書のなかで、ミッションの重要性についてこのように説いています。

スノーピークは父が創業した会社であり、私が入社したのは86年のことだった。その時点で社内にはミッション・ステートメントがなかった。私は「経営理念がないと何のために働くか分からない。目指すべき方向をしっかりと決めて明文化する必要がある」と考えた。
(中略)
もう30年近く経過しているが、いつも皆で「真北の方向」に向かって進んできた。社員は10倍以上の約160人となり、売上高は9倍の45億円ほど、売上総利益は17倍の23億円ほどに成長している。

出典:スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営

このように長く愛されるブランドは、自分たちのミッション(存在意義)を言語化して、浸透させることを愚直にやってきただけなのです。これは、ひとり起業家も同じことが言えます。ブランディングで検索すると、統一感が大事とか、自分らしさがどうとか、ストーリーを使おうとか、テクニック的な側面が強い情報で溢れています。ですが個人的には、ミッション浸透こそが、ブランド構築の本質ではないかと考えています。

ファンが多い発信者は「志」を言語化している

ミッションの言語化で成功しているのは、世界に名を知らしめている大企業だけではありません。ひとり起業家でも、自分の「志」を言語化している方はたくさん存在します。僕が個人的にビジネスに対する考え方がかっこいいと感じた方や、個人で強いブランドを立ち上げている方なども、発信の節々にミッションを感じさせるアウトプットをしていました。

クレンジングバームの生みの親である咲丘恵美さん(さきめぐさん)もその一人です。独立後にエイジングケアブランドRe:CODE(リコード)を立ち上げて、YouTubeを中心に美容の情報発信をされています。さきめぐさんが開発したワクチナイザー(美容液)は、再入荷しても即売り切れになるほどの人気ぶりで、多くのファンからリピートされています。以下は、YouTubeの登録者数が8万人を突破したときに、コミュニティに投稿された文章の一部です。

地道にコツコツと「私のゴールは”人の美と幸せのお役に立つこと”」という背骨を貫いての数字なので喜びもひとしおです。
連日睡眠時間を削ってもコメント返信している私に「なんでそんなことまでやるの?」という意見は多いのですが、全く耳を貸さず🤣

ふと、先日スタッフが「咲丘さんを見ていると、”努力は実る”という人生を信じられるんです」と言ってくれました。

信じてついてくれてきたスタッフ達にも感謝でいっぱいです。
戦友のような。愛をどれほど注いでも足りないと感じてしまうほど大事な大事な存在🥰

引用:さきめぐ Beauty Class【美容家・化粧品開発者】- YouTubeコミュニティ投稿より

この文章を見るだけでも、なぜさきめぐさんが強いブランドを構築できているのか、その理由がジンジンと伝わってきますよね。

他にも、僕がSEOのコンサルタントとして活動しているときにお世話になったヨガの先生は、「私は出会った人に、大輪の花を咲かせたい」といつもおっしゃっていました。この先生は、博多の中洲で40年以上もご夫婦でビジネスをしており、総資産は10億円以上、60代後半にも関わらず20代モデルのような脅威のスタイルの持ち主。博多地区の経営者と多くのコネクションがあり、ヨガの技法を応用して、ビジネスで使える呼吸法やアンチエイジングなどを普及されています。博多というビジネスの激戦区で、ブランディングなんて使われていない時代から商売をしてきた方ですが、まさに強いブランドを持っている起業家と言えますよね。

このように、ミッションの重要性は大企業に限ったことだけではありません。ひとり起業家やフリーランスも、自分の中で「人や社会のためにどう在りたいのか」というミッションを言語化しており、その人が発信するコンテンツの節々で、価値観や哲学、情熱などの、ビジネスに対する想いを感じることができます。さらに、その人の周りに集まってくるのは、本当に素敵な人間性をもった方々ばかりであることも、強調しておきたい事実です。

なぜ今更ミッションなのか

このnoteを見ている方のなかには、ひとり起業家だったとしても、ミッションを重視するなんて当たり前の話ではないかと思われる方もいるでしょう。このように感じたあなたは、おそらく素敵なブランドを構築しているのだと思います。ですが実際には、ミッションを現場レベルにまで落とし込めている経営者は、そう多くは無いのが現実です。

なぜなら、もし多くのファンに愛される素敵なブランドを構築できている企業ばかりなら、CSR(企業の社会的責任)、パーパス経営、SDGsなどの本来のビジネスの在り方を啓蒙するような言葉は生まれないはずだからです。スターバックスジャパンの元CEOである岩田松雄さんも、自身の著書でこのように語っています。

CSRという言葉が一時流行しました。企業の社会的責任。実は、私はこの言葉が嫌いです。「責任」という言葉の中に「本当はしたくないけど、やらざると得ない」という後ろ向きなニュアンスを感じるからです。大企業は儲けすぎだとの批判もあるから、それを抑えるために、どこかに寄付でもしておこうという風に感じるからです。
(中略)
そもそも事業を通じて、世の中を良くしているのが企業なのです。事業そのものがすでに社会貢献であるし、そうあるべきです。どうして社会貢献が「建前」になってしまうのか。だから私は、CSRという言葉が好きではありません。

引用:今までの経営書には書いていない 新しい経営の教科書

ちなみに岩田松雄さんは現在、リーダーシップコンサルティングを主催しており、ミッションを軸にした経営を啓蒙しています。ビジネス書もたくさん出版されていますので、経営やブランディングを勉強されたい方はぜひチェックしてみてください。

そもそもの「在り方」が問われているのは企業単位ではなく、ひとり起業家やフリーランス界隈にも同じ現象が起きています。僕が脱サラしてひとり起業したときのブログアフィリエイトでも、SNSや情報番組でたびたび社会的意義について問われていました。せどりやSNSをつかったアフィリエイトなども同様です。もちろん、真剣にエンドユーザーのために実践している人もたくさんいます。ですが、目先の利益に目がくらんでしまい、社会的な意義が問われるようなグレーゾーンにばかり手を染めてしまう人たちは、いつの時代も一定数は必ず存在するのです。ブランド構築を考える前に、自分のビジネスモデルは、本当に人や社会を豊かにしているものなのか…。そこから考える必要があるのかもしれません。

こうやって見てみると、ひとり起業家やフリーランス界隈で起きている現象は、これまで企業が辿ってきた歴史と全く同じですよね。今後はひとり起業家やフリーランスたちの界隈にも、CSR(企業の社会的責任)、パーパス経営のように、そもそもの在り方を問われるような新しい言葉が生まれそうな予感がしています。ということで、なぜ今更ミッションを考えないといけないのか、について僕なりに考察してみました。ぜひ参考にしてみてください。

志の無いブランドは人を魅了できない

ミッションを軸にビジネスを展開しないブランドは、優秀な人材を引き寄せにくい、もしくはせっかく採用してもすぐに離れてしまいます。また、お客様の購買意欲も低下してしまうので、長期的に見ると不利に働く可能性が非常に高いのです。この件については、実際にデータとしても出ており、様々なビジネス書で啓蒙されています。

マッキンゼー社が1997年におこなった調査によると、企業幹部の58%はブランドの価値と文化を社員の最大の動機付け要因と見なしています。それに対し昇進や成長39%、報酬の差別化はたった29%の支持しか得られなかったのです。優れたミッションや価値観は、優れた人材を引き寄せることを裏付けています。

引用:今までの経営書には書いていない 新しい経営の教科書

興味深いデータがあります。ビジネス特化型SNSを運用するアメリカのリンクトインが2016年に3000人のビジネスパーソンを対象に実施した調査によると、「人々の生活や社会に対してポジティブなパーパスを掲げている企業で働くならば、給与が下がってもいい」と答えた人は全体の49%と、ほぼ半数を占めるという驚くべき結果が出ました。
(中略)
パーパスを明確に打ち出し、それを軸にしてコンセプト、戦略、社員の行動様式まですべてを統一する。こうしたパーパス主導の経営のあり方、私たちのいうパーパス・ブランディングが世界中で広がってきているのは、ミレニアル世代はもちろん、今の時代に求められているからこそと言えるでしょう。
※パーパスは、ミッションとほぼ同義です

引用:パーパス・ブランディング ~「何をやるか?」ではなく、「なぜやるか?」から考える

保険会社のアフラックの研究結果によれば、ミレニアル世代の約92%が、エシカルな企業から製品を購入したいと考えているという。消費者(そして地球)へ倫理的義務の一環として、企業は自分たちの扱う製品がバイヤーにとって利益を生むだけではなく、地球環境や社会的な問題といった”大義”のための商品であることを伝えなくてはならない。社会は消費型から循環型へと転換しており、こうした取り組みは、今後さらに重要になるだろう。
※エシカルとは、道徳的・倫理的といった意味です

出典:ハーバードの美意識を磨く授業: AIにはつくりえない「価値」を生み出すには

文章中に出てくるミレニアル世代とは、1987年以降に生まれた世代のことで、人類で一番最初にスマホやSNSなどに触れた人たちに当たります。(日本では”ゆとり世代”と言われてますね。僕もこの世代です。)

ゆとり世代の特徴は、消費や就職などの選択において、企業からの一方的に発信される情報を鵜呑みにせず、直接会わなくても共感できる人や、共通の悩みを持つ人と情報交換をして意思決定を行う傾向があるとのこと。ITリテラシーが高く、社会問題への関心も高い世代で、2025年にはこのミレニアル世代が日本人口の50%を占めるとされています。

ミレニアル世代の優秀な人材となれば、喉から手が出るほど欲しい経営者はたくさんいるはずです。(僕も欲しいです…!)これは企業だけの話ではなく、優秀な外注さんや業務委託パートナーを必要とするひとり起業家やフリーランスでも同じですよね。僕もブログアフィリエイトをしていたときは、記事作成を代行してくれる外注さんを同時に10人以上雇っていました。ですが、必死にマニュアルを作って、報酬や待遇面を良くしているにも関わらず、雇っては飛んで、雇っては飛んで…。を繰り返していました。当時は、なんですぐに辞めちゃうんだろうと悩んでいましたが、ブランディングについて勉強していくうちに、その理由がわかってきた気がしています…。

僕の友人にも、SNSの運営代行をしながら一般のサラリーマン以上に稼いでいるミレニアル世代の方がいました。給与形態が成果報酬だったので、運営メディアがバズったときは月100万円以上の報酬をもらっていたりと、はたから見ると羨ましい限りですよね。ですが、その友人はある日突然、音信不通になってしまったのです。理由はいろいろと考えられますが、とにかくバズらせて瞬間最大風速を追いかけるメディアの運営方針に気が滅入っていたことは、外野にいる僕から見ても明白でした。

このように、人は目先の利益だけでは、一時的に協力してくれても長期的に引き止めることは困難になってきます。悪い意味でマニュアル通りにしか動いてくれませんし、ただ言われた作業をこなすだけで自発的で積極的な行動もありません。これからの時代は、自分のビジネスの「志」を心から語れないブランドは、どんどん淘汰される時代になっていくのかもしれませんね。

志の無いブランドは自分も楽しめない

ミッションを浸透することが、なぜモチベーションを高めることに繋がるのか。それは、ミッションに忠実な経営をすることが、人間の根本的な欲求を満たすことに繋がるからだと考えています。AppleやSONY、リッツカールトンなど世界のトップ企業のエグゼクティブに対して指導をしてきたパフォーマンス改善の世界的権威トニー・シュワルツ氏は、著書のなかでこのような図を掲載していました。これは、マズローの5段階欲求を参考にしたもので、現代人が100%人生を楽しみながら、仕事で最高の成果を出し続けるためには、次の5つの欲求を満たす必要があるとしたものです。

参考文献:忙しい社長のための「休む」技術

上図のうち、現代人は普通に働いてさえいれば、「生存」の欲求は満たされている状態にあります。ただし、パフォーマンスを100%引き出し、仕事で楽しみながら成果を出すためには、「持続可能」「安全」「自己実現」「存在理由」という4つの原始的な人間の欲求を満たす必要がある、という考え方です。上記の内容について補足するために、少しだけ起業当初の僕の失敗談をお話します。

僕が学生のときは、就職氷河期と言われる時代でした。そんな中、なんとか就職できた会社は、昭和の空気感が漂う体育会系の過酷な労働環境でした。5年ほど働きましたが、ストレスで体中にじんま疹が出てしまい、10円玉サイズの抜け毛に悩まされる日々…。毎日脱サラしたいと考えていた僕は、時間と場所に縛られない自由な働き方にあこがれてブログ副業を始めました。数ヶ月ほど頑張った結果、順調にブログから収益が入るようになり念願の脱サラに成功。もっと稼ぎたいと思うようになり、ブログの稼ぎ方を教えるコンサルタントになりました。その結果、毎日2〜3時間ほどの作業だけで、サラリーマン時代の月収以上のお金を稼げるようになり、大きな金額ではないですが、切望していた自由な働き方をある程度は実現できたのです。

でも僕は、毎日モヤモヤしていました。もっと年収を増やすために、新しいブログを立ち上げて、稼げそうな記事ネタを探して、自分の代わりに記事更新してくれる外注さんを探して…。このように、自分がラクして稼ぐために、都合よく働いていくれる人たちを見つけて、自動化(仕組み化)という名の歯車に当てはめていく日々を過ごしていました。ですが、こんな作業を繰り返しても、まったくもって心がワクワクしなかったのです。

これは僕だけでなく、コンサル生たちにも同じ現象が起きていました。気がつけば、コンサル生と定期的に行うZOOM面談では、どうやったらモチベーションが続くのかという相談ばかり。楽しい未来を想像してはじめたビジネスのはずが、ぜんぜん楽しくなかったのです。当時の僕に「なぜビジネスをやっているのか」という質問をしたら、間違いなく「稼げるから」と即答するでしょう…。

今振り返ってみると、先ほど図でご紹介した欲求のうち、僕がクリアできていたのは(生存)と(持続可能)だけでした。残り3つの、このビジネスをやり続けて本当に家族や友人は自分のことを尊敬してくれるのか(安全)、本当に自分がやりたいことなのか(自己表現)、本当に人や社会に価値提供できているのか(存在理由)については、全然満たされていなかったと感じています。特に、人から認められたい、尊敬されたいという欲求は、食事と同じくらい重要な原始的な欲求であるとされています。つまり、ミッション(人や社会において、自分にどんな存在意義があるのか)に忠実な経営をすることは、心理学的なアプローチからみても理にかなっているという見方もできるのです。(ちなみにマズローの欲求5段階説は、多くの経営者から支持されている理論ですが、科学的な根拠がないという理由から一部の識者からは批判されているとか…。個人的には当てはまることが多いので、割と鵜呑みにしています。)

ただ目先の数字を追うだけの、自動化や仕組み化の歯車にされた人たちは、たとえ高い報酬を支払ったとしても、自分のやっていることに誇りや信念、情熱を感じられないなら辞めてしまいます。それに呼応するように、自分自身のモチベーションも下がってしまうのです。今思えば当たり前過ぎる話なのですし、当時の僕も頭のなかでは理解できているつもりでした。なぜなら、昔から僕が好きなブランドたちが発信するアウトプットは、どの製品も、どのサービスも、どのWEBコンテンツにも、誇りと信念が感じられたからです。ですが、とにかく脱サラしてラクして稼ぎたいと考えていた当時の僕にとっては、意識と行動が矛盾していることに気づくまで、とても時間がかかってしまいました…。このnoteを見ているあなたは、僕と同じ間違いを侵さないように注意してくださいね。

上質なブランドは「ORの抑圧」をクリアできる

ここまでミッションの重要性について見てきましたが、結局のところ稼げなかったら意味が無いでしょ!って感じた方も多いはずです。僕もそう思います。これは、多くの経営者がもつ当然の悩みで、なかには「ミッションなんて建前でしょ」という考えをもつ方もいるほどです。この疑問に対して、ビジョナリー・カンパニーでは「ORの抑圧」と「ANDの才能」として解説されていました。

ORの抑圧とは、例えば「A:基本理念(ブランド)を守ること」と「B:利益の追求」は相反関係として考えて、2つを同時に得ることは無理だ…!と諦めてしまっている状態を指します。その一方で、AとBは相反関係ではなく、2つを同時に追い求める姿勢こそ経営者のあるべき姿だ…!と考えるのが「ANDの才能」です。「ORの抑圧」に屈することなく「ANDの才能」を開花させてきた経営者こそが、ビジョナリー・カンパニーを作れるという話です。(めっちゃ詳細を省いた僕なりの解釈なので、詳細はビジョナリー・カンパニーを参照してください…。)

実際に、今までご紹介してきたSnow Peakは、ミッションステートメントを定めて以降、従業員数10倍、売上9倍にまで伸ばして業界屈指のブランドにしています。株式会社イオンフォレスト(THE BODY SHOPの運営会社)の代表取締役に就任した岩田松雄さんも、ミッションを軸にした改革で、4年という短期間ながら売上2倍(利益5倍)にしています。しかも、就任当初は離職率22%だった状態から、約2年で離職率2%に改善するなど、従業員の定着にも成功しています。このことからも、ミッションを軸にした経営が、スタッフの働くモチベーションを高めているのは真実味が増しますよね。

ファンから愛されるブランドは、一般的に逆説的だと考えられていることに屈すること無く、新しいアイデアで乗り切るための粘り強さを持っています。ミッションなんて建前で、とにかく利益を出さないと意味がないでしょ。という考えではなく、ミッションに忠実な経営で従業員を魅了し、着実に新規のお客様とリピーターを増やしながら、しっかりと利益も出すんだ…!という一貫した姿勢だからこそ、上質なブランドを構築できると考えられます。もちろん、実際にこれを実現するのは、めちゃくちゃ難しいです。ですが、ここで諦めずに自分らしく踏ん張れるかどうかが、My Brandの良し悪しを決める重要な分岐点ではないかと僕は捉えています。

起業当初でも「志」はあった方がいい

ここまで、ミッションとブランド構築の関係性について僕なりに調べてみた結果と考察をお伝えしてきました。結論、もしあなたが上質なMy Brandを構築したいと考えるなら、起業当初であってもミッションは言語化しておいた方がいいと思います。

とはいえ、起業したばかりなんて日銭をどうやって稼ぐかで頭の中がいっぱいなので、ミッションなんて考えられないというのが本音ですよね…。とりあえず言語化してみても、なんか偽善者っぽく見えちゃうし、人前で口にすることが恥ずかしい気持ちもめちゃくちゃわかります。ですが、そもそもミッションとは、必ずしも人前で口に出す必要はありません。あくまで、自分の見える範囲に留めておいて、ビジネスの判断基準として使うものとしておけばいいのです。

少し考えてみてください。あなたが好きなブランドは、その企業のミッションに共感したからでしょうか…?おそらくほとんどの方が、そういう理由でファンになっているわけではありませんよね。基本的にファンたちは、そのブランドが発信するアウトプットに魅了されているだけなので、必ずしもミッションを露出する必要は無いのです。

僕はオーストラリア発のスキンケアブランドであるAesopのハンドクリームを愛用しているのですが、公式HPを調べてみてもミッションやパーパスは明記されていませんでした。ですが、Aesopのアウトプットの随所に、強いこだわりや信念、誇りを感じ取ることができます。実際に素晴らしい製品ばかりで、店舗作りのこだわりもすごいです。また、アシュリー・オルセンさんとメアリー・ケイト・オルセンさんが立ち上げたラグジュアリーブランドThe Rowも、今や世界屈指のブランドにも関わらずミッションやパーパスは探しても見つかりません。ですが、お二人が発信するプロダクトやインタビューコラムからは、並々ならぬ"こだわり"とビジネスに対する想いが伝わってきます。(The Rowのインタビューコラムを見たい方はこちらから…!UK版VOGUEJP版VOGUE

このように、ミッションを露出することはマストではありません。自分とビジネスパートナーくらいにしか共有しない経営者も多いので、まずは遠慮なく言語化してみてください。ちなみに、僕のおすすめのやり方については、後ほどご紹介するのでお楽しみに。

ビジネスの本質から考えるブランディング

ここでは、My Brandを構築する具体的な方法をお伝えする前に、大前提として押さえておきたいビジネスの本質について、僕なりの考察をご紹介します。

結論からいうと、ビジネスの本質は「人」だと捉えています。スターバックスが世界的なブランドになった最大の理由は、コーヒービジネスではなく「ピープルビジネス」をしてきたからだ、という見方が今でも有力であるように、どんなビジネスだろうと「人」を大切にすることが、ブランディングにも必要不可欠になるという理屈です。

ここではビジネスの本質は「人」であるということを前提に、ひとり起業家のブランディングについて一緒に考えていきましょう。

成功の鍵は「人を動かす」こと

ひとり起業家がビジネスを成功させるためには、「人を動かす」ことがポイントになると考えています。何をあたり前のことを言ってるんだと自分でも思いますが、このあたり前のことができていないから、みんなビジネスに苦戦しているという話ですよね…。(耳が痛い)ちなみに、ここでいう「人を動かす」は、デール・カーネギー氏の著書「邦題:人を動かす」の内容とは関係ないので予めご了承ください。(僕はまだこの本を読んでいません…。)

では、ここでいう「人」とは誰を指すのか。個人的には、「お客様」「ビジネスパートナー」「家族・友人」の3つに分類できると考えています。

「人を動かす」の人とは - WHY BRANDING

「お客様」を動かすことができれば、当然ですが「売上UP」に繋がりますよね。そして、外注さんや自社のスタッフさんなどの「ビジネスパートナー」を動かすことができれば「商品やサービスの質UP」に繋がります。最後に、直接的にビジネスと関係ないと思われる「家族や友人」ですが、協力的な関係を構築することで「環境の質UP」に繋がります。つまり、この3つの「人」を動かすことができれば、ビジネスは成功に近づくのではないか、という理屈です。

人は感動すると応援してくれる

ではこの3つの「人」は、一体どのようにしたら協力的に動いてくれるようになるのか。それは「感動させること」にあると考えています。このアイデアは、出版社ディスカヴァー・トゥエンティワン創業者であり、元取締役社長でもある干場弓子さんから学ばせてもらいました。干場弓子さんは「伝えるために一番重要なこと」として、NewsPicksのYouTubeに出演した際にこのように語っていました。

伝えるというのは、相手に感動を起こすこと。ただし感動とは、お涙頂戴の感動だけではなくて、相手に「感じて動いてもらうこと」。ただ伝えただけで、相手に動いてもらえなかったら、それは伝わったことにはならない。

引用:YouTube「人生のステージが変わる」ただの会社員でも出来る。最強セルフブランディング「ビジネス書出版の方法」(次世代ビジネス書著者発掘:干場弓子)【NewSchool】

動画内ではビジネス書の出版におけるポイントとして紹介されていましたが、個人的にはビジネス全般における本質的なことに感じました。ちなみに、感情を動かすというのは、WEBマーケティングを実践していくなかで必ず学ぶことになるであろう「人を動かす6つの心理トリガー」なども、結局は同じようなことが解説されています。(影響力の武器より)

感動させるとは - WHY BRANDING

まとめると、人を動かすことができれば、ビジネスも動き出します。そして、人を動かすためには、感動させること。つまり心を動かすことで、応援される存在になれる、ということです。

感動させるためには言語化が必要

では、人の感情を刺激して、協力的に動いてもらうためにはどうしたらいいのか。それは、あなたの「なぜ(why)」を「言語化」することです。これは、TEDの人気スピーカーであるサイモン・シネック氏のゴールデン・サークル理論がわかりやすいでしょう。

参考:YouTube「サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか」

ゴールデン・サークル理論とは、相手に何かを伝えるときに「WHY」から語ることで、共感が生まれ、協力的に行動してもらえるようになるというものです。つまり、あなたのビジネスでも「なぜそれを売りたいのか」という「WHYストーリー」を言語化することで、お客様、ビジネスパートナー、家族や友人の感情を刺激して、協力的に動いてもらえるようになる、という理屈です。動画内では、スティーブ・ジョブズ氏やキング牧師、ライト兄弟などの歴史的な偉人たちを例に紹介されています。まだ見ていない方は、ぜひこちらのリンクから確認してみてくださいね。

ここまでの流れについて、図解で整理してみましたので一緒に見ていきましょう。

感動させるとは - WHY BRANDING
WHYストーリーとは - WHY BRANDING
ブランドプロミスとは - WHY BRANDING

このあと詳しく解説していきますが、ミッションやブランドプロミス、コンセプトは、すべてあなたの「WHYストーリー」から導き出していきます。ちなみに、ここで言うミッションとは、経営理念やパーパスなどの言葉とほぼ同義なので、あなたの耳馴染みの良い呼称に置き換えてください。ブランドプロミスも同様です。ビジョンやフィロソフィー(哲学)という言い方をしているブランドもありますよね。細かいニュアンスの違いや、そもそもの語源を辿れば云々…などがあると思うので、お好きな言葉をチョイスしてもらえたら幸いです。

以上が、ビジネスの本質から考えるブランディングでした。ぜひ参考にしてみてください。

ひとり起業家のブランドを構築する方法

ここからは、ひとり起業家のMy Brandを構築する方法についてご紹介していきます。僕が考えるブランド構築とは、下図のように大樹を育てるイメージを持っています。

ブランドの大樹 - WHY BRANDING

ミッションは、ブランド構築における土壌だと捉えています。豊かな土壌がなければ、立派なブランドの樹は育たないというイメージです。土壌が定まったら、次はブランドプロミスを言語化していきます。これは、あなたのビジネスがお客様に約束する未来のことです。この商品・サービスを使うことで、お客様をどんな素敵な未来へ導くのか、という約束事になります。最後に、ミッションとプランドプロミスから、商品・サービスのコンセプトを言語化していきます。このコンセプトを指針に様々なクリエイティブ(アウトプット)を作ることで、全体に一貫性が出せるようになり、ファンに愛されるブランドになるという流れです。これが、僕が考えるブランド構築の全体像になります。

それでは、具体的なブランド構築の流れについて5STEPでご紹介していきます。あくまで僕が考えるやり方なので、ご自身のお好きなフォーマットでお試しいただければ幸いです。それでは一緒に見ていきましょう。

STEP1:WHYストーリーを言語化する

まず最初に行うのは、あなたが「なぜ、それを売りたいのか」という「WHYストーリー」の言語化です。「ビジネスの本質からブランディングを考える」の目次で、下図の流れになるとご紹介しました。そのなかでも、一番肝となるのが「WHYストーリー」の言語化です。

言語化の流れ - WHY BRANDING

あなたが「なぜビジネスをやりたいのか…?」という、事の発端となったストーリーになります。きっかけとなる出来事、ネガティブな過去からどうやってポジティブな現在になれたのか、どんな苦労があったのか、変化した自分に対して周囲からどんな評価があったのか、などなど。まずは、このWHYストーリーを言語化していくことから始めてみてください。

なぜWHYストーリーから言語化するのが良いのか…?についてですが、それは「あなた”らしさ”」に関する情報量が一番多いからです。あなたの哲学や情熱、生き方、美意識などの価値観は、過去の経験(ストーリー)から形成されています。もちろん生まれ持った資質もありますが、その資質に気づくためには経験が必要です。経験を伴ったストーリーがあって初めて言語化できるものなので、このパートは個人的に一番重要だと捉えています。そのため、まずはあなたの商品・サービスが生まれた開発秘話について、過去の自分を振り返りながら言語化するところから取り組んでみてくださいね。

STEP2:ミッション(存在意義)を言語化する

次に、WHYストーリーからミッション(存在意義)を言語化していきます。ミッションとは、あなたのビジネスが人や社会のためにどのように貢献するのか、について言語化したものです。

WHYストーリーとは - WHY BRANDING

作成するにあたって、特にルールはありません。ですが、最初から企業が定めるミッションや経営理念を参考にしてしまうと、抽象度が高過ぎてわかりづらい文章になりがちなので注意が必要です。というのも、企業は多くの従業員を抱え、事業の幅も広く、ビジネスのカテゴリーが多岐にわたるので、そこそこ抽象度を高く設定しておかないと、すぐに辻褄が合わなくなるからだと推測できます。一方で、ひとり起業家の場合は、1つのビジネスについて深掘りしていくケースがほとんどだと思うので、もっと具体的でわかりやすく言語化していいかなと考えています。

ちなみに、多くの方が「人や社会に貢献なんて言われてもねぇ…。」と感じていますよね。その気持ち、めちゃくちゃわかります。この解決方法としては、あなたが「利己的」に感じている願望を「利他的」に変換してみるのがおすすめです。そして、その変換した内容がどうやったら社会貢献につながるのか…?という流れで考えてみるといいでしょう。例えば、脱サラしてひとり起業したい!という利己的な願望があるなら、あなたが脱サラしてひとり起業するまでサポートします!みたいな感じで、利他的な内容に変換するという流れです。ですが、このままだと単調でありきたりな言葉なので、ぜひ「あなた”らしさ”」が溢れる洗練された言葉を探してみてくださいね。

ミッションの見つけ方についてもっと具体的な方法をご紹介すると、あなたの利己的な願望に、「なぜ…?」「そもそも…?」「つまり…?」を3回〜5回ほど問いかけていくやり方があります。トヨタの「なぜなぜ分析」の考え方ですね。詳しくはこちらを参照ください。なぜを問い続けると、物事の本質に繋がっていくので、なぜ自分がこんなにビジネスをやろうとしているのかが見えてきます。ちなみに、やってみるとわかるのですが、言語化という作業はなかなかに難しいです…。自分のことは、自分自身でもわからないものなんだ…。ということを痛感すると思います。ですが、これからWEBを主戦場にしていくのであれば、必ず言語化する能力が必要になってきます。その練習だと思ってトライしてみてくださいね。(コピーライティングの本で勉強するのもおすすめです。)

また、ミッションを言語化する材料として、誰に(WHO)何を(WHAT)どのように(HOW)届けるのか、についても考えてみてください。このとき、なるべく短い文章になるように意識しましょう。なぜなら、長い文章は覚えにくく、ビジネスパートナーが理解しづらくなってしまうからです。パッと見て、誰でもわかりやすい文章が好ましいので、ぜひ意識してみてください。

ミッションの言語化だけに限らないのですが、自分だけの言葉を探すこともとても重要です。ありきたりな言葉ではなく、あなたの”らしさ”が感じられる言葉には影響力を伴うからです。このとき、奇をてらった表現は必要ありません。むしろ、シンプルで確信をついたような表現や、ストレートに相手の心に響くものがおすすめです。(簡単に説明してますが、これがめちゃくちゃ難しいです…。)

ちなみに、言葉をどれくらいの抽象度に設定したらよいのか…?についてですが、単純明快でわかりやすいけど、見方によってはいくつか解釈できるよね…。くらいがちょうど良いと感じています。完成した文章は1日〜2日ほど期間をあけて、心が冷静なときにもう一度チェックしてみてください。このとき違和感があれば、もう一度再考してみるか、テンションが違う日にチェックするなどして、違和感が無くなるまで何度も解釈し続けてみるといいでしょう。ドンピシャの表現が見つかったときは、体温が上がる感覚があります。その感覚にたどり着いたとき、素敵なミッションが言語化できていると思うのでぜひ挑戦してみてください。

なお、ここではあえて具体例は記載しないでおきます。というのも、具体例を挙げてしまうと、どうしてもその事例に引っ張られてしまい「あなた”らしさ”」が薄れてしまうからです。さらに言うと、そもそもルールも正解も無いですし、自分の言葉で言語化することが一番重要なので、まずは思いついた通りに言葉にしてみることをおすすめします。

最後に、初めて言語化できたミッションは、なんかありきたりで、違和感があり、偽善者っぽく感じるかと思います。ですが、ミッションはあなたの成長に合わせて、一緒に育っていくものです。経験が自信になり、いずれ確信へと変わります。先ほどご紹介したブランドの樹は、ミッション(土壌)が豊かになることで、ファンに愛される大樹へと育っていくものです。最初はブサイクで可愛くないと感じるかもしれませんが、いつも行動を共にすることで少しずつ愛着が湧いていくものです。育成ゲームをする感覚で、あなただけのミッションになるまで磨き続けてくださいね。

STEP3:ブランドプロミスを言語化する

ブランドプロミスは、あなたがお客様に約束する未来のことです。あなたの商品・サービスが、お客様の人生をどのように豊かにするのか、について言語化してみてください。

ちなみに、先ほどミッションを言語化したときに、文章が長くなってしまった方がいると思います。そのときの文章に違和感がなければ、そのままブランドプロミスとして定めてもいいかもしれません。ミッションの補足説明をしたものが、ブランドプロミスになるイメージで作成してみてください。

ブランドについて解説されたビジネス書では、ブランドとはお客様との「約束事」としてよく紹介されています。約束とは、お客様がそのブランドに持つイメージであり、期待のことです。僕はApple製品のファンですが、それはAppleが展開する商品なら、僕の期待を裏切らないはずだという信頼があるからです。他にも、福岡にAMAM DACOTANという人気のパン屋さんがあるのですが、初めて行った日から僕はこのパン屋さんの大ファンになりました。他の系列店もあるのですが、AMAM DACOTANの系列ならきっと美味しいはずだ…!という期待があり、実際にその期待を裏切られたことはありません。(最近は東京にも進出しているみたいですよ。)あなたが好きなブランドも、僕と同じような期待を抱いているのではないでしょうか。

このように、お客様が持つイメージ(期待)をコントロールすること。つまり見え方のコントロールをしながら、その期待を裏切らないようにすることで、ファンに愛されるブランドになっていきます。それを踏まえながら、あなたが約束できること(ブランドプロミス)をぜひ言語化してみてくださいね。

STEP4:コンセプトを言語化する

ミッション、ブランドプロミスが言語化できたら、次はコンセプトの言語化です。コンセプトとは簡単に言うと、様々なクリエティブ(アウトプット)に「一貫性」を出すための判断基準になる言葉です。

少し想像してみてください。あなたが結婚式の二次会の幹事に抜擢されたとします。そこで、次の2つのコンセプトを考えてみました。コンセプトAは「新郎新婦に最高の思い出を残したい」、コンセプトBは「参加してくれた男女に素敵な出会いの場を作りたい」です。コンセプトAの二次会では、友人が新郎新婦に内緒で作成した仲間たちとの思い出溢れるムービーが流れてきそうですよね。一方でコンセプトBでは、男女の出会いのきっかけになるように、参加者同士が協力して行うゲームが盛り上がりそうです。このように、コンセプトがあることで、同じ結婚式の二次会でも全く異なったものになります。

コンセプトの重要性は、世の中にMP3プレーヤーが登場したときの状況も参考になります。元祖MP3プレーヤーといえば、iPodが最初に思い浮かぶ方が多いと思います。ですがiPodが登場した当時、実はすでに同等の機能をもった製品が他社から発売されていた、ということをご存知でしょうか。iPodは3年遅れで発売された後出しのMP3プレーヤーなのに、誰もが記憶に残る大ヒットを記録したのです。iPodが市場で一人勝ちできた理由は様々な憶測がありますが、一番大きな理由はコンセプトだとされています。他社が「5GBのMP3プレーヤー」と謳っているなかで、iPodは「1000曲をポケットに」というコンセプトを掲げて製品を開発しました。その結果、開発者もそのクールなコンセプトに同調して、他社製品と比較しても圧倒的に使い勝手の良いMP3プレーヤーが誕生したのです。

このように、コンセプトを言語化するという行為は、そのプロジェクトの方向性を決め、最終的な完成度にも大きなギャップを生み出します。つまり優秀なコンセプトとは、ビジネスパートナーの心を動かし、クリエイティブの質を高め、そうして完成された世界観は多くのファンを魅了するのです。また繰り返しになりますが、コンセプトメイキングにおいても、人や社会にどういったインパクトを与えるのか、というミッションについてもしっかりと意識しましょう。ミッションの重要性については、数々のコンセプト開発を手掛け、世界的にも認められたクリエイティブ・ディレクターである細田高広さんの著書にて、根拠となるデータと一緒に紹介されていました。

Havasグループによる調査(Meaningful Brand Report 2021)によれば、現代の生活者は世界中に存在するブランドのうち75%を「いますぐ消えても困らない」と答えています。衝撃的な数字ですよね。
では生活者は、どのようなブランドに残って欲しいと考えているのでしょうか。同調査によれば、73%の生活者が企業には地球社会をより良い場所にする行動を期待していると答えたそうです。社会に対して好影響を与える企業こそが、残るべき良い企業だと言うのです。自社に都合のいいだけのコンセプトでは時代の変化に取り残されるかもしれません。ブランドは、利己的な問いを、利他的な問いに置き換える必要があると言えるでしょう。

引用:コンセプトの教科書 あたらしい価値のつくりかた

とはいえ、ひとり起業家の場合は、ミッションやブランドプロミス自体がすでにコンセプトになっていると解釈できるケースもあります。もしそのように感じる方は、このSTEPを飛ばしてもいいでしょう。ただし、コンセプトはあらゆるクリエティブ(アウトプット)の方向性を決める上で、重要な判断基準になるものです。そのため、ビジネスを進めていくなかで、自分なりに言語化できるように、ぜひチャレンジし続けてみてくださいね。

STEP5:感動体験を積み重ねる

最後のSTEPは、言語化したミッションに忠実な経営で、そしてブランドプロミスを守ながら、時間をかけてコツコツとお客様の感動体験を積み重ねることです。先ほどもお伝えしましたが、ここでいう感動とは、「心を動かし、応援される存在になる」ことです。

元スターバックスのCEOである岩田松雄さんは、「感動の数」と「感動の質(深さ)」がブランドを作ると解説されていました。ブランドの良し悪しは、その面積の広さで決まるというイメージです。

参考文献:今までの経営書には書いていない 新しい経営の教科書

良いブランドは、お客様が満足してもらえるように「感動の質」を確保しながら、適切なスピードで「感動の数」を増やしていきます。そうすることで、「質×数=ブランドの成熟度」の面積が広くなっていくという理屈です。一方で、短期的な利益追求型の思考になってしまうと、お客様の満足度を維持できず、ブランドの質も低下してしまいます。感動の質と数は、同時に増やすことで高い効果を発揮できるのです。

ここで、僕の感動体験の事例を一つご紹介します。雪が舞う12月の極寒の日に、僕が友人たちと居酒屋にいったときの話です。お店のスタッフさんの対応は、気さくで気も利いており、僕と友人は楽しい時間を過ごさせてもらいました。そして、お会計を終わらせてお店を出るときに、スタッフさんが一人一つずつホッカイロを渡してくれました。帰り道にホッカイロを渡されたのは初めてだったので、それだけでも嬉しかったのですが、さらにそのホッカイロには、即興で描かれた手書きのニコちゃんマークと「ありがとうございました」というメッセージ付きだったのです。予め業務の一環として準備されていたのであれば、何も感じなかったのかもしれません。ですが、わざわざ一人ずつ手書きで用意してくれたことに、僕と友人たち全員が、なんだかとてもホッコリした気持ちにさせてもらったのです。そのお店のホスピタリティに感動した僕は、その後も他の友人たちを引き連れて、何度かそのお店をリピートさせてもらっています。リピートの理由は食事ではありません。正直いうと、食事の記憶はほとんど無く、スタッフさんの対応がすべて良かったという記憶しか残っていません(笑)にも関わらず、僕はリピーターになったのです。このような経験は、あなたも一度はあるのではないでしょうか。

いくら商品の質が高くても、お店のスタッフさんの対応が悪いと感じたら、二度とそのお店には行きたくないですよね。つまり、僕たちが買い物をするときは、商品だけでなく体験も一緒に購入しているということです。感動体験とは、商品体験と購入体験も含めたすべてを指します。必要なモノ・サービスが完全に満たされてしまった現代において、優れた商品・サービスとは、「売る前」と「売った後」も含めたすべてが素晴らしいのです。コンサルやコーチング、ティーチングが主軸のひとり起業家も、LPや広告、ステップメールなどはもちろんのこと、お客様とのZOOM対応も含めたすべてのタッチポイントで、「感動の質」を意識していきたいですね。

ちなみに、意図せずお客様に不快な思いをさせてしまったときは、変に誤魔化さずに、迅速に、真摯に対応して、全力で再発を防ぐことが重要です。ブランドの価値を守れるだけでなく、逆に好印象に受け取っていただけることにも繋がります。僕はこういった部分も含めて、感動体験だと捉えています。もしそういった場面になってしまったら、ブランドを試されている感覚で、迅速&真摯に解決してみてください。

以上が、ひとり起業家のMy Brandを構築する5STEPになります。今回はあえて、なるべく具体的なHOW TOを避けて、抽象度を高く設定してご紹介させてもらいました。ビジネスに正解は無いので、お伝えした内容にとらわれず、あなた”らしさ”溢れる自由な発想で、素敵なブランド構築をしてもらえたら幸いです。

上質なブランドを構築できる人の「3つの条件」

ここまで、「ブランディングとは」から始まり「ブランドの構築方法」までお伝えしていきました。次は、上質なブランドを構築できる人の「3つの条件」についてご紹介していきます。

ブランディングの情報を探る中で、そもそも素敵なブランドを構築できる人には、大前提としてこれ持ってる人だよね…。という気づきがありました。それが、これからご紹介する3つの条件です。あなたの周りのブランド人とも照らし合わせながら、参考にしてもらえたら幸いです。それでは一緒に見ていきましょう。

語られる

1つ目の条件は、語られる人です。語られる人とは、どういう状態の人なのか。それは、自分の家族や友人のような大切な人に口コミしたくなるような存在を指します。それは、あなたが尊敬する人や、いつも勉強させてもらっている人、対応が素晴らしくてリピートしているお店の人かもしれません。このように、ポジティブな意味で語られる人は、他の人を魅了する何かを持っている方々です。そして、語られる人が作り出すクリエイティブ(アウトプット)には、人を感動させるような、魅力的で質の高いものが多いという特徴があります。

僕のコンサルタント仲間にも素敵な発信者はたくさんいるのですが、もし推薦状を書いて欲しいと言われたら、1000文字くらい一瞬で書ける自信があります。実際にはあまり頼まれる機会は無いのですが、本人たちが知らないところでご紹介させてもらうことは何度もありました。どんな性格で、どんな生徒さんたちが多くて、どんなサービスで、どんな実績者がいて…。スラスラと語れるんですよね。あなたの周りにも、ついつい口コミしたくなるような人はいますよね。

実は口コミという行為は、紹介者ごと巻き込む危険性があるため、見方によってはリスキーな行為になります。もしあなたが友人に紹介したサービスが最悪だったら、そんな最悪なものを紹介する人とはこれ以上付きたいたくないと思われるかもしれません。つまり、口コミをすることで、友人からあなたに対する評価まで下がってしまう可能性もあるということです。もしこれが自分の大切な人への口コミだったら、なおさら失敗してほしくないので、紹介する側にとっては結構リスクを負う行為だったりするものです。だからこそ紹介する側は、それだけ相手のことを吟味します。信頼に足る人でなければ、安易に紹介することはできませんよね。つまり、紹介される人(語られる人)とは、それだけ信頼がある存在でもあるので、素敵なブランドを構築している可能性が高いという理屈です。

ネット上に溢れるブランディングのテクニックを駆使したとしても、人として魅力がなければ上質なブランドは構築できません。ちなみに、魅力的な人は、自分で自分のことを魅力的ではないと思い込んでいるような、めちゃくちゃ謙虚な方が多いという事実も、ぜひメモしておいてください。

確信がある

2つ目の条件は、自分のビジネスに確信をもっている人です。ビジネスをやる以上、利益を出すのは当たり前の話ですが、それ以前に、このサービス内容ならきっとお客様は喜んでくれるはずだ…!という自信で溢れている方は、お値段以上にその商品・サービスも魅力的なものが多いです。

僕自身も、過去に販売してきたコンサル企画は、提供する内容に自信があるときほどよく売れました。サポートさせて頂いたひとり起業家さんの商品も、本人たちに自信がある状態で販売したときほどよく売れましたし、僕が代行でセールスライティングした商材も、僕とクライアントさんが自信満々なときほどよく売れました。よく売れる商品・サービスには、なにか確信めいたものを感じるときがあります。一方で、どこか自信が無くなっているときは、いくらサービス内容を良く見せようとしても、イマイチ売上が伸びなかったという経験が何度もあります。この現象は僕だけの話ではなく、他のコンサルタント仲間やWEBマーケッターの先輩に聞いても、全く同じ話をしていました。商品に自信が持てないなら、その商品は売らないほうが良いとよく言われたものです。

自信の無さは、気づかないうちにクリエイティブ(アウトプット)に反映されてしまいます。LPやメルマガの文章、個人面談のときの表情、SNSの投稿などなど、なんとなくネガティブな雰囲気が漂ってしまうのです。この空気感は、お客様へダイレクトに伝わってしまうので、まずは自分の商品・サービスに自信を持つことはとても重要な工程になります。

とはいえ、自信はどうやって身につけられるのか。と思いますよね。実はこれを解決する方法は、「売る」しか無いのです…。え…?売れなくて困っているのに、それを解決する方法も「売ること」なのですか…?と思いますよね。その通りです(笑)自信が無くて売れないなら、売って自信を付けるしかありません。最終的に売りたい講座が、50万や100万などのコンサル企画だったとしても、もし自信をもって売れないのであれば、無料でも1万円でもいいから、今現在の自分が自信をもって売れる価格で、とりあえず売って売って、売りまくる。そうしていくことで、次第にお客様からのポジティブなフィードバックが集まっていき、それが自信になっていくからです。さらに、お客様が大きな成果を出してくれたら、それは「実績」としてあなたの社会的な証明になります。実績が増えると、あなたの自信はもっと強くなっていきます。自信が大きくなってくると、それが次第に「確信」へと繋がっていくのです。この状態になる頃には、あなたのブランドは大きな樹へと成長していることでしょう。

魅力的な発信者は、謙虚さのなかに強い自信を感じることが多いです。謙虚なんですけど、発言だったり態度だったり、惹きつける何かがあるイメージです。それはおそらく、膨大なアウトプットと経験を積み重ねてきたことで得られた、「確信」が表面化したものではないかと思います。あなたが尊敬する人も、僕と同じように感じたことはないでしょうか。以上が、上質なブランドを構築する人の2つ目の条件です。

夢中である

3つ目の条件は、自分のビジネスに夢中になっている人です。仕事も遊びも境目がない人っていますよね。仕事のように遊び、遊びのように仕事をする、みたいな感じの人のことです。ブランド構築の大前提として、どんなビジネスをやるのか、という最初の選択はかなり重要だと感じています。なぜなら、「努力」は「夢中」に勝てないからです。「稼げるからやる」という人は、「努力」や「頑張り」が必要になります。一方で、「楽しいからやる」「好奇心が尽きない」「誰かのためにやる」という人は、時間を忘れて「夢中」になれます。こういう人は、努力している感覚も、頑張っている感覚もあまり感じていません。どれだけビジネスに時間を費やしても、ツラいという感覚がほとんど無いのです。さて、どちらが上質なブランドを構築できるでしょうか。言うまでもなく、後者ですよね。

これについて解説するために、僕のエピソードをご紹介します。成功者のアドバイスとして「コツコツ継続すれば、誰でも成功できる」という格言がありますよね。何かしらビジネスコミュニティに属していると、必ずメンターから言われるのが、信じてコツコツ続けましょう、こんなひどい状態だった私ですら成功できたのだから、誰だって成功できるはずだ…!という話。あなたも一度はアドバイスされたことがあるのではないでしょうか。実際に僕も、ブログ副業をスタートして、コツコツ毎日記事更新を継続できたからこそ、サラリーマン時代の収入を超えることができました。なので、自分のコンサル生にも呪文のように唱え続けてきました。コツコツ続けることが成功に繋がるという格言は、僕の経験からも、コンサル生の実績からも、間違いなく真実だと感じています。

ですが、自分がコンサルタント(教える側)になってみて、僕はこの格言にずっと違和感を感じていました。というのも、継続すれば成功できるというのは、誰でも頭の中では理解できているのに、実際にコツコツ継続できる人がめちゃくちゃ少なかったからです。何を隠そう、僕自身もそういう状態に何度も陥っています。パレートの法則とか2-6-2の法則で示されるように、実際に継続できて大きな成果を出せるのは、そのコミュニティの上位20%くらいというのがリアルなところでしょう。

なぜそうなってしまうのか。色々な要因が考えられますが、ブランディングに関する情報を探っている中で、「コツコツ継続できる人」はある前提条件をクリアした場合の話だと感じるようになりました。その前提条件とは、そのビジネスに「夢中」になっているかどうかです。今のビジネスを始めたきっかけが、「稼げるから」という理由でスタートした方は多いと思います。僕も最初はそうでした。ですがこの理由だけだと、そのビジネスへの好奇心が薄れてしまったときに、モチベーションが急降下してしまうケースが非常に多いという特徴もあるのです。

目先の利益に目がくらんでしまい、興味は無いけど今の自分なら簡単に稼げそうだ…!という視点でビジネスを選んでしまうと、短期的に稼げたとしても、長続きはできないものです。なぜなら、結局長く続けるとなると、「稼げるから」というモチベーションだけでは、人間が本来もつ原始的な欲求をすべて満たせないからです。先ほどご紹介した図をもう一度貼っておきますね。

参考文献:忙しい社長のための「休む」技術

稼げたとしても、人から価値を認めてもらえないビジネスなら、「安全」の欲求が満たせなくなります。ビジネスを通して、自分が成長している感覚を見失ったり、自分らしさを感じられなければ、「自己表現」の欲求が満たせなくなります。社会にどのように貢献できているのかわからなくなれば、「存在理由」の欲求も満たせなくなります。嫌な作業が続いてメンタル的にツラい状況が続いてしまうと、「持続可能」の欲求も満たせなくなります。つまり、「稼げるから」という理由からスタートした場合、「生存」以外の欲求を満たせない可能性が高くなってしまうのです。

さらにビジネスでは、絶え間なく動きつづける市場に合わせて、柔軟に戦い方を変える必要があります。ひとり起業家も経営者である以上、常に頭をフル回転して対策しないと生き残れないのです。ただでさえ難しいのに、さらに難易度を高めているのが、ビジネスの世界には正解がないということ。そのため、答えを求めてネットやSNSで出回るテンプレートやノウハウなどの表面的なテクニックだけを漁り続けても、自分の頭で考えることを辞めてしまえばすぐに頭打ちになってしまいます。

つまり何が言いたいのかというと、たとえ入口がとても簡単そうに見えても、ビジネスは「続けること」がものすごく難しいということです。もしあなたが選択したビジネスが時間を忘れて「夢中」になれるものなら、むしろこの難しい世界に喜びを感じて、まるでゲームを攻略するかのように楽しみながら乗り切れるでしょう。ですが、誰でも簡単に稼げる…!という動機だけでスタートしてしまうと、ビジネス自体を楽しめず、途中で苦しくなり、辞めてしまうのです。もちろん、自分が夢中になれるかどうかなんて、実際にやってみないとわからないものです。そのため、気になることは即行動&即経験することをおすすめします。

このように、ただ稼げるからという理由で始めたビジネスが、もしあなたの好奇心を刺激しないもので、誰かの役に立っているという実感もなければ、そのビジネスをやること自体が苦痛でしかありません。いわゆる、ご飯を食べるためだけのライスワークと言われたりもしますよね。こうなってしまうと、仮に稼げるとわかっていても、途中で心が折れて辞めてしまいます。とある経営者の方に、「商い(あきない)とは、飽きないことだよ」というビジネスの心得を教えてもらったことがあります。当時は何も感じませんでしたが、今頃になってひしひしと身にしみています。

これからビジネスをスタートする方も、すでに何かしらスタートしている方も、一度そのビジネスに対して「どこに情熱を感じているのか」や「どこに自分の好奇心の矛先が向いているのか」について考えてみるといいでしょう。万が一、努力しているとか、頑張っているという感覚が強いという方、「やりたい」よりも「やらなきゃ」の気持ちが強いという方、気がつけばモチベーションを高める方法についてググっているという方は、もしかしたらそのビジネスは長く続かない可能性があります。(モチベーションの保ち方についてはmotoさんの回答が参考になるので、ぜひこちらのR25のコラムも参照してみてください。)

もう一度言いますが、「努力」は「夢中」に勝てません。自分のビジネスが「楽しいからやる」「好奇心が尽きない」「誰かのためにやる」になっているか、という基準でぜひ考えてみてください。ここで1つ、具体的なやり方をご紹介します。もし神様があなたの預金口座に10億円を振り込んでくれたら、それでも今のビジネスを続けるモチベーションがあるか…?という質問に対して少し時間をとって考えてみてください。自分がただお金稼ぎたいという理由だけでビジネスをしているのか、それとも人生を楽しむためのツールとしてビジネスをしているのかが見えてきますので…!

ちなみに僕の場合は、今のビジネスを通じて出会う人たちが、霧が晴れたように笑顔になっていく姿を見ると、こんな自分でも誰かに貢献できているんだ…!と実感できるので、それがモチベーションの1つになっています。もちろん、お金をいっぱい稼いで、今まで自分が叶えられなかった好奇心をどんどん開放できることも楽しいと感じています。他にも、僕は興味をもった分野に対してはとことん調べてしまうというオタク気質も兼ね備えているので、なかなか正解が見つからないブランディングやマーケティングの分野は、いつも僕の好奇心(オタク心)を刺激してくれていると感じています。あなたも、自分がどんなことに夢中になれるのか、ぜひ時間を作って考えてみてくださいね。

以上が、上質なブランドを構築できる人の3つ目の条件、「夢中である」になります。ぜひ参考にしてみてください。

ブランディングに求められるスキル

前の目次では、上質なブランドを構築できる人の3つの条件についてご紹介していきました。それを踏まえて、ここではブランディングに求められるスキルについて考えていきましょう。あくまで僕が個人的に感じていることなので、あなたが思うブランド人にも当てはめながら、ぜひ参考にしてみてください。

常にWHYを考えられる

上質なブランドを持つ人は、ブレない軸を持っている人だと個人的に感じています。周りに流されず、自分の意見を持ち、それを信じて意思決定しているイメージです。ブレない人には行動に一貫性があって、トレンドに媚びない姿勢がかっこいいですよね。こういう人に「ブレない秘訣はなんですか?」とか質問してみると、「いやいや自分なんて、いつもブレブレですよ〜。」みたいな、的を得ない返事がいつも返ってくるので、ずっとモヤモヤしていた時期がありました…。

ブレない人の特徴について考察するなかで、個人的に行き着いた答えは「常にWHYを考えられる人」というものです。一般的に「常識」とされることでも、違和感があれば自分なりの「なぜ…?」を追い求めているイメージです。周囲の人は、「そんなこと気にしてどうなるの?」という目で見ていますが、ブレない軸を持つ人は、自分を納得させる理由付けができるまで思考を辞めません。ゴールデン・サークル理論的にいうと、「WHYから始めよ」に忠実な人なのかもしれません。ブレない軸を持っていると思われている人には、こういう共通点があると感じているのは僕だけでしょうか。

ブランディングは、「WHY」を問い続けて本質に近づこうとする作業がとても多いです。そのため、常にWHYを考えられる人は、自分なりの言葉で言語化することに慣れている方が多いので、ブランディングに必要なスキルを備えていると考えられます。

自分の言葉で言語化できる

上記の内容に続けて、自分の言葉で言語化できることも、やはりブランディングに必要なスキルだと捉えています。ここで、あなたが過去に好きになったことがある人を思い浮かべてみてください。なぜ好きになったのでしょうか。どこが好きなのでしょうか。この質問に「WHY」を5回問い続けてみるとわかるのですが、2〜3回目くらいになると、「自分でもよくわからない…」「なんとなく好きだなけ…」のように、言語化できなくなってきます。

ここで言語化できる人は、「例えるならば◯◯みたいな感じかなぁ…」のように、なんとか自分の言葉で表現しようと試みたり、確かにそうだよねと周囲を納得させるような「言い得て妙な表現」を模索しようとします。コピーライティングのスキルに近いのですが、これはまさにブランディングに必要なスキルだと感じています。

魅力的な人は、例え話のスキルが高い印象があります。どこかで聞いたことがあるような、ありきたりな例え話ではなくて、自分の経験を元にした話だったり、思わずクスッとしてしまうような話をたくさん持っているイメージです。このように、例え話のなかにその人の”らしさ”が溢れている方は、上質なブランドを構築しているケースが多いので、ブランディングに必要なスキルではないかと考えています。

変化を受け入れられる

上質なブランドを持つ人は、変化を柔軟に受け入れられる人が多い印象があります。ブレない軸と逆説的に感じるかもしれませんが、ビジョナリー・カンパニーの理論でいくと、「安定か変化のどちらかだ(ORの抑圧)」ではなく、「基本理念に忠実でありながら、環境に適応しようとする(ANDの才能)」ことに”こだわり”を持てる人とも言えます。

ポルシェの911、ニューバランスの900番シリーズなどのマスターピース(傑作、名作)には、ブランドとしてのDNAを継承しながらも、その時代の人に選ばれるために、マイナーチェンジを繰り返していますよね。戦争や核の脅威を映画にしたゴジラシリーズもそうです。ビジネス用語ではIP(知的財産)と言われますが、原作(原点)をリスペクトしながらも、最新技術(最新ノウハウ)をうまく化学反応させて魅力的に表現できる人が、ブランド人になれると感じています。

ドイツの哲学者であるフリードリヒ・ニーチェの言葉で「脱皮できない蛇は滅びる」というものがあります。考えを取り替えないということは、成長を辞めたのと同じである。という意味合いのようです。そのため、僕たちもビジネスをやりながら、常に自分の価値観やミッションに対して、解釈をし続けることがとても大切になります。

ビジネスを進めていると、今の自分の価値観やミッションが、どうしても市場にはマッチしないと感じるときがあります。かつて、本物のコーヒーを追い求めることに情熱を注いでいたハワード・シュルツ氏(元スターバックスCEO)は、信念に反すると猛反対していたノンファットミルクや、甘いスイーツのようなフラペチーノを最終的に受け入れました。ご存知の通り、今のスタバのメニューにはノンファットミルクが選択できますし、フラペチーノに至っては超主力商品になっています。当時のことについてハワード・シュルツ氏も、「私は間違いを犯すところだった」と自身の著書で綴っていました。このように、常に自分の価値観やミッションの解釈をし続けて、さらにアップデートしていくことで、ブランドは強くなっていくのです。

ちなみに、解釈のアップデートをし続けるという姿勢は、生活必需品ではないのに100年以上も生き残っているラグジュアリーメゾンの考え方がとても参考になります。気になる方は、カルティエジャパンのCEO宮地さんのインタビューコラムをぜひチェックしてみてください。(170年以上の歴史を持つカルティエのメゾン経営について

こだわりを持てる

上質なブランドを持つ人は、並々ならぬ”こだわり”を貫きます。おっとりした性格に見えても、特定の分野になると異常な”こだわり”を持っている人っていますよね。一般的な感覚であれば全く気にならないことでも、その人にとっては「絶対に許容できないこと」を持つ方は、素敵なブランドを持っていたりするものです。

僕のコンサル生にもこんな方がいました。その方は奥さんと一緒にお料理のYouTubeチャンネルを運営しており、収益が伸び悩んでいるなかで僕のコンサルにご参加いただきました。コンサル期間中になんとか結果を出してもらいたかった僕は、思い付く限りのアイデアを提案させてもらいました。ですがそのコンサル生は、ユーザー目線で考えるとそのアイデアは使えないということで、僕のアドバイスはすべて却下されてしまったのです(笑)正直、なぜ提案したアイデアがユーザーに相応しくないのか、そのときは理解できませんでした。ですがそのコンサル生にしかわからない、何か強い”こだわり”があったのです。

僕のアイデアはすべて却下されてしまいましたが、結果的にそれはいい方向へ進みました。僕の使えないアドバイスをきっかけに、最終的にそのYouTubeチャンネルが目指したい方向性が明確になったのです。そのコンサル生は、僕とは違ったアプローチでどんどん試行錯誤し始めました。そのチャンネルが守るべきブランドプロミス(ユーザーの期待)と、ビジネスとしての収益化を同時に実現するためにはどうしたらよいか…?という縛りのなかで、アイデアを模索しているイメージです。

その結果、再生数が劇的に伸びて、月商100万超えを達成。現在そのYouTubeチャンネルは、登録者数120万人を超える人気チャンネルになっています。強いブランドを持つ人には、その人にしか感じ取れない強い”こだわり”があるということを思い知らされました。(ちなみにこの方は、今では飲み仲間になっています。当時僕のアドバイスを全部断りましたよね。と聞いてみたら、全く覚えていませんでした。笑)

ブランド人がもつ強い”こだわり”は、ただの頑固ということではありません。むしろ素直に他人からのフィードバックを聞き入れて、一度自分のなかで咀嚼して、自分なりに解釈して、自分の言葉に置き換えて、最終的にエンドユーザーにとって本当に有益かどうか吟味するような人たちなので、出会ったときはいつも柔軟で謙虚な印象を受けます。

頑固な人になってしまうと、意固地になって他人の意見なんてすべて弾き飛ばしてしまうので、経営者としては致命的な性格です。一方で柔軟な人は、あらゆる可能性を模索するので、他人の意見はむしろ積極的に取り入れられる性格です。自分の信念は絶対に貫くけど、成長するためならどんな意見も取り入れる。みたいなスタンスです。そのため新しいアイデアもどんどん生み出していきますし、僕が尊敬する経営者たちもこの手の性格の方が多い気がしています。このことからも、強い”こだわり”を持てる人=上質なブランドを構築できる人。であると考えています。

賛否両論を恐れない

上質なブランドを持つ人は、賛否両論を恐れない人です。恐れないというより、「やっちゃえ…!」的なノリで、矢沢永吉さんみたいに信念と行動力がある人とも言えます。好奇心が旺盛な人は、コンフォートゾーンからもスイスイ抜けられる人なので、その姿勢は見習いたいところです。

賛否両論を恐れないと言えば、NIKEがブランドとしての姿勢を貫いた象徴的な話があるのでご紹介します。NIKEが元NFLサンフランシスコ・49ersのクオーターバックだったコリン・キャパニック選手を広告塔に起用したことで、アメリカ国内が大きく揺れる出来事がありました。

2016年にキャパニック選手は、当時アメリカで問題となっていた黒人射殺事件や人種差別に対して抗議をするために、アメリカンフットボールの試合前の国歌斉唱のときに、起立をせずに膝をついた姿勢で抗議行動を取りました。トランプ元大統領は「国家を侮辱した」とTwitterで怒りを表明し、それにNFLも呼応するように国歌斉唱のときは起立をするようルールを変更、キャパニック選手はチームと契約を結べないまま事実上の解雇となったのです。

一連の騒動が国内で賛否両論となっている中、NIKEはタグラインである「Just Do It.」の30周年記念キャンペーンとして、自社ビルの屋上にある巨大なビルボードにキャパニック選手の顔を全面に写し出したモノクロ広告を掲載。そこには、「Believe in something. Even if it means sacrificing everything. Just Do It.(すべてを犠牲にしてでも、信念を貫こう)」と掲載され、同時にNIKEはYouTubeに「dream crazy(バカな夢を見よう)」という2分の動画を投稿。これに対してさらに激怒するトランプ元大統領。過激化した一部の人がSNSにNIKEのスニーカーを燃やす動画を拡散させるなど、世間を騒がせる大きな騒動になったのです。

ですがこのキャンペーンを通して、NIKEの行動を支持する熱狂的なファンが急増。オンラインでは驚異的な売上を記録して、下落した株価も反転上昇して最高値を更新。NIKEは自社のパーパスを通して「平和と平等」という一貫したメッセージを発信し続けているので、その信念を貫く姿勢にファンが同調したという見方もできますよね。NIKEはエアジョーダン1の商談時に、ルール違反のカラーリングをする代わりに毎試合5000ドルの罰金を払うという約束をしたりと、何かと賛否両論を巻き起こす行動を取っています。(真相は諸説あるそうですが…。詳しくは映画『AIR/エア』を観てください)ですがその一方で、常にブレない信念を感じさせられるので、多くのファンに愛されるのも納得です。

もちろん、わざわざNIKEみたいに波風を立てる必要はありません。ただ、ひとり起業する壁の一つに、怖くて行動できないというネガティブなマインドが常に付きまといますよね。これって、顔も名前も知らないネットユーザーに否定されたらどうしよう、みたいな恐怖心だと思うんです。その気持ち、めちゃくちゃわかります。僕も偉そうに「ブランディングとは」というこのnoteを執筆しているのですが、心の中では涙目で震えていますから…。(((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル)

でも、一度キリの人生を100%楽しむためには、いつかこの壁を乗り越えないといけません。「No Risk, No Story」リスク無くして、人生に豊かなストーリーは紡げません。とはいえ、リスクといっても、よくよく考えてみると取り返しのつくものばかりです。適切なリスクは、美味しい料理をつくるために必要不可欠なスパイスとも言えます。スパイスは入れすぎると辛いです。でも、入れないと美味しくならないですよね。賛否両論を人生のスパイスにしながら、素敵なブランドを構築していきましょう…!

常識を疑い、再定義できる

上質なブランドを構築できる人は、業界の常識を疑い、再定義できます。なんで今まで誰も指摘しなかったんだろう…。という違和感に気づき、問題提起して、新しいカテゴリーの開拓者になれる人たちです。お客様でも気づいていないインサイト(潜在ニーズ)に、誰よりも早くアプローチしできる人という見方もできます。

新しいカテゴリーとは、世界的なマーケティングの戦略化であるアル・ライズ氏とローラ・ライズ氏の共著「ブランディング22の法則」の第8章「カテゴリーの法則」を参考にしています。この法則について簡単に説明すると、既存の市場でブランドを拡大するよりも、まだ存在しない、もしくはあまり認知されていない新しいカテゴリーを普及させることが、最も効果的なブランディングであるという内容です。例えばスターバックスは、質の劣る淡白な味わいのロバスタ種のコーヒーが主流だった当時のアメリカに、良質なアラビカ種を深煎りした香り豊かな「スペシャルティコーヒー」という新しいカテゴリーを積極的に普及させました。そして、この新しいカテゴリーの一番手になることで、独自のポジショニングを確立したとされています。

今では香りが豊かなコーヒーは当たり前に存在しますが、当時のアメリカでは質の劣るロバスタ種のコーヒーが常識だったので、香り豊かでこくのあるアラビカ種のコーヒー(スペシャルティコーヒー)の存在は、ほとんど認知されていなかったのです。つまり、今考えると明らかに不味いと感じるロバス多種のコーヒーを、当時のほとんどのアメリカ人はコーヒーは普通こんなものでしょ。という当たり前の感覚で毎日飲んでいたということです。ここにチャンスを感じたハワード・シュルツ氏が、スペシャルティコーヒーを一般レベルにまで普及させて、スターバックスを大躍進させることになります。つまり、業界の常識を疑い、再定義したということですね。スターバックスは他にも、当時のアメリカではどの企業も避けてきた、健康保険制度やストックオプション制度を正社員だけでなくパートタイマーに導入することも実現しています。

常識を疑えという話は、多くの経営者がその重要性を語っており、表現は違えど様々な分野で語られています。今まで常識だと思っていた思想や価値観が大きく変化することを意味するパラダイムシフト、古い知識を捨てて新しい概念に入れ替えるアンラーニング(学習棄却)、自分の強みを見つけて差別化しましょうというビジネス塾でよく耳にする教えも、結局は同じような意味になるでしょう。

ハーバード・ビジネス・スクールにて教鞭をとっているポーリーン・ブラウン氏の著書「ハーバードの美意識を磨く授業」では、企業は次の3つのカテゴリーに分類できると表現していました。それは、ルールメーカー(ルールを作る側)、ルールテイカー(ルールを受け入れる側)、ルールブレイカー(ルールの破壊者)という3カテゴリーです。

ルールメーカー(ルールを作る側)は、一流ブランドとして独自のポジションを確立して業界をリードしている状態を指します。一方で、他の企業を追いかけることしかできないルールテイカー(ルールを受け入れる側)は、仮に生き残ることができても永遠に二番手のままなので、これでは上質なブランドとは言えません。3つ目のルールブレイカー(ルールの破壊者)は、業界全体を再定義できる企業を指し、一流ブランドであるルールメーカー(ルールを作る側)になり得る存在のことです。例えば、書店の常識を変えたAmazon、自動車の常識を変えたテスラ、掃除機とヘアドライヤーの常識を変えたダイソン、TVショッピングの常識を変えたYouTubeなどが挙げられます。

常識の再定義について、カビキラーやウコンの力、R-1など、数々のロングセラー商品を生み出してきた梅澤伸嘉氏は、著書『「梅澤式」だと、なぜ超ヒット商品がこんなに作れるのか』のなかでは、未充足のニーズという表現をされていました。未充足のニーズとは、満たされていない生活ニーズのことです。誰もが知るカビキラーは、風呂場のタイルの目地のカビをゴシゴシ擦ることなく落としたい…!という主婦の隠れたインサイト(潜在ニーズ)に応えた商品でした。カビを擦らずに落とす商品は、今では当たり前に存在しますよね。ですが当時は、その行為が当たり前ではなかったうえに、誰もその商品を開発したら売れるという発想もなかったのです。カビキラーとは、まさにそういった隠れたニーズを探し当てたパイオニア商品になります。このように、世の中のヒット商品のほとんどは、常識を疑い、再定義されたものです。つまり、上質なブランドを構築できる人は、これを実行できる人であるということですね。

ラ・リーガ(スペインサッカー)で大躍進を続ける久保建英選手は、幼少期に元サッカー選手の中西哲生さんの独特な指導を受けていました。その一つに「重心を上げろ」というものがあります。サッカー経験者ならわかると思いますが、サッカーの基本は「重心を下げろ」です。ですが、中西哲生さんは、重心を下げるという常識に違和感を感じていました。というのも、重心を下げてしまったら、体をスライドさせるために一度体を持ち上げるという1ステップが入ることで、初動が遅くなると感じていたからです。結果的にどっちの考え方がサッカー選手としてうまく機能しているのか、それは久保建英選手のラ・リーガでの活躍ぶりがその答えになるのではないかと思うので、これからしっかり応援していきたいです。とはいえ今現在でも久保選手は、代表クラスのディフェンダー2人に囲まれても、あのキレのあるドリブルは簡単には止められないほどの存在になっていますよね。ちなみにこの中西メソッドは、PIVOTさんのYouTubeチャンネルで詳しく解説されているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

このように「常識を疑い、再定義できる」という能力は、時代とジャンルを超えて、その表現を変えながら多くのブランド人を創出していると感じています。また業界の常識を疑うことは、まだ誰も気づいていない、もしくは誰も問題提起していないお客様のインサイト(潜在ニーズ)を発見する嗅覚とも言えます。WEBマーケティング関連の情報サイトでは簡単な解説が多いので、今回は僕なりに詳しくまとめてみました。あなたのブランド構築の参考になれば幸いです。

ブランディングが目的になってはいけない

言うまでもなく、ブランディングはあくまでも手段の一つです。ひとり起業家のビジネスは、あなたのミッションと自己実現を達成することが目的であって、ブランディングは目的ではありません。ここでは、ブランディングを本気で取り組みたいひとり起業家のために、個人的に忘れてはいけないと感じている心得について触れておきたいと思います。最後の目次になるので、もう少しだけお付き合いください。

利益を出さなければ意味がない

ひとり起業家でも、ビジネスをする以上は充分な利益を出す必要があります。もし充分な利益が出せなければ、ビジネスパートナーを格安で買い叩くことになりますし、大切な家族も守れないからです。なにより、心も身体も苦しい状態が続いてしまうと、自分自身も守れなくなります。最初にブランディングはイメージ資産とお伝えしましたが、単にイメージを良くすることだけが目的にならないようにすることが大切なのです。

ひとり起業家はビジネスの性質上、薄利多売のスタイルでは続けられません。そのため、必然的に30万、50万、100万などの講座型ビジネスが主軸になるケースがほとんどです。それと同時に、お客様からお金を頂くことに罪悪感を感じてしまう方が非常に多い、という問題も常に付きまといます。ですがその心配はありません。今回のnoteで何度もお伝えしているように、あなたがミッションを愚直に追い続けることは、それ自体が社会に貢献していることになるからです。さらに、その儲けた利益をつかってあなたのビジネスを拡大させることで、より社会に還元できるようにもなります。その頃には税金もたくさん納めていることになるので、一般の方よりも遥かに社会に貢献していることにもなりますよね。税金はネガティブなニュースが多いですが、僕たちを育ててくれたのも先人たちの税金のおかげなので、そこへの感謝を忘れるわけにはいけません。だからこそ、次は自分たちが儲けて社会に還元していけばいいじゃないか…。という考え方もできます。つまり、充分な利益を得てビジネスを存続させることは、それ自体が社会に貢献していることになるので、罪悪感なんて感じる必要は無いということです。

ビジネスを存続させるという話でいうと、僕の記憶に強く残っている出来事があったのでシェアさせていただきます。学生時代まじめに勉強をしていなかった僕は、就活時期になってもバイトに明け暮れていました。就職の大氷河期で同級生が100社もエントリーをしているなか、僕が面接を受けたのはたったの6社。その数少ない会社のなかに、有限会社スタート・トゥデイ(現在の株式会社ZOZO)という企業がありました。今では、SNSなどでその発言や行動がよく注目されている前澤友作さんが設立した会社です。一次面接になんとか合格した僕は、二次面接を受けるために福岡から幕張の本社まで行きました。二次面接は就活生5人と、スタート・トゥデイの幹部数名とのグループ面接形式。そして僕のグループの順番のときに、なんと前澤社長が直々に面接官として座っていたのです。(オーラが半端なかったです…!)そのときの質問のなかに、就職したらこの会社をどうしていきたいですか…?というものがありました。当時から前澤社長もスタート・トゥデイも業界の異端児的な存在だったので、何か奇抜なことを言った方が良いような雰囲気が漂っています。的はずれな回答をした僕を筆頭に、他の就活生たちも自分なりの意見を回答。そしてみんなの回答を聞いたあとに前澤社長は、「従業員のために、僕はこの会社をできるだけ存続させたい。」という主旨の話を、学生の僕たちに向けて丁寧に話してくださいました。

異端児的な存在だと思っていた前澤社長から出てきた言葉が、意外にも経営者としてまとも過ぎる話だったので、僕は心のなかではとても驚いていました。(めっちゃ失礼…><)それと同時に、表面的には奇抜に見えても、本質的にはビジネスを存続させることで「大切な人たちを守る」という強い気持ちが大切なんだ…!とも感じていました。面接時のことはあまり覚えていませんが、この記憶だけが今でも強烈に残っています。つまり、大切な人たちを守るために適切な報酬をいただくことは、人間にとって当たり前の行動であるということです。何も戦略なしに自分の時間を無料で提供したり、破格の値段でサービスを提供をすると、最終的には大切な人たちにそのシワ寄せがいくことを忘れないようにしたいですね。(もちろん、面接には見事に落ちました…笑)

ひとり起業家は脳に汗をかく

他には、こういう考え方もできます。労働を「身体に汗をかく労働」と「脳に汗をかく労働」の2つに分ける考え方です。「身体に汗をかく労働」は時給や月給で報酬が決まり、出社や出張などの場所と時間の拘束もあります。与えられた仕事に対して自分の身体を動かすため、難しいビジネスの仕組みや経営のことは考える必要はありません。ジャンルにもよりますが比較的簡単で責任も軽いケースが多いので、サラリーマンや下請け思考の安売りビジネスになりやすい特徴があります。

一方で「脳に汗をかく労働」は自分が提供する価値で報酬が決まるため、時間と場所の制限をあまり受けません。仕組み化することで自分ではあまり身体を動かさない代わりに、難しいビジネスの難題に解決策を模索する必要があるため、常に脳をフル回転させる必要があります。難易度が高く責任が重いケースが多いので、経営者思考の高単価で自由が効くビジネスになりやすい特徴があります。つまり、経営者は物理的に見るとラクをしているように感じますが、実際は労働のやり方が「身体を動かすこと」から「脳を動かすこと」へ変化しただけで、圧倒的に労働していることには変わりないということです。そのため、お金を稼ぐことに対して罪悪感を感じるどころか、むしろ誇らしく感じるべきだと思います。

今何かしらビジネスの準備をしているひとり起業家のあなたは、おそらく「身体に汗をかく労働」からスタートして、徐々に「脳に汗をかく労働」へと移行している段階だと思います。そんなあなたに質問ですが、アルバイトやサラリーマンとして働いていたときと比べて、自分のビジネスを構築している今の方が、圧倒的に脳をフル回転させているのではないでしょうか。街を歩くときも、TVやSNSを見ているときも、ご飯を食べているときも、お風呂に入っているときも、夜に布団に入りながら眠くなるのを待つときも、常にビジネスのことで頭の中が一杯になっていますよね。(僕はひとり起業してからというもの、何度も夢のなかで仕事しています…。笑)

ひとり起業家として奮闘しているあなたは、ただ与えられた仕事をこなすだけのサラリーマン時代の方が、責任も軽いし圧倒的にラクにだった…!と感じているかと思います。ですがその一方で、誰かに命じられてやる作業ではなく、すべて自分で決めたことなので、ほとんどストレスが無いどころか充実した気分を感じているはずです。このように、ひとり起業家のビジネスとは、難易度が高くて責任もあるからこそ、心も身体も充実して楽しいと感じられるものですよね。

ビジネスの仕組みを構築する側になると、充分な利益を得ることに罪悪感を感じることは、誰しも一度は経験するものです。周囲からラクして稼いでるヤツだ…!という視線を感じることもあります。こういう状況になると、このサービス内容で、本当に価格の釣り合いが取れているのか…。お客様が値段が高いという印象を受けて選んでもらえないのではないか…。などの不安が常に付きまとうものです。

ですが視点を変えると、そう感じている自分は現状に満足せずに、常にお客様のために自分をアップデートできる人なんだ…!という見方もできます。実際にこういうひとり起業家の方は、勉強熱心で、お客様想いで、なおかつ謙虚で慕われる性格の方が多い印象を受けます。僕がひとり起業するときに、とある経営者さんから「まず自分自身が幸せにならないと、君は誰も幸せにできないよ。」というアドバイスをもらったことがありました。実際に5年以上ひとりでビジネスをやってきて、まさにその通り…!と実感しているところです。あなたのビジネスが、ブランディングという名の「ただの自己満足」にならないためにも、ここでお伝えした内容が参考になれば幸いです。

迷ったときはワクワクする方を選ぶ

ブランディングを実践するときに、様々な場面で判断に迷うことが出てきます。ブランディングという言葉はただの概念なので、これしかない…!みたいなベストプラクティスがあるわけでもなく、業界のトレンド的な手法に媚びる必要もありません。もちろん自分が定めたミッションを判断基準にしますが、それでもビジネスでは判断に迷うことばかり出てくるものです…。

では何を基準に判断を下すべきなのか…?
正解が無いこの問題にもし条件をつけるとするならば、迷ったときは自分の心がワクワクする方を選ぶということです。ここでは他人の意見に従うのではなく、必ず自分の意志で判断することが大切になってきます。自分に嘘を付かない…!好き嫌いで選ぶ…!という言い方もできますね。

自分の好き嫌いで判断をしているといえば、僕のなかではルパン三世が最初に思い浮かびました。世間では天下の大泥棒ですが、善人から盗みを働くことはなく、悪人ですらイタズラに傷つけることもなく、むしろ困った人を進んで助けるような性格が憎めないですよね。ワンピースに登場するモンキー・D・ルフィもそうです。世界の大犯罪者である海賊王になりたいという夢を持ちながらも、困っている人がいたら見過ごせない性格の持ち主。自分が嫌いなヤツだと判断したら、正義を掲げる世界政府だろうが関係なく怒りをぶつけます。ルパン三世もルフィも法律に反しているかもしれませんが、その判断はいつもエシカルで応援したくなるものばかりです。ブレない信念があり、強力なブランドの持ち主でもありますよね。もちろん、僕たちは法律を無視するわけにはいきませんが、エシカルな姿勢は見習いたい部分がたくさんあるかと思います。

判断に迷ったときの事例として、福岡に明太子というブランドをつくった味の明太子ふくやの創業者・川原俊夫さんのストーリーもぜひお伝えしておきたいです。実はこの明太子ですが、あえて特許を取らなかったという話をご存知でしょうか。周囲の人間からは、特許を取ったら確実に儲かる…!と何度も説得されますが、川原俊夫さんは「明太子は名物でも珍味でもない、ただの惣菜や。惣菜の作り方を秘密にする必要はない。」と言って聞く耳を持たなかったそうです。しかも特許を取らなかっただけでなく、あろうことか明太子の作り方を他の業者に教えて回ったのです。社員からは「社長の趣味だ。道楽だ。」と陰口をいわれながら何年もかけて苦労して開発したにも関わらず、惜しげもなくその製造法から工場の内部まで公開しました。普通の経営者なら誰もが利益を独占したいと考えますが、なぜそうしなかったのか…?

戦時下の当時、沖縄戦に参加した川原俊夫さんは、たくさんの仲間の命が犠牲になるなかで自分だけ生き残ってしまいました。また戦後で焼け野原になった福岡の市場を盛り上げて社会に貢献したい…!という強い気持ちがあったからだとされています。ちなみに、教えた明太子のレシピは途中まででした。一番重要な「最後の味付け」のレシピだけは、わざと秘密にしたのです。各業者が自分たちのオリジナルの「味付け」を試行錯誤することで、色んな味付けの明太子が市場に出回るようにするためだと、個人的には考察しています。

結果的に市場は爆発的な盛り上がりをみせ、あなたもご存知の通り福岡といえば明太子といわれるほど強力なブランドが定着しています。さらに川原俊夫さんは、息子さんに社長を代替わりするまで法人化することも拒んでいたそうです。その理由は、たくさん税金を納めたほうが街が元気になるから…!ではないかとされています。焼け野原の日本を見た川原俊夫さんにとって、自分がたくさん稼ぐよりも街が元気になる未来を考えると、きっと心がワクワクしていたのでしょう。この話を知ったときの僕は、節税対策だけのために法人化をしようとしていた自分が恥ずかしくなりました…。(ふくやのストーリーは漫画で無料公開されているので、気になる方はぜひこちらからチェックしてみてください。)

いくつか例をお伝えしましたが、迷ったときは心がワクワクする方を選ぶことで、結果的に強いブランドを構築できるのではないかと個人的には考えています。ブランド戦略の事例としてスターバックスがよく取り上げられていますが、同社には接客応対におけるサービスマニュアルが無いとされています。道徳、法律、倫理に反しない限り、お客様が喜んでくださることは何でもして差し上げてもいいという考えがあり、働くパートナーが自分自身で判断をしているとのことです。そのせいなのか、スターバックスで受ける接客には機械的な「イラッシャイマセ」なども無く、マニュアル的な感じがありませんよね。

実際に業務の範疇を超えた話として、心臓に病気がある女の子が手術のため日本を発つときに、お店のスタッフが業務時間外の早朝に、わざわざ暖かいシナモンロールを届けたという話もあります。普通なら業務外の金銭のやり取りはルール違反です。ですが、これを良しとする社内風土があるので、素晴らしいブランドを構築できているのでしょう。もしあなたがお店の店長なら、このスタッフを怒りますか…?それどころか、むしろ褒めたくなりますよね。以上が、迷ったときはワクワクする方を選ぶという話でした。ぜひ参考にしてみてください。

結局ブランディングとは

ブランディングでググってみると、本を出版してみたり、デザインの統一感を出してみたり、ポジショニング戦略がどうとかなど、表面的なテクニックがよく紹介されています。ですが、僕なりに書籍を読み漁ってみて、実際にブランディングに成功しているひとり起業家を見ていく中で感じたのは、テクニック面をどうこう考える以前に、まずは人としての「在り方」がすべてだと感じました。自分のビジネスに誇りと信念を持っている人は、安易に目先の数字ばかりを追いかけず、自分を信じて地道にコツコツと目の前のお客様のために感動を届けている人ばかりです。このような人たちが、結果的に「ブランド」という副産物を手にしているのです。

とはいえ、ビジネスを実践していくと綺麗事では解決できないような、目先の数字を追いかけることが重要なシーンが何度も出てきます。このとき、よくSNSで見かけるようなノウハウやテンプレートなどの「How to」に手を出したくなるでしょう。ですが、安易にそういったテクニックに手を出すと、せっかく築き上げてきたあなたのブランド(イメージ資産)が崩れてしまう可能性があります。自分の価値観や哲学が反映されていないようなテンプレートを使って、いたずらに感情を煽るような訴求をしてしまうと、自分とは波長の合わないお客様が、あなたの商品を購入してしまいます。そうなった場合、とりあえず目先の売上目標は達成できるかもしれません。また実績という意味でも、見栄えも良くなることでしょう。ですが、お客様が買うつもりはなかった、うまく言いくるめられてしまったと感じて、クレームや返金が増えてしまったり、依存度が高いお客様が参加してしまいあなたが振り回されてしまうと、最終的には誰も幸せになりませんよね…。ノウハウやテンプレートなどの「How to」は、ジャンクフード的な魅力があります。そのときは美味しいけど、ヘルシーでは無いので、長期的に依存してしまうと不利に働いてしまうのです。

安定的に稼いでいるひとり起業家さんたちは、そもそも安定を目指しているのではなく、ただビジネスに夢中になっているだけ。という方が多い印象を受けます。繁盛しているお店のオーナーさんのインタービューなども、特別に何か施策をしているというより、ただ目の前のお客様を喜ばせようと必死になっていたら、いつの間にか成功していたという話はよくありますよね。ネット上ではブランディングという言葉が一人歩きして、いろんな解釈がされています。デザインや写真などの見た目を綺麗にする、自分の強みや”らしさ”を見つける、売り込むことなく自然に売れるコンセプトを作るなどなど、もちろんこれらはすべて大事な要素ですが、どれもテクニック的なことで本質的では無いと感じています。

ブランドとは、あなたの想いやストーリーを紡いでいくことで少しずつ成長する大樹です。テクニックはその枝葉にすぎないので、すべてのアウトプットに対して自分の価値観や哲学がしっかりと反映されているのかを意識しながら、あなた”らしさ”が溢れるMy Brandを育ててくださいね。

PS

このnoteを最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。無理やり感のある理論も多いなか、ここまで読んでいただいたことに感謝いたします。最後に元も子もないことをいいますが、このnoteの内容はほとんど机上の空論です。もちろん、僕の体験談からお伝えしている部分もあります。ですが、まだまだこれから仮説と検証を繰り返しながら実績を積み重ねていき、再現性の高いひとり起業家のブランディング理論を構築していきたい所存です。それに伴って、このnoteの内容も少しずつ修正と加筆をしていきますので、気が向いたらまた遊びに来てくださいね。

好奇心と品格あふれる
ひとり起業家に”My Brand”を

このnoteが、あなたがビジネスを心から楽しいと感じられる手助けになれたら幸いです…!

運営者:中園 諭史(なかぞの さとし)


参考文献

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則
ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則
ブランディング22の法則
今までの経営書には書いていない 新しい経営の教科書
ミッション 私たちは何のために働くのか
ブランド  「自分の価値」を見つける48の心得
パーパス・ブランディング ~「何をやるか?」ではなく、「なぜやるか?」から考える
忙しい社長のための「休む」技術
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