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「有給は神聖で侵してはならないもの」だからこそ仕事の効率化が求められる

2019年4月より、働き方改革の一環としての有給取得が義務化されることになりました。一定の条件を満たす労働者については、年に5日以上の有給を取得しなければなりません。

そんな中疑問視されるのが、「そんなに休んで仕事が回るの?」ということ。

ドイツ在住のフリージャーナリスト熊谷徹氏は著書『ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか』の中で、「ドイツ人の有給に対する意識の違い」を説きます。

ドイツ人にとって休みは神聖な宝物

1年間に与えられる30~40日の有給休暇を、ほとんどの人が100%消化するというドイツ社会。2週間や2か月の長い有給をとるケースも少なくないのだとか。

筆者が取材先で出会った裁判官は、こう話します。

「仕事は重要ですが、自分の時間を犠牲にすることに他なりません。我々ドイツ人にとって、休暇とは、人生の中で最も重要なものです」

元社畜の自分が言うのもなんですが、「社畜」という言葉がある日本には縁遠い話かもしれません。それだけ休んでも、仕事に影響はないものなのでしょうか。

カオスを嫌う、ドイツ人

休み中に会社にお客さんから問い合わせがあった際、他の社員が対応するのは当然。それに備え、書類やファイルをわかりすく整理しておくことが徹底されているのだそうです。

そもそも、整理整頓が大好きなドイツ人は、書類の山からファイルを探し出すことが大嫌い。日本でもごちゃごちゃした混乱状態を「カオス」と言いますが、この言葉は元々ドイツ語。それに日本で使われる以上に劣悪なイメージが含まれているのです。

以前、私の職場で急遽休職した同僚がいたのですが、上司に言われて、彼女の1か月分のメールを全てプリントアウトしたことがありました。そんなことはドイツでは有り得ない話です。

もちろん、整理整頓だけでうまく回るはずがありません。出勤している時は、他の人の仕事もこなさなければならないため、効率が求められます。

厳しい実力主義

効率を重視するドイツ社会では、限られた時間の中で出した成果だけが評価されます。

そして、「がんばった」というプロセスを認められることはありません。そのため、全ての仕事に対して「本当にやる必要があるか」が徹底的に議論されます。

勤務時間中のネットサーフィンやちょっとした私用は、タイムカードを「休憩」にするように徹底。残業も厳しく管理されるため、常に時間との闘いの中、必要最低限の仕事を行うことになります。

その厳しい環境を「休みが神聖なもの」と強く思っていない日本人にいきなり課すことは、厳しいことかもしれません。

さらに筆者が「サービスの砂漠」と表すほど、効率化を進めた末にサービスが悪いドイツ社会を見ると、日本企業の良い所である「サービス精神」や「おもてなし」も、削り取られてしまうのではと危惧されます。

しかし、2015年のデータをみると、ドイツの国民一人当たりのGDP(国内総生産)は、日本の1.5倍。自殺率も低く、過労死する人もいないという現状を見ると、無視できない状況です。

筆者は本の最後で「日本人が取り入れたいドイツ流・報われる働き方」を27項目も挙げています。例えば、「PCのデスクトップに仕事をファイルを保存せず、共有サーバーに上げる」や「一年の最初に有給を取る日を決める」などなど。

少しでも参考にして、働きやすい環境づくりに取り組むべきかもしれません。

編集:円(えん)さん

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