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臨床心理士と可愛い絵本⑤

『臨床心理士と可愛い絵本』と題して、

シリーズでお送りします(更新は気ままに〜です)。


今回は、図書館で見つけた絵本をもとに

"大人になったから" だけでなく

"臨床心理士として" の視点も増えた私が、

一冊の可愛い絵本に想いを寄せて、語ります。


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第5回目にご紹介するのは

【 おれはワニだぜ 】

(渡辺有一:文絵 文研出版)


〈あらすじ〉

主人公は、ワニの中で一番強くて恐ろしいクロコダイルです。

「俺はワニだぜ」と威勢のいいワニですが、人間に捕まってしまいました。

情けなく思いながらも、目をギラギラさせて威厳を貫くワニ。

そんなワニが怒ったのは、仲間のクロコダイルが靴や鞄になって売られているのを見つけてしまった時でした。

ワニは「ワニはワニらしく生きろ」という父親の言葉を思い出し、

街中で暴れ、海へ出て、晴れ晴れとした気分で「ワニっほう!」と叫ぶのでした。


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臨床心理士Tは、この絵本の表紙を見たときから、ほんのちょっと手を加えたくてウズウズ。絵本を借りて帰宅後、そこらへんにあった紙を小さく手でちぎって、そこらへんにあった赤ペンでササッとぬって、表紙に置いてみました。


こんな感じに。


違いは わかるかな?



(1)ほんのわずかに視点を変えると、ストーリーも変わってくる


「ワニ」の「ワ」の上に小さい点を付け足しただけで、

この絵本の主人公は「ウニ」になります。

身体が大きくて、見るからに強そうで、目もギラギラさせているワニですが、

きっとそのワニには見えていないところに、私が付け足したウニがいます。


付け足されたほんの小さいふたつの赤い紙によって、

ワニの存在感が少し変化し、小さいながらにウニの存在感が出てきます。

お話の中でワニが人間の網にかかっても、ウニは小ささゆえに網にかかりません。網にかかった自分を情けなく思うワニの横で、ウニは平気な顔。

ちょっと威張りん坊のワニはサメと戦うことはイメージしていますが、すぐそばにいるトゲトゲの小さいウニの存在には気づきません。ウニはワニを恐れることなくマイペースにウニらしく生きています。


私が勝手に付け足したものですが、この2点の有無で視点が動き、ストーリーも変化することがお分かりいただけたでしょうか。


(2)学校・職場・家庭でも、視点を少し動かしてみると


たった2つの赤い紙がこの絵本に小さな変化をもたらしたように、

あなたの日常生活も、ほんの少しの何かで視点が動き捉え方や感じ方が変化する可能性があります。


例えば、学校・職場・家庭でも・・・

ワニのように大きくて強くて存在感があって、ちょっと怖いな・・・ちょっと苦手だな・・・と思う人がいるとき、

少しだけ何かを加えて視点を動かしてみるとどうでしょうか。


ワニ中心の世界がウニ中心に変化すると、ワニは「ウニの周囲でなんだか威張ってるやつ」くらいの存在に見えてくるかもしれません。ワニを中心に見るから脅威を感じるけれど、ウニを中心に捉えたら恐怖感がちょっとほぐれるかもしれません。


ワニとウニ、どちらがエライかを決める必要はありません。

大事なのは、“視点を動かす ひと工夫”です。


ほんの少し視点を動かすことで捉え方も変化することは、私たちの日常生活にきっといっぱいあるのではないかと思います。怖い、辛い、悲しい、腹が立つ、悔しい、不幸だ・・・とあなたが感じるストーリーも、カウンセリングでお話しいただくことで「何を中心に見ていたか」が変化する可能性があります。ちょっと俯瞰したり、こっち側から見たらどう?と試したり、視点の動きがあなたに良い変化をもたらす可能性があります。


そんなお手伝いができたらと、私はワニとウニの両方を愛おしく見つめながら、願っています。



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『臨床心理士と可愛い絵本』いかがでしたか?

第5回目 お付き合いいただき ありがとうございます。


同じ絵本であっても、感じ方は多様です。

同じ人が同じ絵本を読んでも、

その時の体調や気分によって

感じ方や気になるところが変わることもあります。


あなたが【 おれはワニだぜ 】を読んだ時

どう感じ、どんなことを考え、

どんなメッセージを受けとったか、

きかせていただけましたら嬉しく思います♪

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大阪中津臨床心理カウンセリング
http://osaka-shinri.site


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