自分の住み家が移るとき。
くつろげる場所といえば実家だったのに、
いつの間にか自分と夫の住む家が一番落ち着く場所になった。
夫と一緒に住み始めてから10か月くらい経った。
夫が先にこの部屋に住み始め、私は後から合流する形で共同生活が始まった。
夫が3か月くらい一人で暮らしていた部屋は、すでに彼の城になっていた。
一緒に暮らし始めたころは、なにかと気を遣うしちょっと窮屈だし。
友人の家にお泊りしているような心地がした。
おそらく夫も同様の思いをしていたことと思う。
なれない家で慣れない家事を毎日するのは堪える。
当時は夫との暮らしにいくぶん気を張っていたのもある。
私は隙あらば実家に帰ってぐうたらしていた。
夫が飲み会の金曜日なんかは、仕事が終わればそのまま実家に帰って日曜日まで滞在した。
帰るたび母は好きなだけぐうたらさせてくれたし、毎回おかずだとかお菓子だとかのお土産まで持たせてくれた。
共同生活を続けていると、夫と私との生活リズムが構築され、私たちなりのルーティンが出来てくる。
お互いに心地よい暮らしがすり合わさる。
一日の流れの主導権は自分たちにあって、何をいつするかはその時々に私たちが決めればいい。
それはそれはストレスフリーな暮らしなのだ。
実家にいる限り、私は親の子どもだ。
実家は両親の城で、子どもである私は城主の生活リズムやルールに合わせて行動しなければならない。
自分の城を持たないうちは何とも思わなかったけれど。(幼い頃からそれが当然の暮らしだったから。)
自分の城を築いてしまうと、だんだんと息苦しく感じるようになってしまった。
城主となったいま、私たち夫婦の決定権は私たちにある。
しかし、親にとって子どもはいつまでも子どもで、そうは思わないらしい。
実家に居れば両親のルールによるありがたいアドバイスやご高説を承ることもある。(ちょっと支配的だと思う。)
一番くつろげる場所だったはずなのに、なんだか居心地が悪いことが増えた。
今では安気に過ごせる自分の家が心の拠り所だ。
嫌なことがあれば一目散に帰りたい。
良いことがあったら、お土産を買って帰りたい。
玄関の扉を閉めれば、ふうっと一息つける場所へ。
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