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イラン生活記1🇮🇷

到着まじかの飛行機から眺める景色はとにかくワクワクさせてくれる。その国の景色が上空から見ることができるからだ。一体あそこには何があるのだろうか。あそこにはどんな人々が住んでいるのか。想像するだけでワクワクする。だから飛行機に乗るのはなんだかんだ嫌いになれない。

今見ている景色は砂漠。今までにはなかった景色だ。あっという間に遠くまできてしまったという若干の喪失感と、ここまで来たという充実感の2つの感情が互いに互いを認め合うことなく私の中で喧嘩をしていた。ここはオマーン。まだイランにはたどり着かない。降り立った地には今までに感じたことのない乾燥した空気感と強すぎる日差し。私はとうとう中東に来たんだと肌で感じた。

中東にはもともと興味があった。なぜなら何も知らないからだ。日本にいてはイスラム教に触れることもなく、石油大国がどんなものかもわからず、イスラム建築がなんとかとか、。アラビアが、ペルシャがとか、文字でみるか、内戦がどうとか、危険だとかいうメディア情報でしか感じることができない。ただそんなに世界は狭くない。そこに住んでいる人間がいるのだから、そこにも私たちの知らない世界が必ずあるのだ。この目で見たかった。感じたかった。

オマーンのマスカット空港に降り立った。さすがオイルマネーで潤ってる国だけあって空港内は今までで1番の綺麗さ。なんといってもピカピカに装飾されたフロアが私のような長期旅行者を迎え入れてるようには感じられなかった。ここまでくると日本人はおろかアジア人を見なくなる。私は完全に浮いていた。たまに見る中国人も間違いなくお金持ちの人間で、風格がある。中国のすごさを認めざるを得ない。

ここで24時間程度のトランジット。事前に調べた感じだとトランジットビザの有無が不明確だったので現地で確認する事にしていた。聞きに行くと「ビザいらないよ」とのこと。そして「あなたはオマーン航空が提供しているホテルに無料で泊まれるよ」とのこと。テンションが一気に上がった。私は教えてもらったカウンターに急いだ。すでに2組が同じように無料のホテルを手配されていた。話を並びながら聞いているととても綺麗なホテルのようで私は待っているのが苦痛にさえ感じていた。そして回って来た順番。

トランジットで無料のホテルに泊まりたいと伝えると、何かをチェックした後ここに行きな!と教えてもらった。私は多くのスタッフに尋ねながらそこに向かった。
日本人が実に珍しいのか、パスポートを見て日本人だぞとみんなに伝えるものまでいた。私は少し誇らしげになっていた。何度も道を間違えたどり着いたのは高級ホテルのような外観のトランジットホテル。フカフカの大きなベッドと綺麗なシャワーを想像するだけで楽しかった。受付の方に航空券を見せると笑顔でチェック。そして電話で確認。ここまではよかった。驚いたのは次の一言。

「100ドル払えますか?」

「は?」思わず日本語が出た。

「100ドル払えますか?」

「無料と聞いたのですが.....」

「あなたの航空券では宿泊はできません」

「なぜ・・・??」

「それは航空会社に確認してください」

たった数十分で天と地を見た。いや、実際は天は想像の天でしかあらず、架空の天に踊らされていただけだった。私はその受付が教えてくれたカスタマーサービスまで向かった。その足取りは重く。ただでさえこの場に似合わない格好をして浮いているのにも関わらず、その虚無感がさらに私を浮いた存在にしていた。

たどり着いた先では多くの乗客が並んでいた。中にはヒステリックな悲鳴をあげているものまでいた。何を話しているのかはよくわからなかったが、恐らくうまくいかなかったのだろう。私もきっとその中の1人に過ぎない。

順番を待っていても次から次へと抜かされる。これがアラブのやり方か。日本人からしたらこのマナーの悪さは腹がたつ。私は気持ちをインドモードに一瞬だけ戻し、順番を抜かしてやった。

ダメもとでもう一度確認した。

「無料で泊まれると聞いたのですが...」

「確認しますね!」。。少しの間があった。

「泊まれないみたいです」

「なんでだよ!!!!」思わず声が出ていた。

もう諦めた。期待だけさせやがって。

「どこか使っていい場所はありますか?」

「隣のラウンジを使ってください。ここは無料ですし眠れます」

ラウンジを覗いてみるとすでにたくさんの人々が寝ていた。床にソファに様々な場所に。ふざけんなと思ったがしょうがない。私は言われるがままにそこに入っていった。するとタイミングよくソファが空いた。そこに飛び込む。小さなソファだがまあいい。1時間ほどぼーっとしてると、ソファベッドに寝ていた人が肩を叩いてここに寝な。と譲ってくれた。こんなに多くいる人々の中で唯一の東アジア人の私に声をかけてくれたことが素直に嬉しかった。私は快く譲っていただき、すぐに眠りについた。

どのくらい経っただろうか。気がつくと10時になっていた。途中バッグが盗難されてないか気になったり、周りの話し声がうるさかったりで何度か起きたがよく眠れたほうだと思う。シャワーを浴びることはできなかったが。

11時まではそのままゴロゴロしていた。なんせオマーンの現地通貨を下すのはナンセンスだし、どこからどう見ても物価が高いのは明らかだったからだ。とにかく体を休め無駄なカロリーを消費するのを抑えた。

11時過ぎになり、ようやく身体を起こし、顔を洗う。肌がカサカサだ。よくみると少し老けたようにも思う。
まあいい。私は搭乗まで少しぶらついた。ブラついたと言ってもモルディブで調達できなかった「ドル」を調達したくらいにすぎなかったが。

歩いているとマックが見えた。さすが世界のマクドナルド。どこにでもある。私は迂闊にもこの世界のマクドナルドに手を出してしまった。いくら空港が高いとはいえ、1000円を超えることはないだろうとタカを括っていた。カードで決済したのち頬張る。頬張りながら一応確認すると1500円もした。今にも吐き出しそうなくらいのスピードで全てを食べた。早くオマーンを抜け出したかった。散々だ。

ようやく搭乗時間になると今までの疲れが一気に押し寄せて来た。私は席に着くなりすぐに眠りについた。