見出し画像

マーケティングのコスト

よくマーケティング経費の話を質問されます。事業会社さんからも、代理店、ツール提案の会社さんからもです。その際に考えなくてはいけないのは、
・マーケティングとは何を意味しているのか。
・マーケティング経費とは何が入っているのか。
・事業会社の業態、業種はなにか?
・成長のどのステージか?
などです。

ほんの10年ちょっと前くらいまでは、日本にはマーケティングは存在しない、小売業にはマーケティングは必要ないなどいう方もたくさんいたせいか、いまだにマーケティングに関する考えが成熟していない、社内での共通認識がないという会社が多いようです。1社しか所属したことしかない方にはわからないと思いますが、同じ業態、業種でも会社により、マーケティングの定義も違いますし、部署名、役割も大きく違います。(社内用語も冗談のように違います。)

マーケティングは元々P&Gなどの大手の消費財メーカー活動を整理して体系化された部分が多いので、消費者向けの物販的な色合いが強いと言えます。
古典の教科書的には、マーケティングは商品開発から始まるプロダクトマーケティングとマーケティングコミュニケーションに分かれます。違う見方では、B2BマーケティングがB2Cマーケティングというわけ方もあります。
物販系だと、メーカーは製造から行いますので、B2Bマーケティングのみが必要となる下請けを別にすると、プロダクトマーケティングとマーケティングコミュニケーションの両方が必要です。もしくは、マーケティングコミュニケーションもプロダクトマーケティングの一部として考えられています。
小売業は、基本的に仕入れをして販売ということで、プロダクトマーケティングの部分はざっくりと仕入れ費用に含まれます。ですので、マーケティング費用というと基本、広告宣伝、販促費ということになります。

極論的な言い方をすると、メーカーは、プロダクトマーケティングとマーケティングコミュニケーションという2つのマーケティング費用のポケットがあり、ある程度潤沢なマーケティング活動が可能です。しかしながら、マーケティングは存在しないと言われていた日本の小売業は、広告宣伝費、販促費のみがマーケティング費用の源泉です。追加として商品提供元から提供を受けるサポート費用もありますが、基本利用対象が制限される紐付きの経費です。そして、以前からの国内の小売の広告宣伝費の売上に占める割合は2.3-2.5%と言われていて、今もあまり変わっていないようです。ブランディング・商品開発に使えるマーケティング費用を持つメーカーと違って、小売は「直接的な販売のための」マーケティング費用しか持っていないということです。

この辺の理屈を理解していないベンダーさんが、メーカーでの事例をもとに小売事業者に提案しに来て、沈没して帰ることが多々あります。また、利益率の高い商品カテゴリーの会社での事例を利用する場合も同じようなことが起きています。

小売会社もECやWebの活動を始めてかなり期間が経ちましたが、いまだに経理や経営企画部門とマーケティング費用に関して衝突することも多いようです。なぜなら、ECに関するWeb広告経由の売上に関するコストはよくて5-10%(ROASの1000-2000%)だからです。
ECの全部の売上をWeb広告経由で獲得するわけではないとはいえ、店舗販売よりもはるかに高い比率です。初期の場合、一時的なてこ入れの場合は、さらに大きな比率にもなります。
EC、Webはやらなくてはと思いつつも、依存する割合が増えてくると、全体のコスト構造を再設定せざるを得なくなるため受け入れに抵抗があるのです。

私は、Web広告の費用の効率化、EC内のマーケティング費用の適正な考え方、全社の中でのマーケティング活動と費用といったことからかかわることが多く、さらに成長ステージごとの適正なコスト比率を決めていくお手伝いをします。マーケティング費用はやみくもに多ければいいというものではないけれど、マーケティングやその費用の意味合いをマネジメントにわかってもらえなければ、適正な予算の獲得も成長もできません。その実現のために、自身の経験から戦略策定を通じて、社内の理解を深めていくのも私の重要なミッションだと考えています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?