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2023年 44冊目『日本国憲法の普遍と特異』

FBで友人が読んでいて手に取りました。

日本国憲法は、75年間1文字も変わらなかった世界的に稀有な憲法典です。

なんだか「大丈夫かな」って思いますよね。

それを世界中の憲法と比較して、定量的に分析した本なのです。

とても読み応えがありました。

ざっくりいうと

憲法の内容は過去200年間に劇的に変化し、より新しいものは、権利の規定、そして制度的な抑制と均衡の面で、より明確になっている。

そして

前文の内容は、政治体制よりも憲法制定時期に依存する。

新しい憲法は、自由や平等のような立憲民主主義に関連することを列挙することが多い。

ただしこれらが実際の民主主義レベルに関連している証拠はない。

非民主的に制定された憲法ほど、道徳のような伝統的な価値観に言及する長い全文を書く傾向がある。

普通選挙前の憲法では自由に重きが置かれたが、これは増税による政府による積極的な社会への介入を嫌う、富裕層の選好を反映していた。政府は外交や国防に専念するものであり、憲法に規定されたのは①政治に参加する権利と②公平な裁判制度であった。

普通選挙とともに非富裕層の選好、すなわち平等も政治・憲法に反映されるようになった。特に産業革命・資本主義における格差是正を求め、公共財を提供する政府の義務を増やし、①経済面=労働者の権利、②社会面=医療、教育、社会保障の提供が規定される。

第二次世界大戦後、数の暴力を助長する民主主義に対する少数派の不満、また人権に対する規範の変化により、新しい権利、すなわち友愛が規定され始める。例として①ジェンダー・人種・宗教の平等、②脱物質主義:環境権や文化保存に関する規定が見られた。

権利の拡大とともに、政治機構もより細かく制定されるようになり、政府の長の選出方法や司法の独立に関する規定が一般的になる。そして政党の機能や組織も明記されるようになる。ただし、これはその国の歴史、政治力学、社会構造により違いが見られる。

また

日本国憲法についての特徴を3点挙げると、

1 日本国憲法は「人権」に関して多くの文言を費やす反面、「統治機構(政治制度)」の規定については法律に委ねている。

世界的に見て、憲法改正の多くは政治制度のもので、これは国会の単純多数で実現が可能。構造的に日本国憲法は改正の必要性が低い

2 日本国憲法は時代に取り残されているどころか、グローバルスタンダードが近づいている。これは上記の「人権」について。新しい憲法ほど人権について明記されていて、これが多いほど長続きする傾向がある。

3 改正の必要性が低いということが、改正が望ましくないと同義ではない。政治制度の柔軟性は、代表制民主主義にとって諸刃の剣になる。議会多数による選挙制度の恣意的運用であり、一票の格差是正が起きない、政権与党や現職議員に有利な制度を作ってきた。

→日本国憲法は進歩的であったが、より普通になってきている

→最近の憲法が日本憲法に似てきている

上述の人権とは

政治参加(投票、集会、表現、思想)、人身の自由(拷問、残酷な刑罰、法の下の平等、公平な裁判)

ただし、第二世代では

経済(組合・団結権、職業選択の自由、安全な労働環境)はあるが、公正な報酬、ストライキ権は無い

社会(生活水準、医療提供、教育無償)はあるが、休息・余暇の権利、高齢者財政支援は無い

そして第三世代では

文化保護、ジェンダー平等、人種平等、信仰平等はあるが、言語保護、民族自決、環境、言語平等は無い

加えて憲法の寿命を見ると

最古の憲法はアメリカで240年程度になる、次いでオランダの200年強、ベルギーの200年弱、カナダ、ルクセンブルク、トンガの150年前後が続く。日本は14位。

また憲法の文字数を比較すると

日本は4998語とかなり少ない

中央値は1万6179語、平均値2万2480語なので、短さがわかる

最長はインドの14万6400文字。次いでブラジルの約5万文字。

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