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2019年 81冊目『デザインが日本を変える 日本の美意識を取り戻す』

自動車関連の企画を考えていたので手に取りました。

マツダの復活劇の本です。

読み物として面白いし、ビジネスのだいご味が凝縮していて
ビジネスノウハウ本としても面白いです。

冒頭のアンベール(除幕式)のエピソードも素敵です。

17年秋のコンセプトカーを世界にお披露目した話です。

このエピソードで、本に引き込まれました。

マツダは、かつて外国資本の会社でした。

その際に、グループ各社との関係性を整理するために、

初めてどのような車を作るべきかを考えたそうです。

それまでは、コンセプトなど考えたことが無かったようです。

従来デザインのトップは資本元企業から外国人トップが来ていました。

ところがその外国資本が抜け、初めて、日本人として、前田育男さんがデザイン部門のトップになります。

従来のトップは、各論までデザインに指示をします。

デザイナーから相談を受けても、各論でYES、NOを言えました。

前田さんは違います。

新しいマツダのコンセプトを考えようとしたのです。

ですので、デザイナーからの相談も、何か違うというようなリアクションなのです。

デザイナーは戸惑いました。

優柔不断に見えたのでしょう。

毎年実施している従業員満足度の結果は散々な結果でした。

全社でも最低レベルで、前田さんは涙したそうです。

しかし、前田さんは、忍耐強く、コンセプトの重要性を訴えていきます。

それに呼応して、一人一人が本気に考え出します。

とても時間がかかる難産でした。

そしてKODO(魂動)というコンセプトにたどり着きます。

これで一件落着ではありません。

商品化直前のデザインを変更して生産部門から顰蹙を買ったりします。

しかし、その変更もあり、新しいその車はユーザーの支持を受けました。

ユーザアンケートから車を作るのも止めました。

数年後の車のニーズは自分たちが作るからです。

モデラ―(車の造形を作る専門職)の人事制度を変えて、
社内の管理職制度に通らなくても、専門職として評価・昇給する道を作りました。

デザインと設計と製造の壁をどんどん無くしました。

デザインのトップの仕事というよりも、会社全体の仕組みをあるべき姿にする実話です。

泥臭い話もたくさんあります。

一緒に仕事をした人の声も載っています。

かなりイメージが伝わってきます。

読み終わったらマツダの車が欲しくなるくらい良い本です。

ここ5年以上好業績だったのは、これらが理由だったのです。

その矢先に、新しいコンセプトの車の最初の四半期の売上が悪いという記事がでていました。。

値段を一気に上げ過ぎたようです。

友人の車の専門家に話を聞くと、車の値付けの王道を外したようです。

本質通りにやっていても成功しないことはあるのですが、本質を外すと失敗するのですね。

狭義のマーケティングが弱かったようです。

でも、本としては、かなり面白いです。

お薦めです。

▼前回のブックレビューはこちら


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