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サウナは果たして健康に良いのか?悪いのか?(エビデンス検証)


結論

物事は結論から書きましょうと義務教育で教わったので、早速結論を書く。

サウナは身体に良い!以上だ!!

これではさすがに乱暴すぎるので、色々補足していく。まず前提がいくつかあるので、常識というか当たり前だが、わざわざ書くことにする。

  • 持病がなく健康な人であること

  • 特に心臓などに疾患がないこと

  • その他事情によりスポーツや入浴を禁止されていないこと

サウナは温浴の一種なので、安静にしているのに比べれば心臓への負荷は当然増大する。ちなみに入浴は水圧がかかるので、心臓病の人にとっては尚更禁忌であることは言うまでもない。

このあたりを混同している自称医者が「サウナブームに警鐘!」などといった不安を煽る記事を書いていることが多いが、率直に言って検討にすら値しない。サウナが身体に悪いと言っている記事の9割以上はそもそもエビデンスが存在しないことも多く、検証以前の問題である。

では、その逆はどうなのかというところでタイトルにもあるとおりエビデンスを基に検証を進めていくことにしたい。

サウナは健康に良いという根拠

やはり、というべきかフィンランドでの研究が多い。恐らく日本でも入浴や温泉の健康効果を証明するような研究は多くあるのではないだろうか。

まず一つ目。サウナ入浴が心血管リスクの低下と関連があるか調べたもの。
この研究の凄いところは追跡期間が24.7年というところ。いかにサウナブームが訪れているといっても、今から研究を始めて結果が出るのは25年後ともなるとなかなか手が出せない研究分野かもしれない。

結果はというと、週に1回のサウナセッションを報告した参加者と比較して、2~3回および4~7回のセッションを報告した参加者の高血圧発症のハザード比はそれぞれ0.76および0.54、とのこと。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28633297/

週4回以上サウナに入ることで、週1回しかサウナに入らない人と比べて高血圧のリスクがおよそ46%も減少すると考えると圧倒的な効果である。

週4回以上サウナに入るのは流石にフィンランド人といった感じだが、日本人でも大半の人は週7日入浴するだろうから単に文化の違いというだけかもしれない。


こちらは20.7年追跡。サウナ入浴を週1回、週2〜3回、週4〜7回に分ける。
心血管疾患の発症率を比較した結果、それぞれの割合は以下のとおり。

・心臓突然死(10.1%、7.8%、5.0%)
・冠動脈疾患死(14.9%、11.5%、8.5%)
・心血管疾患死(22.3%、16.4%、12.0%)
・全死亡(49.1%、37.8%、30.8%)

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25705824/

この研究の面白いところは心臓関連の疾患による死亡リスクが下がることだけでなく、あらゆる死亡リスクを下げる効果があることまで突き止めている点だろう。サウナ1回/週の被験者に比べると4回/週以上の人は4割近く死亡リスクが下がることが判明している。

こちらは脳卒中との関連を調べている。
サクッと書くが、週4-7回サウナに入る人は約60%も脳卒中の発症が低下するとのこと。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29720543/

こちらは肺炎リスクについて。心臓だけでなく心肺機能の向上が見込めるということだろう。サウナ入浴の回数が週1回以下の群と比べて、サウナの回数が週2-3回以上で28%低下、週4回以上の群で 37%低下。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29229091/

続いて認知症。週4回以上で65%のリスク低下。
週に1回しかサウナ入浴をしない男性と比較して、認知症のHRは週に2~3回のサウナ入浴で0.78、週に4~7回のサウナ入浴で0.34。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27932366/

睡眠の質向上や精神疾患のリスク低減など、まだまだ他にもあるが、キリがないのでこれぐらいにしておこう。数年前にファクトフルネスが流行ったが、肩書などよりもファクトである医学論文などを重視することの大切さがわかるだろう。

これだけの証拠(エビデンス)がありながら、自分勝手な妄想でサウナは身体に悪いに決まっているなどと宣う医者が多いことに驚かされる。

サウナは健康に悪いという根拠(あるのか?)

と、ここまでサウナが健康に良いエビデンスばかりを紹介してしまったが、健康に悪いというエビデンスがあれば同様に紹介しなければ不公平というものなので調べてみた。

だが冒頭で述べたとおり、サウナを批判している記事のほとんどにエビデンスが付されていないため、なかなか困難を極めた。

これは割と有名というか想像しやすいと思うが、精子は熱に弱いため当然サウナ浴も悪影響を及ぼすだろう、という研究である。80~90℃のサウナに週2回、3ヶ月間継続。

サウナ入浴前(T0)、サウナ入浴3ヵ月後(T1)、サウナ入浴終了から3ヵ月後(T2)および6ヵ月後(T3)のデータを収集し、T1およびT2では正常な精子の数が9%程度減少したとのこと。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23411620/

ただしT3では逆転したということなので、サウナによる影響はあるが軽微で、しばらくすると元に戻るため、一時的な現象に過ぎないということらしい。

じゃあ妊活中はサウナを止めた方が良いのかというと、せいぜい9%の減少ということでさほど有意ではなく、生殖能力とは関係ないという別の研究もあるようだ。

精子生産は特にサウナ未体験の男性で減少するが、生殖能力の低下は定期的なサウナ習慣とは関連していない。反応は短時間で、サウナに入った直後の回復期に正常化する。定期的なサウナ利用への適応が、この反応に重要な役割を果たしており、頻繁にサウナに入ると、この反応は減衰する。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2451965019301048

ちなみに余談だが、サウナなんかよりもキツイ下着をつけているほうがよっぽど精子に良くないという研究もあるらしいので面白い。

サウナで心不全が改善する!?

ちょこっと閑話休題。こちらは日本の臨床医の先生が心不全の治療に取り組むなかでサウナ浴を利用しているという話で、有名な話でテレビなどでも放映されていたため、知っている人も多いかもしれない。

サウナといってもさすがに心不全の患者にサウナ→水風呂→外気浴の拷問を浴びせるわけではなく、60℃程度の低温サウナによる温浴効果で状態が改善するといった話である。

なら入浴でも同様では、となるところだが冒頭で述べたとおり、心疾患がある患者にとって水圧による負荷はかなり危険なもので、なかなか難しい。それならば、といったところでサウナ利用を思いついたそうだ。

上記の記事ではないが、和温療法に関する別の記事に記載されていたのが、長らく入浴できておらず、身体を拭くだけの清拭で生活している心不全の患者にとっては低温サウナで汗をかくといった行為がめちゃくちゃに気持ちの良い体験だったそうで、患者から泣いて感謝されることもあったそうだ。

そのため、単純に温浴効果のみで心不全が改善したのか精神的なものもあるのかは不明だが、何にせよとても素晴らしい試みである。

まとめ

これまで述べてきたとおり、サウナ浴が健康に良いことは数多くのエビデンスが証明している。

考えてみれば当たり前の話だが、安静にしていれば健康になるわけではない。例えばワクチン接種のタイミングなどでは入浴や激しい運動を避けて安静にしていることが求められるが、健康な人にとっては安静にすべきタイミングはそういった特殊な場合に限られるということだ。

例えば適度な運動であっても心肺機能への負荷は当然増大する。だが、適度な運動を続けた人とずっと家でゴロゴロと「安静にしていた」人を比較すれば20年後にどちらが健康になっているかはバカでもわかる。

ちなみにサウナ浴に限らないが、HSP(ヒートショックプロテイン)による効果は健康改善という意味では非常に大きいと思われる。

深部体温を上げることによって体内で生成されるたんぱく質(プロテイン)なのだが、入浴の場合は40℃のお湯に20分以上浸かる必要があり、若干ハードルが高い。サウナの場合は3セットでHSPが生成されるところまで深部体温が高まるので、通常どおりサウナを楽しむだけでOKだ。

HSPの効果は枚挙に暇がない。
免疫力を高める、コラーゲンの生成を増やす、シミシワの予防、代謝を活発にする、睡眠の質を改善する、自律神経を整える、疲労回復、抗炎症作用、がん細胞の成長鈍化・・・
など、健康にも美容にも良いこと尽くしである。

エビデンスでも紹介したようにサウナ浴は直接的な心疾患リスク以外の死亡因子にも効果があると判明しているが、それらはこういった副次的な効果によってもたらされていると考えるのが自然だろう。

日々、健康に楽しく生きるための秘訣がサウナにあるのではないだろうか。


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