大阪の喫茶路地さんでの個展「きょうも、となりに」を開催して、ものづくりや空間づくりの楽しさとつながりの大切さを感じた話
こんにちは、イラストレーターのナカノエミです。
2024年8月21日から9月16日までの約1ヶ月、大阪の路地に佇む喫茶店"喫茶路地"さんで個展を開催しました。このnoteではその個展の様子を写真とともに記録に残しつつ、個展の企画や準備、設営、会期中、展示を終えて私が感じたことなどを綴っていけたらと考えています。
ものづくりが好きな方、個展をこれから開こうと考えている方、空間作りに興味がある方などに読んでいただけると嬉しいです。
喫茶路地さんを知ったきっかけ
2022年に開催された朝野ペコさんの個展「くちぶえ」で訪れたのが初めてでした。そのときは秋色もなかとくちぶえブレンドをいただいてホクホクしながら帰路についた記憶があります。ペコさんの素敵なイラストを落ち着いた喫茶路地さんの空間でゆったりと眺めながら、ブレンドももなかもとっても美味しくて幸せなことだなあと思ったんでした。
この頃の私はまだまだ駆け出しで、春に初めての個展が終わったばかり。これからどうお仕事をしていこうか、どんなイラストを描いていこうかと模索していました。
それから年月が経ち、2024年のはじめに余白珈琲さんの”台所珈琲”という一冊の本と出会い、喫茶路地さんでハンドドリップの道具とはじめての人向けの珈琲豆3種セットを注文して珈琲の楽しさとおいしさに目覚めました。
▼この辺りの話は2024年3月のカレンダーの近況報告で書いているので興味のある方はこちらをお読みください。
好きなイラストと珈琲が繋いでくれたご縁
喫茶路地さんがあるのは大阪地下鉄"天神橋筋六丁目"駅から歩いて5分ほどの場所。天六と呼ばれるこのあたりは、飲食店がとても多く活気がある街なんですが、そこから路地に入ってお店の扉を開けるとそこには珈琲の良い香りとカチカチと振り子時計の音が静かに聞こえてくるなんとも穏やかな空間が広がっているのです。
とてもいい空間だ、と訪れるたびに思いました。
窓から差し込む木漏れ日や、ほのかに明るく照らす照明、とても良いフォルムの椅子やテーブル。常連さんも多く、本を読んだり、何をするでもなく珈琲を楽しんだり、思い思いの時間を過ごされているのがとても素敵。
そんな喫茶路地さんから個展を、とお誘いいただいてそれがとても嬉しくて。好きなイラストと珈琲が繋いでくれたご縁だなぁと感じました。もちろん絵を描き続けてきたことも。
2年ぶり、2回目の個展、さてどうしよう
実際に動き出したのが今年の5月、一度ご挨拶に伺ってそれからどんなテーマにしようか、飾る絵はデジタルかアナログか、あれこれ考えを巡らせました。
2024年の5月といえば、丹波篠山に移住してちょうど一年が経った頃。これから先ずっと大切にしたいと感じるものを身の回りに置こうと、そんなふうに考えて少しずつ好きなものを買い求めていました。それからこの場所で季節を一巡して周りの風景がとても好きになっていました。
そこで、こんなステートメントが出来上がりました。
個展のタイトルは「きょうも、となりに」。そばにある大切なものたちを描こうと思いました。
展示の作品はデジタル?アナログ?
私はイラストレーターとして仕事をしていますが、そのほとんどが(というか全てが)デジタルで描いたものです。毎月お描きしているカレンダーのイラストも。
初めて岩絵具で描いた作品を展示した個展から2年、アナログで制作することはあまりなく、オリジナル作品もほとんどがデジタルで製作していたので頭の中にあるイメージをよりしっかり形にできるのはデジタルイラストでした。
それでもアナログ作品でいこうと思ったのは、岩絵具の質感や粒子のきらめき、そばで見たときに感じるものがあると思ったからです。何度も何度も描き直しながら、思いがけぬ表情が出せたり、色の滲みや重なりができたり、偶発的に出来上がった模様の美しさを感じました。
私は日本画を習ったことがないので、とても不恰好かもしれません。それでも岩絵具の色の美しさや表情を、自分の見た風景を、時間を、色を、表現できればと筆を走らせました。
逆に、イラストのお仕事をアナログでするのがとても難しいだろうなあと思います。まだまだ試行錯誤が必要です。
とにもかくにも、アナログ作品で描こうとは決めていたんですが、メインビジュアルはデジタルとアナログ両方で描きました。そしてそれをお渡ししてDMのデザインを作っていただいたのですが、仕上げていただいたのがこちらです。
上半分はデジタルイラスト、下半分はアナログイラストに。
馴染みのあるデジタルのイラストから、岩絵具を使用したアナログの作品への期待感を感じていただけるように2つの手法で描いたメインの作品をつなげたデザインに、素敵に仕上げていただきました。
オリジナルブレンドを作ってもらうという、とても嬉しくて貴重な体験
喫茶路地さんでは展示の際に、その個展のイメージであったり、作家さんの好みに合わせてオリジナルブレンドを作っていただけるとのことで、とても嬉しくて貴重な体験をしました。
あらかじめ個展のイメージと、どんな時に飲みたいか、自分の味の好みもお伝えしてそこから店主さんがいくつかブレンドを淹れてくださって。そこからこれだと思うものを選ばせていただきました。なんて贅沢なんでしょう。
そんなふうに出来上がったのがこの「otomo blend」です。
このブレンドも、会期中いろんな方にお楽しみいただけたようで、とても嬉しかったです。もちろん私もいただきました。ホッと落ち着く、でもどこか芯があって、よし頑張るぞとそばで支えてくれるような味でした。
自分の作品から味が生まれるというとても貴重な体験をさせていただきました。
ずっと作りたかったクッキー缶、思わぬ出会いで作ることができました
私は個展のたびに何か作りたいものを作ろうと思っておりまして。初めての個展では活版印刷でコースター型のDMを作りました。(詳しくは下記のnote参照)
今回はせっかく喫茶路地さんで展示をするのだからと、珈琲缶を作ろう、作りたい!と動き出しました。缶というものは最小ロットが大きいのですが、中には一つから作れる印刷所もあって、ただどうしても単価が高くなってしまい販売価格も上がってしまうのでどうしたものかと悩んでいました。
そこで目に入ったのが"加藤製作所"さんのInstagramの投稿でした。
「オリジナル缶制作お試しキャンペーン」
"新規でのご依頼のお客様に限り50缶でオーダー可能" というこのキャンペーン。
納期もちょうど良い、今すぐ原稿を作って入稿すれば間に合う!ということでさっそく出来上がったのがこちらのイラスト。
お庭に咲く身近な花をモチーフに描きました。作るからには自分でも長く使いたい、身近に置いておきたいと思うデザインにしたくて、缶の色はグレーベージュ、インクはホワイトで作っていただきました。
このまま珈琲缶として販売しようと考えていたところ、イラストレーターの友人がせっかくだから珈琲缶の中にクッキーを入れてクッキー缶として販売してはどうかというアドバイスをくれました。
クッキー缶、私はとてもクッキー缶が好きで、いつかクッキー缶を作りたいと思っていました。それが実現できるかもしれない…ワクワクしました。
クッキー缶への私の思いはこちら↓
入れ物はできた、では中身をどうするか。焼き菓子屋さんの友人もいないし、自分で作るわけにもいかないので、どうすれば良いのかと途方に暮れていました。洋菓子屋さんに頼むことも考えましたが、突然「クッキーを焼いていただきたいのですが」なんて、企業でもない一個人のしかもイラストレーターがお願いしても請け負ってはくれないだろうなと。
そんな悩みを抱えながら、個展のひと月半前、私は京都で開催されている”京都岡崎つむぐ”というイベントにポートレートのワークショップで出店しました。2022年から5回目の出店、出店者の皆さんもとても素敵で、毎回楽しく過ごさせていただいているイベントです。
▼イベントの様子
このイベントの主催者であるcafeFLAGの店主さんとお話ししている時に、"お店の焼き菓子もご自身で焼いている"という話を聞き、相談したところ、「できるよ!」と言ってくださって…!!
出来上がったのがこちらです。
こちらもまた、これまでの活動からご縁が繋がったなあと思いました。
(こちらのクッキー缶は22日までオンラインショップでもお求めいただけます)
ご協力いただいたcafe FLAGさんは大阪の枚方市にあり、和食プレートランチと美味しいデザートが食べられるとても素敵なお店です。お近くにお立ち寄りの際はぜひ。
ちなみにコーヒーカップと蝶々のクッキー型も描き下ろしのイラストで、クッキー型を製作している方にご依頼して作っていただきました。
製作と子どもと自身の体調不良と夏休み
7月も半ばを過ぎると夏休みが始まります。手持ちの仕事を終わらせて制作に臨み、半分ほど作品を描き上げたところで夏休みが始まりました。毎朝お弁当を作り(普段の給食のありがたみが身に沁みました)、夏休みだから休みたいと言う娘をなんとか説得して預かり保育に通ってもらい…
夏休みをどう過ごすか(やり過ごすか)が子育てをしながら働く親たちの課題だなあと思うわけです。子どもの成長に合わせた働き方を模索しています。
制作をしていると今度は子どもが風邪をひき、夫にうつり、また子どもへ、そして私も…といった具合に家の中を風邪の菌が一巡しました。それでもなんとか作品を描き上げていきました。
制作しながら額を発注し、グッズを作り、また制作し、額装してグッズを梱包して、プライスなどの細かなものを準備して、SNSでの告知もある。個展ってやることがたくさんあるなあと思います。
自分で言うのはなんだかなあと言う感じかもしれませんが、とても良い作品が出来上がったと思います。並べた時の作品の配色や、店内との馴染み方など。また出来上がった作品は額装してから自宅で一度飾ってみてどうかな〜と様子を見ていました。お家に馴染む絵をお届けしたいのです。
出来上がった空間
言葉ではなく、お写真で少しでも個展の空気感が伝わればと思い、作品と喫茶路地さんの風景をまとめました。
Instagramのリール動画でも個展の空間を少し体感していただけるかもしれません。
約1ヶ月もの間、喫茶路地さんで作品を展示させていただけたことは、私にとって奇跡のような経験でした。
期間中、喫茶店ということもあり在廊はしませんでしたが、訪ねてくれた友人と一緒にコーヒーを飲んだりかき氷を食べたり、私自身も何度もこの空間を楽しみました。
個展最終日、搬出前に少しゆっくりと過ごす時間ができたのでずっとスケッチしたいと思っていた喫茶路地さんの店内をスケッチさせてもらいました。
会期の途中から置かせていただいた感想ノート、たくさんメッセージを寄せていただきました。そこから少しだけ紹介させてください。
作品だけでなく、空間ごとお楽しみいただけたという声を聞いて、本当に嬉しかったです。私も日常に疲れたり、何か気持ちを切り替えたい時、なんでもない時も好きな喫茶店や場所へ行き心を落ち着かせたり、気持ちを上向きに持っていったりしています。
そんな場所をもしかしたら作ることができたのかもしれないと思うと、今回個展を喫茶路地さんでさせていただいて本当に良かったなあと感じました。いただいた言葉は宝物です。何度も読み返し、これからも制作へ向かいたいと思います。
さいごに
とても長くなってしまいました。ここまで読んでくださってありがとうございます。会期中、たくさんの方にお越しいただき、珈琲の香るこの空間で作品をお楽しみいただけて本当に嬉しかったです。
お越しいただいたみなさま、作品やグッズをお迎えいただいたみなさま、会期中気にかけてくださったみなさま、本当にありがとうございました。
このような機会をくださった喫茶路地さんに心より感謝いたします。
みなさまの日常が少しでも穏やかで楽しいものであることを願っております。
ナカノエミ
おまけ(オンラインショップと今後のスケジュール)
個展「きょうも、となりに」で販売しておりました作品集やクッキー入りの珈琲缶、アクリルキーホルダーなどを期間限定のオンラインショップでお求めいただけます。
9/22(日)23:59までとなっておりますので、よければのぞいてみてください。
今後のスケジュールについて
11/6-11/18まで東京のひるねこBOOKSさんで風景をテーマにした個展を開催します。こちらもとても素敵なお店なので、お近くの方はぜひお越しください〜!
11/9 京都岡崎つむぐ 似顔絵で出店いたします。こちらもぜひ!
11/17 東京コミティアによしもとななさん(https://x.com/sunao1231)と隣接で出店予定です〜!合同本が出るかもしれません!
秋もどうぞよろしくお願いいたします!皆さんと元気に笑顔でお会いできるよう、生活と仕事と制作のバランスをとりながら頑張ります〜!!