短編小説 ラーメン小説
以前書いてみたショートショートになります!
大司くんは困っていた。
どうも本を読むと眠くなり、夏休みの読書感想文が書けないのだ。
何か簡単に本が読める方法はないか悩みながら散歩していた。
すると、目に飛び込んできたのは「ラーメン小説」という店の看板。
ちょっとお腹も空いたし、ラーメンでも食べるかと入店。
店主が「いらっしゃい、どのラーメンにしますか?」と聞いてきた。
そこで「味噌ラーメン一つ、チャーシュートッピングで」と注文。
しばらくすると美味しそうなラーメンが出てきた。
「ズルズルズル〜」
勢いよく麺を啜ると頭の中に北海道の鉄道員が主役の小説がありありと思い浮かんだ。
「な、なんだこれは!!」
大司くんは驚いて目をパチクリ。
「今のは浅田次郎の『鉄道員』という小説だよ」
店主は大司くんにそう告げ、このお店の秘密を話し始めた。
「ここのラーメンを食べると味によって違った小説の内容を頭にインプットできるのさ。例えばこの激辛ラーメンはハラハラドキドキのサスペンス小説、こっちのコッテリとんこつラーメンは心満たされる恋愛小説って感じにいろんな小説がラーメンの味として楽しめんのさ!」
ラーメンを食べれば小説が読めたも同然!
そこで大司くんは「ここでラーメンを食べれば読書感想文が書ける!」と心の中で喜んだ。
「じゃあ、そこの二郎系ラーメン特盛ちょうだい!」
「・・・あいよ」
店主はちょっと困り顔で返事をした。
それから少しして二郎系ラーメン特盛がやってきた。
「ズルズルズル〜」
またしてもラーメンを勢いよくすする。
二郎系ラーメン特盛は壮大なミステリー小説京極夏彦の「魍魎の箱」の内容が頭にインプットされた。
「よし、これで読書感想文が書けるぞ」
意気揚々読書感想文を書き上げ学校に提出した。
そして、先生から問い詰められた。
「大司くん、なぜ北海道の鉄道員が探偵になってバラバラ殺人事件と少女誘拐事件を解決して最後に妖怪退治をしているんだね?君は何を読んだんだい?」
大司くんは答えることができなかった。
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