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必ずできるとは言えないけれど...

「あなたが必ずできるとは言えないけれど、できないだろうと自分で決めて違うことをするのはおかしい。結果的にはできないかもしれないけれど、正しい方向を向いた練習をすることが大切。そういう気持ちで取り組んでおいてね」

自分が師事した先生の言葉で印象的なもののひとつです。ある特殊技巧を教わるときに先生がおっしゃったことです。

例えば、足し算は苦手だったけど掛け算は好きだという子がいます。一方で足し算は得意だったけれど引き算でつまずいてしまう子もいます。縄跳びも前回りはなかなかできなかったけれど、後ろ回りはすぐできちゃった、という子もいるでしょう。

ヴァイオリンもどういう段階でつまづいてしまうか、というのは人それぞれです。どこに壁があるかわかりません。壁は壊れないかもしれませんが、押し続けていれば数ミリは動くかもしれない(笑)

ヴァイオリンには教本もたくさんありますが、100点と言えない演奏でも多くのレッスンの場合、次の曲に進むと思います。
それぞれの曲に「押さえてほしいポイント」があって、そこをクリアしてくれれば次の段階へ進めるということですね。

でもなぜか、多くの人が以前弾いたはずの曲をその時よりよく弾くことができない…もっというと以前弾いたはずの曲を弾けなくなってしまう人も多いです。なぜなのでしょうか。

指示されたものしか練習しないから?ゲーム感覚で進めているから?簡単な曲には興味がない?

どうしても手っ取り早く「弾けた」雰囲気を先生も生徒も作りたくなるものです…
これだけ曲を進めた、何巻になった!...それもモチベーションのために大切なことでもありますが、その先の「まだ知らない」「まだ気づいてない」音楽の愉しみのことを考えると、それだけではもったいない、と自分は考えてしまいます。

1年後、3年後、10年後…ヴァイオリンをやっててよかった、本人が想像もしない感覚で将来楽器を楽しんでいるためには、お楽しみの時間とともに、地味な時間も必要です。

一流のヴァイオリン職人は、粗削りも手作業、ノミで行うそうです。
これは、その木、その板がどんな板か、削るうちに手で感じられるからだそうです。荒削りをノコギリでやると圧倒的に時間は短縮されますし、労力も半分以下です。
それに出来上がった形だけ見れば、厚さや幅など数値は同じヴァイオリンになるかもしれません。でも、その木の本来の姿が出ているか、というのは明らかに違います。

自分のレッスンはそこを目指したいと思って日々考えていますが、最近は真摯な姿勢のおチビちゃん達が多いです。
“いい意味”で時間をかけることは、とても大切です。仮に遠回りだったとしても、遠回りした方が有機的に理解できると思います。「急がば回れ」、「悠々として急げ」、とも通じると思います。

最近、熱意に加えて、「気長」もヴァイオリンに向き合うときに大切なことだと感じます。あせらず、ゆっくり、丁寧に、冷静に…今日も練習を。

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■コンサート■
6/22(土)コンサート@新宿区立しなのまち子ども園
11/3(日)リサイタル@現代ギター社GGサロン
■WEBサイト■
https://nakamurayuta.com
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https://cafetalk.com/tutors/profile/?id=19411&lang=ja

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