【眠らない猫と夜の魚】 第17話
「神隠し」②
「小夜、ほい」
「ん、ありがと」
水鳥の声に我に返って珈琲のペットボトルを受け取る。表面に浮いた水滴に近づきつつある夏を感じた。
「私も珈琲飲みたいなー。けどまだ飲んじゃだめなんだって」
ベッドに上体を起こした素子さんが唇を尖らせる。
「退院したらアボカド来てよ。店長から送られてきた秘蔵のブラック・アイボリー淹れたげるから」
水鳥が素子さんに向けて親指を立てた。
「えっ、それ美味しいやつ?」
「前に飲ませてもらったけど、独特の甘みがあってスペシャルな味がし