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眠らない猫と夜の魚

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不登校の小学生、草薙波流は夜の街を歩く。 実際に歩くのではない。眠っている間に波流の意識だけが体を抜けて、夜の街を歩くのだ。それを街で怪談を収集する大学生の黒崎朱音は「夜歩き」と…
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記事一覧

【眠らない猫と夜の魚】 第17話

「神隠し」② 「小夜、ほい」 「ん、ありがと」  水鳥の声に我に返って珈琲のペットボトルを…

中村朔
1日前
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【眠らない猫と夜の魚】 第16話

「神隠し」① ■怪異蒐集No. - -(未公開) ■タイトル:神隠し ■話者:Aさん、小学生 ■記…

中村朔
3日前
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【眠らない猫と夜の魚】 第15話

「地蔵殺し」④ 「……どーすんの、これ」  というわけで私の家に、願いが叶う石(×100)は…

中村朔
6日前
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【眠らない猫と夜の魚】 第14話

「地蔵殺し」③ 「は? 猫地蔵を砕いた石?」  小夜がソファの背もたれに張り付いて足元のエ…

中村朔
8日前
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【眠らない猫と夜の魚】 第13話

「地蔵殺し」②  アボカドのクローズ作業を手伝ってから、小夜は宣言通りに帰っていった。  …

中村朔
2週間前
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【眠らない猫と夜の魚】 第12話

「地蔵殺し」① 「……どーすんの、これ」  私と朱音の間に置かれたサラダ皿の中に、小指の爪…

中村朔
2週間前
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【眠らない猫と夜の魚】第11話

「落下と移動」③  翌日、亜樹といっしょに、投身自殺があったと思われる三島ビルにやってきた。  現地には3階建ての長細い雑居ビルが2つ並んでいて、三島ビルはそのひとつだった。どちらも薄汚れた外壁にひびが馴染んだ、年季を感じさせる佇まいだ。 「飛び降りがあったとして、どこに落ちたんだろ」 「ビルとビルの隙間かな」  隣のビルとの隙間に、1メートルくらいの狭い空間がある。隙間を覗くと、隙間に面したビルの壁は、明かり取りの小さな窓しかなかった。 「目撃譚が音だけなのは、見つ

【眠らない猫と夜の魚】第10話

「落下と移動」②  爺ちゃんはウキウキしながら釣り竿を磨いていた。 「釣りに行くの? ま…

中村朔
3週間前
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【眠らない猫と夜の魚】第9話

「落下と移動」① 『自殺者の霊が、同じ場所で自殺を繰り返す』  この手の怪談はよくある。…

中村朔
3週間前
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【眠らない猫と夜の魚】 第8話

「神様が眠る時間」④ ――ひゅっ。  背後から、乾いた呼吸の音が聞こえた。  振り返ると…

中村朔
3週間前
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【眠らない猫と夜の魚】 第7話

「神様が眠る時間」③  硬い、土の地面を掘る。  道具はなく、指先で。  尖った石で皮膚が…

中村朔
3週間前
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【眠らない猫と夜の魚】 第6話

「神様が眠る時間」②  翌朝は6時に起きて、いつも通り日課のランニングにでかけた。  高校…

中村朔
3週間前
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【眠らない猫と夜の魚】 第5話

「神様が眠る時間」①  一週間のうちで一番やる気が出ない、木曜日。  読みかけのミステリ…

中村朔
3週間前
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【眠らない猫と夜の魚】 第4話

「埋める」④  薄暗い森。乾いた土の広場。錆びたバス停。  夜歩きのときに見た場所だ。あの夜、車が止まっていた場所には、今は小夜ちゃんの車が止まっている。森に入ると、広場から少し入ったところに、土を掘り返した跡が見つかった。そして近くの木の陰には、覗き込むように地蔵が立っている。やっぱり、ここに間違いない。 「ここ?」 「……だと思う」  朱音さんは頷くと、地面にしゃがみこんで掘り返した跡を検分し始めた。すぐ近くに上が平らになった石があって、その上に紙袋のままファミチキが置か