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秘曲「道成寺について」

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2021年5月の記事一覧

能の秘曲「道成寺」⑧

能の秘曲「道成寺」⑧

鐘が上がるとここからは勢いの勝負!地謡が終わると「祈(いのり)」と言う舞(ではないのですが・・・)になります。

立ち上がったシテが前シテで着ていた唐織を身体に巻き付けます。これが慣れないとなかなか上手くいかない・・・打杖が暴れたり唐織が垂れ下がったりすると興醒めです。しかしあまり時間を掛けすぎると舞台がダレてしまいます。

この作業が終わり、シテが打杖を横に出すとそれが合図で囃子がテンポアップし

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能の秘曲「道成寺」⑦

能の秘曲「道成寺」⑦

私の道成寺披きの時は、鐘が落ちた瞬間、鐘の中で頭が真っ白になっていました・・・。結構上手く入ったようなのですが、かなり強めに頭を打ったらしく、一瞬、ぼーッとなりました。

後見の合図はわかったので返事を返しましたが、自分が置かれている状況を思い出すのに一寸時間がかかりました。

さて、鐘に無事に入った後は時間との戦いです。間狂言とワキの語りの間に色々な作業をしなくてはなりません。ここのところは余り

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能の秘曲「道成寺」⑥

能の秘曲「道成寺」⑥

乱拍子の最後にシテが「成寺(じょうじ)とは名付けたりや」と謡いながら爪先を左右に動かし(習いの足裁きです)拍子を踏むのが常の型。「無躙之崩(ひょうしなしのくずし)」の小書が附くと足拍子を踏まずに回り込んで急之舞に入ります。

「急之舞」はその字の如く最も早いテンポの舞で、小鼓はそれまでの一番ゆっくりしたリズムからいきなりフルスロットルで打たなければなりませんし、大鼓は40分以上固まっていた状態から

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能の秘曲「道成寺」⑤

能の秘曲「道成寺」⑤

いよいよ乱拍子です!
が、その前にシテが気を使うのがそのスタート位置。物着から大鼓の一調に乗って舞台に走り込んできますが丁度良い位置に止まるのが結構難しいのです。

鐘の真横より一寸前であまり左に寄らずに居たいのですが、勢い余って出過ぎたり鐘の下に入ってしまったりとなかなか具合の良い場所に立てないものです・・・

そしてシテの次第の謡となり続いて地謡が地取を謡いますが、道成寺の地取は特殊で乱拍子に

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