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サンタクロースの本当のプレゼントとは?

サンタクロースって、不思議な存在ですよね?

真っ赤な服を着て、白いおひげを生やして、プレゼントがたくさん入った大きな袋を背負って、トナカイの引くソリに乗ってやってくるという。。。

架空の人物でありながら、世界中の人が知っていて、特にこどもたちにとってはすごく特別な存在で。。。

では、この世界共通の文化ともなっている、「サンタクロース」って、なんなのでしょう?

サンタクロースがわたしたちに本当にプレゼントしてくれるものって、なんなのでしょう?

カウンセラーと一人の父親としての立場から、少し考えてみたいと思います。

サンタが「こどもの心」にもたらすもの

みなさんが、はじめてサンタクロースからプレゼントをもらったのを覚えているのは、何歳くらいのときですか?

だいたい3歳くらいなのではないか?と思うのですが、どうでしょう??

実は、3歳頃というのは、「あなたが覚えている一番古い記憶(最早期記憶)は、何歳ころの記憶ですか?」と質問したときに、一番答えとして返ってきやすい年齢で、その少し前の2~2歳半頃に、こどもは自分のことを、人が自分を呼ぶ「○○ちゃん」という言い方で呼ぶのをやめて、「わたし」「僕」と言い始めることが多いといわれています。

「わたし」という自意識が芽生え始めてくるのと同時に、こどもは「サンタクロースからのプレゼントが届く」という、この世ならぬ、不思議な経験をし始めるのですが、そこには、一体どういう意味があるのでしょうか?

3歳頃のこどもにとって、この世界はなにが起こるかわからない、謎と危険に満ちた、広すぎる世界です。
とても一人でやっていけるような世界ではありません。
そういう不安でビクビクなところもあるこどもたちのところに、一年の終わりにやってきてくれるのが、サンタクロースなのです。

ここで、こども目線に立って考えてみると、サンタクロースというのは、絵本や写真では見ることができるものの、やってくるのは眠っている夜中で、実際の姿は決して見ることができないという、おとぎ話の人物のような存在ということになります。
そして、直接伝えたわけでもないのに、なぜか自分が欲しいプレゼントのことを知っているという、まさに「神ってる」存在になるわけです。

僕は、3歳だった長男が、ワクワクとちょっぴりドキドキの入り混じった表情を浮かべながら、プレゼントの包みを開けた瞬間に、中からまさに自分が欲しいと思っていた超合金のロボが出てきたのを見て、立膝をついて座った姿勢のまま、よろこびのあまり体が畳から数センチ宙に浮いた光景を、今でもはっきり覚えているのですが、こういう経験が、こどもの心にもたらすもの(育むもの)というのは、いったい何なのでしょうか??

それは、「目に見えない愛の奇跡を信じる力」なのではないか?と僕は思います。

なぜなら、サンタクロースからのプレゼントというのは、実際に見たことのある、だれかから届くプレゼントではないからです。
遠い異国の地から空を飛んでやってくる、目に見えない神のような存在からもらう、「思い」のこもったプレゼントだからです。

サンタクロースに頼むプレゼントは、ただのプレゼントではありません。それは、普段はちょっと親にはおねだりはできない、特別なプレゼントなのであり、こどもたちがサンタから受け取るのは、プレゼントだけではなく、サンタからの「特別な思い(愛)」ということになるのです。

そして、もう一つ大事なことは、サンタからのプレゼントは、「いい子にしていたらもらえる」という条件がついている、ということです。
結局は、こどもがどんなふうにしていても、プレゼントはもらえるわけですが、この「条件がついている」ということが、実はとても重要で、この条件つきゆえに、こどもにとってプレゼントをもらえたということは、「サンタクロースが自分のふだんの行いを認めてくれて、望みをかなえてくれた」ということであり、もう一つさらに重要なのは、「サンタという神のような目に見えない存在が、いつも自分のことを見守ってくれているんだ」という、こどもにとっての、「この世界に対する信頼体験(愛を感じる体験)」ができるということなのです。

親以外にも、そしてむしろ、親以上に自分のことを思い、いつも見てくれている存在が、目に見えないけれど、いるのかもしれない。
こどもの心に、そういう大きな守り手のイメージを育てることができるのが、サンタクロースのすごいところなのです。

サンタクロースからのこどもたちへのプレゼント。
それは生身の親を越えるものからの愛であり、こどもにとっては、「自分は世界から愛されているのだ」という思いにつながります。
そういう見えない大きな愛に包まれて、こどもはまた次の一年を過ごしていくことができるわけです。

こどもがサンタを卒業するとき、愛が引き継がれる

そして、ここまでは、サンタの物語の前半にすぎません。
重要なのは、こどもたちは、いつの日か、サンタクロースはいないことに気づき、サンタを卒業する日が来るということです。

それは、だいたい、小学校3,4年生くらい(9,10歳くらい)からのことが多いのではないかと思うのですが、それは心の発達段階でいうと、前思春期の始まりの頃になります。

その頃はちょうど、それまでは心理的に親の中で守られていたこどもたちが、親から離れて、親の外に出て、「自分」というものを生き始める時期で、言われたことをそのまま受け取るのではなくて、自分の目で見て、自分のあたまでいろいろなことを考えはじめる時期にあたります。

「親はサンタがいるというけれど、そんなのおかしいんじゃないか?」と思い始めるわけです。

うちの次女は小4のときに、「あのプレゼントを結んであったヒモは、前にうちにあったやつだ」と気づき、長男は小5のときに、「世界中を回るにはマッハのスピードじゃないと無理なわけだから、いくらサンタがすごい人でも、体が耐えられへんと思う」と言って、理詰めでサンタを卒業していきました。

サンタクロースが、本当はいないということに気づく。

それは、こどもにとってはある意味でとてもショックなことではありますが、それは、これまで自分はずっと気づかないままに、親から愛を届け続けてもらっていたことを知る、ということでもあります。

自分はこれまでずっとサンタクロースに感謝してきたのに、親はそんなこととは関係なしに、見返りを求めない「無償の愛」を届けてくれていたのだ、と。。。

そこには、さかのぼって返したりすることのできない、愛の蓄積があります。そしてそれが、次の愛をつないでいく原動力になると思うのです。

「サンタなんかおらへんし。サンタはとうちゃんなんやろ?」

こどもたちは、そう言います。

でも、その言葉の向こう側に、わたしたちは、言葉にならない愛の引継ぎ(伝承)というものが、たしかに行われたことを感じるわけです。

「今度はわたし(僕)がやるから、いままでありがとう。」

こどもたちは幻滅の言葉を吐くと同時に、無言でそうつぶやいているのではないでしょうか?

こどもがサンタを卒業するとき、こどもの心の中には、次に引き継ぐべき「愛」が宿っている。

多分きっと、そうなのではないでしょうか?

こどもたちの心に、そして、こどもたちがビックリしてよろこぶ顔が見たいがために、わざわざ手をかけてプレゼントを隠す大人の心に、「愛」を育むための一人の架空のエージェント(代理人)。それがサンタクロースなのではないでしょうか?

僕はそう思うのです。

サンタクロースがわたしたち親子にプレゼントしてくれるもの。

それは「愛のレッスン」というものなのであり、そのレッスンが終わったとき、サンタはわたしたちのもとに「愛」を残して、静かに去っていく。

そういうことなのではないでしょうか?


去年の我が家のクリスマスには、サンタクロースはやってきませんでした。
でもそのかわりに、長男には初めての彼女ができて、クリスマスデートに出かけていき、家では二人の娘たちが、クリスマスケーキを作ってくれました。

サンタさんは17年間のつとめを終えて、心の中で、とてもうれしいと思いました🎅

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