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梅酒という名の「ほんのり梅の風味がする水」

とてもお世話になった方と、年に一度お食事会をしている。
ドリンクメニューを見て、その方と夫は瓶ビール。ビールが苦手な私は、にごり梅酒の水割りを頼んだ。

乾杯して飲んだ瞬間、あれ?と思った。
ほんのり梅の風味がする水だったからだ。
グラスの底には梅の果肉が少しだけ沈んでいる。
とても細長いおしゃれなグラスに注がれていたので、かき混ぜ忘れて、下の方が濃いのかな……と思いながらグラスを揺らし撹拌させながら飲み進めた。

けれどその梅酒はどれだけ飲んでも、ほんのり梅の風味がする水だった。
おそらく梅酒を入れ忘れたのだろうと、初期の段階で気づいていたけれど、隣で美味しい美味しいと言いながらビールを飲んで、楽しく食事をしている2人の手前、水を指すようなことは言いたくなくて、結局最後まで何も言わずに店を出た。

たった一杯の梅酒。
一年ぶりの外食とお酒だったので、楽しみにしすぎてたのもあるけれど、そんな些細なことがとても悲しくて、でも誰にも言うことができなかったので、帰ってきてから、人格分析が趣味の長男に話をきいてもらった。

「こういう時、長男なら言う?言わない?」
「僕だったら、お酒一杯くらいなら言わないかな」
ちょっと意外だった。長男の性格なら、空気など読まずに自分の意見をさらっと言うのかなと思ったのだ。
よくよく訊いていくと、いろいろ面倒だから言わない、とのことだった。長男はお酒が特に好きってわけでもないというのもあるのかな。

「お母さんはその場の雰囲気壊したくなくて何も言えなかったけど、こういう時、言うのと言わないのと、どっちが正解なんだろうね。言える人はさらりと言って、作り直させたりしそうだよね」
と訊いたら、

「悩まないのが正解じゃない?」

と、さらっと言う長男。
うわあ!ほんとだ!笑
たかが梅酒一杯で、ずっとうじゃうじゃ悩んでいるこの状況の方が不正解だ!笑

自分ではたどり着けない思考を教えてくれるから長男との会話は本当に楽しい。
自分のダメな部分は変えていきたいなと思っているけれど、人ってそんな簡単に変わらないよという長男。それもそうなんだよね。
自分だけが我慢すれば、という部分を変えたいと思っているけれど、なかなか変われそうにない。けれど、どうでもいいことをずっと悩んで思考を奪われてしまう、こっちの方を早くなんとかしたいなと思ったのでした。


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