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現代君主制の希望の星? 世界で相次ぐ「伝統的首長」の復権

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©BensonIbeabuchi(CC BY-SA 4.0)を改変

はじめに:消えゆく君主国

 昭和54(1979)年4月11日に、日本社会党所属の衆議院議員・栂野泰二が第一次大平内閣の総理府総務長官・三原朝雄に次のように問うている。

 ……世界歴史の大勢は、絶対権力を持っておれ、あるいはイギリス型であれ日本型であれ、ともかく君主制と名のつくものはなくなっていく傾向にある、こういう傾向はお認めになりませんか。

第87回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 昭和54年4月11日

 かつて、世界の大部分は君主の治める地であった。だが、20世紀に至り、ヨーロッパでは二度の世界大戦の影響もあって共和革命が続発、さらに欧州植民地のほとんどが共和国として独立したこともあって、君主国は少数派に転落してしまった。

 20世紀の共和制移行ラッシュは、1910年、ユーラシア大陸の最西端に位置するポルトガル王国より始まった。

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ポルトガル共和革命の寓意画

 ポルトガル革命の2年後の1912年には、中国・清王朝が辛亥革命によって崩壊した。1914年にはサライェヴォ事件が発生、ヨーロッパの歴史的な多くの君主制に破滅をもたらす第一次世界大戦に至った。

 大戦中の1917年、最初にロシア帝国が倒れた。大戦が終結した1918年にはドイツ帝国とオーストリア=ハンガリー帝国が瓦解し、数年遅れて1922年にオスマン帝国が滅んだ。ロマノフ家、ホーエンツォレルン家、ハプスブルク=ロートリンゲン家、オスマン家といった世界史上屈指の名門君主家の数々が、相次いで玉座を喪失したのである。

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