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冬のつがるで見つけた奇跡のじさまたち

去年の10月から地域おこし協力隊として赴任してから早いことでもう三か月。とうとう本格的な冬真っ只中である。

当たり前だが青森の冬は私が育った関東よりもずっと厳しい。

寒く、吹雪で前は見えなくなる。家や車に雪が積もりしょっちゅうおろさなくてはいけない。雪が邪魔して道は狭くなり、道路は冷たい風で凍りツルツルガタガタに。

ただでさえ慣れない車の運転なのに、冬は一層のこと神経をすり減らす。

地元の人と話をしていると

「土手から落ちて車が一回転した」

「吹雪で前見えねえくて、雪で車は滑るし仕事来るのに命がけだ」

「朝から2時間雪かきしてもう帰りてぇ」

という明るく話してはいるが、冬の話題といえば天気か車の運転のことばかり。「北国の冬って他に良いことないんだなあ」としみじみと感じた。

ここ中泊町周辺は、県内でも出稼ぎ率が一番高かったという。冬は人がおらず、白一色で、しばれて、本当に寂しかったと聞いた。

そうやって毎年厳しい冬を越してきた地元の人たちは私よりもずっとたくましく見える。




そんな厳しい冬を乗り越えてきたじさまたちは私の想像を超える進化を遂げていた。

ある朝、夜の間に雪が降り積もり朝から吹雪いていた。

その日用事があった私は家を出て道を歩いていると、丸く膨れ上がった頭の下に目がある生き物に遭遇した。

人の二倍以上の大きさの頭で、二分の一の速度で動いていた。カモシカよりも凛々しく、わさおより、愛らしいこの生物はもしかして。

「こんなところで宇宙人との遭遇!?」

驚き一瞬体が硬直した。

エイリアンじさま


しかし、落ち着いて見てみれば普通のじさま科じさま目のじさまであった。

ニット帽の上にフードをかぶっているせいで頭が何倍にも膨れ上がり、マスクで顔がほとんど隠れていた。手にはしゃふろ(スコップ)をもち、冬季正式種目の雪かきを行っていた。

雪かきというのは見た目よりもずっと大変な仕事である。

毎朝、毎晩、毎時、一銭も入らなくてもやらなくてはいけない。

このじさまは頭をもふもふのダウンジャケットで包み込み、風が入る隙間を徹底的になくすことによって雪かきに専念出来ていたのである。

一瞬いっぱんだだんた(おかしくみえる)ファッションも、冷たい風の吹く冬の厳しさを乗り越えるために洗練されたスタイルなのだろう。

そう思うとさすが津軽で暮らすじさまは鍛えられ方が違うなと思う。


またある日。

今度は太陽が出て天気の良い日である。雪が積もって光が反射し非常に眩しい。

住宅街を運転していると目の前から一人のじさまが歩いてきた。

私はシュワルツェネッガーを見た時と同じ衝撃を覚えた。「ここはわのけんどだ!(ここは私の道だ)」と言わんばかりに軽トラ2台分の幅をがに股で歩いている。

スキー用のゴーグルが顔の3分の4ほど覆い、その堂々とした佇まいはまさにターミネーターそのものであった。

ターミネーターじさま

じさまが堂々としているのも厳しい冬で鍛えられた故であり、スキー用ゴーグルをかけるのも鋭い光の反射から目を守る故なのである。


ファッションとは日々を生き延びることなのだとじさまたちから教えられた。厳しい冬をどうにかして越えるためにじさまたちは新しい進化を遂げた。

冬だと心にゆとりが無くなりだんだんと周りが見えなくなってくるが、冬限定じさまを探すためにすこし心にゆとりを持つことも大切である。

まだ二種類しか発見出来ていない冬限定じさま。

これから三月にかけてどんなじさまと遭遇することが出来るか楽しみだ。



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