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【実例付】Chat-GPTの使い倒し方 08[ プロンプト入力26の原則]を読み解く⑦強調したいことは何度も

 大規模言語モデル(LLM)とのインタラクションを最適化するための「26の原則」モハメド・ビン・ザイード人工知能大学 (MBZUAI) の研究者グループが発表したこの原則の補足説明、今回は⑱からです。



⑱繰り返しの使用:特定の単語やフレーズを複数回使用→◎強調したい単語を、何度も繰り返し入力

 Chat-GPTをはじめとした生成AIに文章を作ってもらう、絵を描いてもらうとき、特定の「何か」を強調したい時がありますよね。

 その場合、強調したいことを、単語、フレーズとして、プロンプトの中に複数入れてみてください。そう、何度も入れるのがポイントです。

【実例】絵を描くときのプロンプトの比較

 例えば、「AIと人の共存社会の絵」を描いてもらうとします。

 ここで人とAIが「仲良く」接している感じを出したい場合は、プロンプトの中に、何度も「仲良く」という単語を入れると効果が出ます。

1回の場合

 試してみましょう。まずは、強調しない場合(「仲良く」を1回だけ使った場合)


「AIと人が仲良く共存する社会の絵を描いてください。AIはロボットで表現し、人と話をしたり、人と遊んだりしている、AIと人が共存していることを象徴する絵を描いて下さい。」

GPT4

なにもしない場合の絵

 次に、人とAIが仲良く共存することを強調したいため、「仲良く」という単語を、今入れたプロンプトに複数回、入力してみましょう。

複数回の場合



「AIと人が仲良く共存する社会の絵を描いてください。AIはロボットで表現し、人と仲良く話をしたり、人と仲良く遊んだり、している、AIと人が仲良く共存していることを象徴する絵を描いてください。」

GPT4

「仲良く」を何度もプロンプトに入れた絵

 最初の絵と比べて、人とAIの「仲良く」感が出ていますよね。

 このように、何か強調したい場合は、とにかく繰り返し入力することが有効です。AIは「しつこいなぁ、わかってるよ~」などとは言わず、嫌な顔をせずに淡々と作業してくれますので 笑。


⑲思考の連鎖:中間ステップを生成し、事例を組み合わせる→◎初心者にも理解しやすい回答に近づける

 例えば、「量子コンピューターって、よくわからないんだよね。あなたは詳しそうだから教えて」と質問されたとしましょう。

 これって意外に難しいのです。

 なぜなら、そもそも相手に「量子」や「量子力学」の知識がなければ、まずそこから伝えないと、量子コンピュータの説明ができませんよね?

 それに、難しいことを説明するには、「例えばね...」といった事例をあげて説明するほうが、理解されやすいですよね。

 実は、生成系AIにとっても同じことなのです。「量子コンピュータについて教えて」と言われたら、量子コンピュータとはXXX...という文献を引っ張ってきて回答しがちです。

 でもその回答に、そもそも「量子」とはね、などという説明は入らないでしょうから、難しくて、よくわからない説明になってしまいます。

【実例】GEMINI Advancedを使った「思考の連鎖」比較

 これについても、試してみましょう。ちょうど昨日、GEMINI Advancedという、GoogleのChat-GPT4を超えると言われる待望の新AIが有料版で使えるようになったので、さっそく使ってみます。
GEMINI Advancedについては別途記事を書きます

中間ステップなしの場合


「量子コンピュータとは何ですか?」

GEMINI Advanced
「量子コンピュータとは、量子力学の原理を利用して計算を行うコンピュータです。従来のコンピュータとは異なり、量子ビットと呼ばれる単位を用いることで、並列計算を高速に実行することができます。

量子コンピュータの特徴

  • 量子ビット: 量子ビットは、0と1の両方の状態を同時に持つことができます。これは、従来のビットが0か1のどちらか一方しか持てないことと対照的です。

  • 重ね合わせ: 量子ビットは、複数の状態を重ね合わせて持つことができます。これは、量子コンピュータが従来のコンピュータよりも多くの情報を処理できることを意味します。

  • 量子もつれ: 複数の量子ビットは、互いに絡み合った状態になることがあります。これは、量子コンピュータが従来のコンピュータでは不可能な計算を実行できることを意味します。」

 なるほど...量子工学をある程度知ってれば、理解できる説明ですが、そうでない人には、聞いても、「?」という感じの答えですね。

中間ステップありの場合

 では、GEMINIに「中間ステップを生成し、事例を組み合わせる」と指示して、答えてもらいましょう。


「量子コンピュータとは何ですか?「中間ステップを生成し、事例を組み合わせる」というアプローチで答えてください。」

GEMINI Advanced
「量子コンピュータとは?

中間ステップ
1.量子力学とは?
2.量子ビットとは?
3.量子コンピュータのアルゴリズムとは?

事例
1.量子コンピュータを用いた化学物質シミュレーション
2.量子コンピュータを用いた金融リスク分析

回答
1. 量子力学とは?
量子力学は、原子や素粒子などの微小な世界を支配する物理学の一分野です。量子力学では、物質やエネルギーは波と粒子の両方の性質を持つとされます。

2. 量子ビットとは?
量子ビットは、量子コンピュータにおける情報単位です。従来のビットが0と1のどちらか一方しか持てないのに対し、量子ビットは0と1の両方の状態を同時に持つことができます。

3. 量子コンピュータのアルゴリズムとは?
量子コンピュータのアルゴリズムは、量子力学の原理を利用して設計された計算手順です。従来のアルゴリズムとは異なり、量子コンピュータのアルゴリズムは、量子ビットの重ね合わせや量子もつれを利用することで、並列計算を高速に実行することができます。

4. 量子コンピュータを用いた化学物質シミュレーション
量子コンピュータは、化学物質の構造や性質をシミュレーションするために使用することができます。従来のコンピュータでは不可能な複雑な計算を実行することで、新しい薬や材料の開発を加速させることができます。

5. 量子コンピュータを用いた金融リスク分析
量子コンピュータは、金融市場の分析に使用することができます。従来のコンピュータでは処理できない膨大なデータを分析することで、金融リスクをより精緻に評価することができます。

まとめ
量子コンピュータは、量子力学の原理を利用して計算を行う新しいタイプのコンピュータです。従来のコンピュータよりも多くの情報を処理できるため、創薬、材料開発、金融、人工知能などの様々な分野で革新をもたらすことが期待されています。」

 そう、「まとめ」以降が回答です。

 しかしその前段に、量子力学とは何か?から順を追って説明してくれているし、利用事例も説明してくれています。これなら、初心者にもそれなりに、理解してもらえる回答になってるのではないでしょうか。

「いい回答」を得るために有効

 実は、「中間ステップを生成し、事例を組み合わせる」というアプローチでのプロンプトは、生成AIにとってもいい回答をするのに有効なのです。

 というのも、生成AIは、質問をそのまま回答しているわけではありません。質問自体が理解できない場合は、回答する際に、質問の意味を分解して、Step By Stepで答えようとします

 Step By Stepについては以前説明しました。

 生成AIにとって、難しい質問に対して、どのように考えて、どう答えるのかは、やっかいなことです。

 そこで、「中間ステップを生成し、事例を組み合わせる」というアプローチで答えて、と指示されれば、中間ステップ、すなわち、回答を段階的に、細切れにして考えていく、というアプローチを取り出します。

 同時に、事例を組み合わせるというプロンプトを書くと、回答だけでなく、事例、この場合だと、量子コンピューターの利用事例を引っ張ってきて、回答に組み入れます。

 順を追って、少しずつ、段階的に、例も挙げて、説明するように指示する。そのとおりの手順で考え、回答すれば、わかりやすい回答をするのも当然です。

【実例】Chat-GPT4にも聞いてみた

 本当にそうなのか、念のため、今度はChat-GPT4に聞いてみましょう。


「質問されたときに、「中間ステップを生成し、事例を組み合わせる」というアプローチで考えてほしい、と指示されたら、そのような指示がないよりも、より良い回答ができますか?」

GPT4
「中間ステップを生成し、事例を組み合わせる」というアプローチは、特に複雑な問題や分析を必要とする質問に対して、より構造的で深い理解を促す方法です。この方法は、問題解決のプロセスを明確にし、より具体的で詳細な答えを導き出すのに役立ちます。指示がない場合に比べて、以下のような理由でより良い回答ができる可能性があります。

  1. 構造的な思考: 中間ステップを生成することで、問題を小さな部分に分解し、それぞれを個別に解決します。これにより、複雑な問題でも取り扱いやすくなり、全体の理解が深まります。

  2. 具体例の利用: 事例を組み合わせることで、理論や概念を実際の状況に適用する方法を示すことができます。これにより、理解が深まるだけでなく、記憶にも残りやすくなります。

  3. 段階的な解説: 中間ステップを経ることで、最終的な答えに至るまでの論理的な流れを明確に示すことができます。これは、質問者が答えの背景や理由を理解するのに役立ちます。

  4. 適応性と柔軟性: 特定の事例を組み合わせることで、異なる状況やコンテキストに答えを適応させる能力が高まります。これは、より幅広い質問や状況に対応できるようになることを意味します。

簡単な質問や即答を求める状況では、直接的な答えの方が適切な場合もあります。したがって、この方法を適用するかどうかは、質問の性質や状況に応じて判断することが重要です。」

 ということで、生成AI側も、この「中間ステップを生成し、事例を組み合わせる」というプロンプトは、複雑な質問においてはよりよい回答ができると言っています。

 ですので、特に複雑な事項について聞きたい際には、「中間ステップを生成し、事例を組み合わせる」を使うことは有効です。試してみてください。

 次回に続きます。

大規模言語モデル(LLM)とのインタラクションを最適化するための「26の原則」

①礼儀を省く:「お願いします」などの礼儀用語は不要
②対象者を明示:「専門家向け」など返答を受ける対象者を明示
③複雑なタスク分割:複雑なタスクを簡単なプロンプトに分ける
④肯定的指示の使用:否定的な言葉ではなく肯定的な言葉を使用
⑤明確化のための指示:「簡単な言葉で」「中学生にも分かるように」等
⑥報酬の提示:「良い解答には報酬を出す」と示す
⑦事例を提示:既存の事例を使用
⑧プロンプトのフォーマット:###Instruction###」で始め、適宜「###Example###」や「###Question###」を含める。
⑨明確なタスク指示:「あなたのタスクは」と指示。
⑩ペナルティの提示:「ペナルティあり」と伝える。
⑪自然言語による回答指示:「自然言語で回答して」と指示。
⑫先導的な言葉の使用:「ステップバイステップで考えて」と指示。
⑬偏見の排除:「偏見を持たず、ステレオタイプに依存しない」と指示。
⑭ユーザーとの対話促進:問題解決までモデルに質問させる。
⑮テストを含む指導:テストを出してもらい、自分の理解度を試す。
⑯モデルへの役割割り当て:モデルに特定の役割を割り当てる。
⑰デリミターの使用:特定の区切り文字を使用。
⑱繰り返しの使用:特定の単語やフレーズを複数回使用。
⑲思考の連鎖:中間ステップを生成し、事例を組み合わせる。
⑳出力プライマーの使用:期待される出力の始まりでプロンプトを終える。
㉑詳細なテキストの作成指示:「詳細に書いて」と指示。
㉒スタイル変更の防止:「スタイルを変更しない」と指示。
㉓複数ファイル対応のコーディングプロンプト:複数のファイルにまたがるコーディング作業の効率化のために、自動的に新しいファイルを作成し、生成されたコードを適切なファイルに挿入するスクリプトの作成を提案。
㉔特定の言葉で続ける:「与えられた言葉で完成させて」と指示。
㉕モデルの要件の明示:コンテンツを制作するためにモデルが守らなければならない要件を、キーワード、規定、ヒント、指示などの形で明示。
㉖サンプルに基づくテキスト作成:サンプルと同じ言語で書くよう指示。


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