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vol.8 ガッチャマンの歌詞を全部知ってる人に私はなれているか?

「かもめ食堂」という映画がとても好きです。
フィンランドを舞台とした2006年公開の日本の映画。
小林聡美さん主演。
フィンランドで、寂れた食堂を営む1人の女性が
人と触れ合いながら、食堂を満員御礼の店にするまでのお話。

小林聡美さん演じる主人公の女性はまず映画の冒頭で、
ニャロメのTシャツを着た日本かぶれのフィンランド人の青年と話をする。
青年は片言の日本語で
「ガッチャマンの歌詞、ワカリマスカ?」と質問をする。

女性は「だれだ、だれだ、だれだ〜♪」まで出てくるがその先が出てこない。
悶々としながら街中を歩き、
図書館で片桐はいりさん演じる日本人女性と出会う。
開口一番、「あの、ガッチャマンの歌詞って分かりますか?」と聞く。

片桐はいりさんは、驚きながらも
「だれだ、だれだ、だれだ〜、空のかなたに踊る影、
白い翼の、ガッチャマ〜ン。
化学忍法火の鳥だ〜。♪」と歌いながら丁寧に歌詞を全部、教えてあげるのである。

この一連のやり取りがものすごく好きで、
その後、片桐はいりさん演じる女性もその食堂の従業員として働くことになるのだが、
「何でこんな初対面の私にそこまでよくしてくれるんですか?」片桐さんが聞くと、小林聡美さんは
「ガッチャマンの歌詞、完璧に覚えている人に悪い人はいませんからね。」と何食わぬ顔で返す。

そんな損得、一切関係ない人間関係の良さ、
何気な〜い気の抜けた会話と
フィンランドの素敵なお国柄も相まって、
最高に大好きな映画です。

2つ思う。
①「私は、ガッチャマンの歌詞を聞かれた時に、紙とペンを持って、歌いながら書いてあげられる親切心を持ち合わせているか?」

②「もしも私が、フィンランドでガッチャマンの歌詞がどうしても気になる時に、初対面の日本人女性にガッチャマンの歌詞を素直に聞けるかどうか?」

答えは恥ずかしながらどちらもNO。
残念ながらそんなコミュ力を持ち合わせていない。
この映画の登場人物は、皆コミュニケーションの達人なのだ。

①のシチュエーションの時、私がガッチャマンの歌詞を聞かれたのなら、
そもそも自分が「ガッチャマンの歌」の全ての歌詞を
網羅していないというのはあるのだけど、知っていたとしても私は安易にスマホで調べて、
それをそのまま見せるだけで留まっていただろう。

しかし、片桐はいりさん演じるミドリさんは自分の鞄の中から紙とペンを出し、歌いながら全て書き出すというこれ以上ないアンサーを何食わぬ顔でやってのける。
こんなにも完璧な形で疑問を解消させてくれる人が目の前に急に現れたら、もうその人に全ての信用を預けたい。
本当になんてことないワンシーンなんだけど、
そこにはコミュニケーションにおける大切な、"与えること"の重要性がひっそりと忍ばせてある気がする。

②の、もしも自分が「ガッチャマンの歌」の歌詞がどうしても気になりすぎて
道を歩きながら「だれだ、だれだ、だれだ~♪」だけが頭の中をエンドレスリピートしてしまっている時。
(おそらくこの物語の登場人物は皆、携帯電話を持っていない設定なのかと思います。)
私だったら、人に聞く勇気もなく、悶々としながらその場をやり過ごすだろうと思う。

小林聡美さん演じるサチエさんは、開口一番に
「あの、ガッチャマンの歌の歌詞ってご存じでしょうか?」
素直に聞く事ができるというのは、なかなか私にはできない。
そして、「そのお礼に!」と言って自宅へ招き入れ、食事を振る舞う。
ここのやり取りも淡々と描いているけれど、普通にすごい。

一連の会話はこうだ。

サチエ「こちらにはいつまでいる予定ですか?」

ミドリ「まだ決めてなくて…」

サチエ「あの…ガッチャマンのお礼にと言っては何ですけども、もし良かったらウチに泊まりに行きませんか?」

ミドリ「え?」

ミドリさんは日本での生活を全て投げうってフィンランドに来ているわけだから何か事情があるのだということは想像できる。
(その理由は最初から最後まで明かされない。)

そんな事情を察したのか、それともミドリさんから何か光るものを感じたのか、真意は分からないが、
"家に招く"という発想に迷いなく行き着く彼女の懐の広さ。

そこまで人のことを信用することができるか。または、人の事情を黙って汲んで助けてあげる慈悲の精神を持っているか?問われている気がする。

この映画にはそんなコミュニケーションにおいての大切な"与える事"と"信じる事"の重要性が巧妙に忍び込んでいる。
(忍んでいるからこそ、説教臭さがなくてまたそれがいい)

この映画には人生を生き抜く上で大切な、
人との程よい繋がり方(また、それ以外の何か)が
学べて
他にももっと紹介したい言葉があるのだが、
また別の機会で書きたいと思う。
胸を張っておすすめできる映画です。

この前、千葉の勝浦に1人で旅行へ行った。
何もない道を1人で歩いていたら、1台の車がこっちに
やってきて、車内からおじいさんが尋ねてきた。

「○○の住所の団地に行きたいんだが、カーナビがなくて行き先が分からないんですけど、お兄さん分かりますか?」

いつも通り、自分の携帯を出して地図アプリを開いた。
(いや、違う。これからおじいさんはそこの団地へ行くのに、この私の携帯を見せても場所を覚えていられる訳がない。)
と、その時瞬時に思って。

おじいさんのスマホを借りて、アプリで現在地を
認証して団地までの行き先を表示してあげた。
スマホから行き先が告げられる。
\ポン/ 「この先、500mを道なりです。」

「お〜、ご親切にありがとうございます!」と言って、まっすぐ車を走らせていった。

いや、ナビなしで逆によくここまで来れたな。
何はともあれ、いい事したな〜。ふふ〜ん♪ なんてことを思って。

こういうのをコツコツと積み上げていきたいなと思った。
なんて事ないそういう話でした♪

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