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アフリカビジネスモデル図解vol.03「RomeSmart/チュニジア企業がローミング市場に革命を起こす」

アフリカで会社とNPOやってます、ナイケルこと内藤獅友(Naikel0311)です。


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アフリカビジネスモデル図解とは、アフリカ歴6年目で会社とNPOを経営している僕が、アフリカの主にスタートアップを中心にビジネスモデルを図解化し、そのユニークかつビジョナリーなイケてるアフリカ起業家をご紹介するシリーズです。

第三回は「RomeSmart」というチュニジア発のスタートアップ企業です。

ここに全てまとめたマガジンがございます。


登場人物(企業・市場)は大きく分けると4つです。

RomeSmart社海外通信会社国内通信会社、そしてユーザーです。


ビジネスモデル解説の前に

お金とサービスの流れをご説明する前に、「ローミングについて」「ローミング業界について」「RomeSmartのサービスについて」をお話しなければなりません。


ローミングについて

まずはローミングについてよく分からない方はこちらをお読みください。

ローミングは、携帯電話やPHS、またはインターネット接続サービス等において、事業者間の提携により、利用者が契約しているサービス事業者のサービスエリア外であっても、提携先の事業者のエリア内にあれば、元の事業者と同様のサービスを利用できることをいう。

出典:ウィキペディア

まだピンと来ない方のために、例を出しますね。

Docomoを使って電話をしている人が、アフリカに行って電話をしたい場合、Docomoの回線はアフリカには飛んでいないですよね?

もちろん現地で通信会社と契約すれば良いのですが、SIMフリースマホなどない場合は、スマホごと買い換えないければいけません。しかも、アフリカ滞在は今日だけで、電話したいのも今だけだったとします。買い替えはもったいないですね。

そうなったときにローミングという仕組みを使うことで、Docomoがそのエリアの別通信会社と提携をしていれば、そこの回線を使わせてもらうような処理をして、一時的にその回線を経由して、Docomoとの契約のみで電話が出来ちゃう。これがローミングになります。


ローミング業界について

世界にはDocomoのような通信会社が800社以上あると言われています。

国が200カ国ほどなので、1カ国あたり4社ほどある計算ですね。

ローミングは、一般的には通信企業同士が提携をして、それぞれの企業がローミングをする顧客の処理を、アナログな方法で(Excelなどを使って)行っているようです。大企業は自動化や効率化が進んでいる中で、中小企業はこうした手作業の方法で処理をしているため、人件費を含めた管理費が高いので、ローミングした際の通信料金が高い要因ともなっています。

その為、ローミングを多用する人は少なく、例えばアフリカだと国をまたいだらその国の通信会社のSIMカードを購入して使うので、アフリカ中で仕事をしている場合は、大量のSIMカードを所有する必要があります。

ただし、この記事のようにEU内ではローミング手数料を撤廃するなどの対策がある為に、同じSIMでローミングをして利用する人も増えているという事例もあります。


RomeSmartのサービスについて

RomeSmartは、特に中小企業に向けて、ローミング処理を自動化&効率化ができるシステムを提供することで、労働力とコストがかかっていたローミング業務を大幅に改善することを可能にします。

RomeSmartは、最初のシステム導入コストと、SaaSという仕組みで毎月継続的にシステム利用料を通信会社から得て、経営を行っています。

SaaSは、必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェアもしくはその提供形態のこと。一般にはインターネット経由で必要な機能を利用する仕組みで、シングルシステム・マルチテナント方式になっているものを指す。

出典:ウィキペディア


お金とサービスの流れ

では、お金とサービスの流れを図解を使ってご説明しますね。

①超効率的ローミングシステムをRomeSmart社が通信会社に導入・提供します。その際にシステム導入費が売上として入ります。

②ローミングシステム利用料は、SaaSで毎月継続的に通信会社からお金をもらえるようになっています。

③とある通信会社に入っているユーザーが、その範囲外でローミングサービスを利用します。

④ローミングを利用したい顧客を抱える通信会社は、該当するエリアで提携している通信会社の回線を使わせてもらいます。回線を提供した会社からきた請求を、ユーザーと契約している通信会社が代行で払う形で、その後③ユーザーに請求をします。


RomeSmartの儲かる仕組みとビジネスモデル

RomeSmartの儲かる仕組みは2点あり、その為に導入しているビジネスモデルは2つあります。

1つ目が「物販モデル」です。

物販モデルとは、シンプルに自社の商品やサービスを消費者にダイレクトに提供し、収益を得る仕組みです。ラーメン屋さんなどがこれにあたります。

①であるように、超効率的なローミングシステムを導入するためのサービスを通信会社から頂くので、まずはシンプルに自社システムを販売したことになります。


2つ目が「継続モデル」です。

継続モデルとは、月額課金などで毎月のサービス料金を回収していく仕組みです。日本の携帯電話サービスや、メルマガサービスなどがこれにあたります。

①では導入しただけで、システムの利用料は別となります。②のように毎月SaaSという形で月額利用料を通信会社から頂くことを条件に、システムを使えるようにします。


色々この会社のことを調べてみますと、このシステム自体がまだ先進的なものであるので、よっぽど先見性のある企業でない限りは、自ら進んでこのシステムを導入しようとはしません。

その為、①で得る利益を無視した「無料体験」をしてもらうことで、そのサービスの良さを認知してもらい、「継続モデル」で収益を上げていくというのが、現在のRomeSmart社の儲けの仕組みとなっているようです。

今後、多くの企業が導入したことで他の企業が自ら加入したいという状況になった時に、導入費で儲けたり、「毎月のサービス料金を値上げ」する、あるいは、「既存料金は変えずに、さらに便利になるプレミアムモデルなどを提供する」などして、利益を増やしていくのではないでしょうか。


創業者とビジョンの紹介

創業者のMehdi Trikiさん(写真左)はチュニジア人です。

彼は、アメリカの通信会社やチュニジアの通信会社で働いていた中で、ローミングの非効率性や、それによるコスト高の問題を解決したいと思いました。

そこで、RomeSmart社を立ち上げ、通信中小企業でも導入できる超効率型ローミングシステムの開発に成功し、チュニジアだけでなく、世界中のローミングサービスの効率化と通信費削減を目指しています。

最初の方はサービスの普及や資金調達にも苦労をしたようですが、マイクロソフトとの事業開発による提携が決まってから、現在は37カ国29企業にシステムの提供をしています。近年では約倍の50企業への導入を目指しています。

市場も、今後ローミング価格の削減により利用者が増える見込みで、2015年の570億ドルから2018年は900億ドルの市場規模になる予定で、RomeSmart社にとっては追い風となっています。

しかしながら、世界を市場としていることと、通信会社自体が24時間体制で運営されている為、カスタマーサポートなどは常に24時間フル稼働で行っている為に、Trikiさんはもちろん、社員全員がビジョンに強く共感していなければ、非常に辛い労働環境にあると言っています。


最後まで読んでいただきましてありがとうございます。

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