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【読書録】流浪の月

はじめに

 はじめて小説についての記事を書きます。2020年本屋大賞を受賞し映画化もされた流浪の月を読みました。本屋大賞のノミネート作品はどれも面白いため、大賞を受賞した本書は一体どんなものかと思い読んでみると衝撃の内容でした。壮絶な人生を歩んでいる主人公たちに、こうも感情移入をさせられるのかと驚きながらあっという間に読了しました。
 読んでいて感じたこと思いつくままに書こうと思います。

善意も人を傷つける

 世間からみれば少女誘拐事件の犯人である文と被害者である更紗。ふたりは互いに思い合っているのにも関わらず、周囲からそれを理解されることはありません。物語は2人の視点で進むため、どうして誰も真実を理解してくれないのか?という感情でいっぱいになります。特に更紗のバイト先の店長である湯村とのやり取りは考えさせられる部分がありました。湯村は自身の経験から本当に更紗のためを思って言葉をかけてくれます。しかし、更紗は善意で言ってくれていると感じると同時に決して自分の気持ちは理解されないとも感じてしまいます。この場面で自分が湯村の立場だったら同じような言葉を更紗にかけると思いました。相手を気遣うという言葉にどこか自己陶酔していないか?と今までの自分の行いを疑いたくなりました。
 

相手の幸せとは何かを考える=多様性

 相手のためを思ってかけた言葉ですら相手を傷つけることがある。ならばどうすればいいのか?と考えると相手の立場だけでなく、人間性に対して理解・共感をする必要があると思います。そしてこの考え方は多様性を受け入れるのに必須の考え方ではないでしょうか。本作はマイノリティの方に関心が寄せられ、多様性が重要視されてきた今の時代を象徴する作品であると感じました。それと同時に今だからこそ多くの人の心を打ち、話題になっているのはないかと思います。もう少し昔に出版されていたらここまで話題にはなっていなかったのではとも感じます。

さいごに

 何かお題に対しての記事を書こうと思ったときに目に留まったのが#多様性を考えるでした。そして多様性という言葉から思いついたのが「流浪の月」でした。理解されない苦しみと分かり合えた時の喜びの両方が非常に繊細に描かれている作品でした。

#多様性を考える


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