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『おはなし』 アルバイト。

はぁ〜、
なんか面白い事ないかなぁ。
毎日毎日、おんなじ、まぁいにち。

学校の帰りに、いつもの肉屋のおばちゃんトコで
「なぁ、おばちゃ〜ん。面白ないなぁ隕石でも降ってこンかなァ〜。」
「ハァ〜⁉️ま〜たぁ そんなアホな事言うてぇ(笑)ントに若い子はなぁ〜。」
私もアンタぐらいの時は毎日そう思ってたわ。
おばちゃんはそう言いながら、
揚げたてのコロッケを3つ袋に入れて渡してくれた。

ふん、違うワ!そう言うんとは違う!
あんな揚げ油まみれのごっつい手したオバハンに、アタシの気持ちなんか分かるわけ…   ん!

ン、うまぁー!コロッケうまぁ! おばちゃん最高‼️


今日のところはコロッケに免じて許したるわ♡



あ〜ぁ、まっすぐ帰りたくない。
こんなダルい日は、叔母さんの家に行くに限る。
独り暮らしの、オシャレな叔母さん。
ママは“ウサンくさい”って言うけど、アタシは叔母さん大好きや。
『占い師』ってそんなに変な仕事かしらね?知らんけど。

ピーンポーン♪「叔母さ〜ん♡アタシぃ!」
「やっぱり来たわねぇ分かってたわよ、お入りなさい。」奥から優しい声
いつもアタシが行くと“来るって分かってたわよ”って言う叔母さん。
小さな頃は、めっちゃお見通しやン!と、ビックリしてたけど
さすがに高校生にもなれば、週“五”で顔を出せば分かって当たり前だって気がつくわ。

「叔母さん♡ハイ、お・み・や・げ!一個づつ♪」
「わぁ〜ん、嬉しい!チィちゃんが持ってきてくれるコロッケは特に美味しいン♡」

独身の叔母さんが色目使う!て勘ぐるおばちゃんと無実のおっちゃんがよく店でケンカしてるから、叔母さんが買いに行くんとコロッケの味とは、関係あるんちゃうかな?占い師なのに、自分のだけコロッケがいつも焦げてるって理由に感づかんとは、叔母さん大丈夫か?
まぁ、占い師だろうと そうでなかろうと、叔母さん大好きやから良いんやけど♡

「叔母さん、お仕事中やったん?(モグモグ)」
「あぁ、(ムグムグ)いいのいいの、今雑誌の占い記事書いてただけだから。(ゴクン)」

占い師の仕事って、色々あるよね。
『個別相談』とか、今取り組んでいるらしい『雑誌の占いコーナー』とか。
叔母さんはその昔、【帯広の母】とか言う有名な(知らんけど)占い師に能力を見出され、弟子になった後、独り立ちして今があるんやて。

近頃、めっちゃ当たるってすっかり有名になっちゃった叔母さんは、大きな雑誌社の占いコーナーで記事を書く事が仕事のメインみたい。
「定期的に収入になるからこのテは助かるわ」よく言ってる。
それでも時々は『個別相談』(高額)も引き受けているらしいけど、いつ行ってもそんなン見た事ないから、不景気の波が占い師の元にも来てるってママがよく言うわけ。
でも、こうやってアタシが持ってったコロッケがお小遣いに化けて戻って来るんだから、そう不景気でもないんちゃうかな?

「ホント、美味しかったわぁ!チィちゃんのコロッケ♡」
お茶でも入れようか? 頂き物のケーキあるけど食べる?
そう言って冷蔵庫に向かって叔母さんが立ち上がった瞬間、

「あ!痛いっ」


急に悲鳴をあげてしゃがみ込んだ。
真っ青になって吐き戻してブルブル震えている。「叔母さん‼️」「き、救急車ぁ!」



叔母さんは結局“盲腸”だった。
「破裂してしまっていました。もうちょっと遅かったら危なかったですよ。」
「ずっと、ベンピしてたから…なんか痛いなぁ。って思っていたんだけど…。」
「まったく!ボーッとしとってからに!ようこんなんで占い師なんてしてられるわ💢」
センセーや叔母さん、それとママの愛ある怒鳴り声を聞きながら
肉屋のおばちゃんが嫉妬で毒を仕込んだんやなくてよかったぁ。とホッとした。

何しろ、手術が大ごとになってしもた叔母さんは長期入院を余儀なくされた。
突如訪れた“非日常”のワクワクが顔に出そうになるのを押さえ込んで洗面所から病室に戻ってくると、ママと叔母さんが揉めていた。

「何を…」「だって…仕事が…」「怒るで…」「もう怒ってるじゃない…」
「二人とも〜、どうしたン?」
「はっ!」「あぁぁ!」そろってアタシの顔を見るママと叔母さん。
やっぱり姉妹なんだなぁ。と、よく似た二人の顔を見比べるアタシ。
「???…何?」

「チィちゃん、バイトしない?」




ガチャ♪

鍵を開ける。
勝手知ったる叔母さんの家だ。

「三週間、三週間だけ 叔母さんの代わりをやってくれない?」
「は?」
「大丈夫!個別の相談の方はしばらくお断りするから難しい事はないわ。ただ雑誌の記事にそれらしい当たり障りのない事を書いてくれれば良いから。ね?お願い💦」
「だって、他の人が書いたってわかったら大変やん!」
「だからよ!チィちゃん以外にこんな事お願い出来ないわ。長期で休んだらこの仕事、もう来なくなっちゃうもの。あー、やっぱり無理にでも退院して…ゔっいだだっ」
「うわぁ!わかった!分かったよ叔母さん、ヤル、やるから安静にしてぇ!」

かくして、アタシは叔母さんのゴーストライターとして三週間だけ記事を書く事になった。



叔母さんは結構な額のバイト料を約束してくれた。
口止め料という意味もあるんかな。

学校帰りにまっすぐ叔母さんの家に寄って、書きかけの記事を完成させていく。
大変かなぁと思ってたけど、
そこはさすがの週五で通って仕事ぶりも見てたから、戸惑ったのは最初だけ
あとは適当にパソコンで書いたら何度か会ったことある雑誌社の人宛に送ってまえば、

ハイ♡OK!

あんなに適当なのに、バレんもんや。



ピーンポーン♪


今週もまた雑誌社のおっちゃんが来た。
「いや〜チィちゃん!こんにちは。先生〜っ!あれ?また先生お出かけですか?お留守番ご苦労さんやなぁ。」
「ハーイ(ニコッ)」
「そや!こないだの先生の占い。これが評判が良くてナ、当たる当たってるってえらいことなんや!久しぶりに見たわ感謝の手紙の山。これお渡ししておいてナ。先生…チィちゃんの叔母さんは凄い人やで。」

雑誌社の人が置いて帰ったケーキをほばりながら 手紙の封を切って読んでみた。

《先生、いつも“雑誌GG”の占いコーナー楽しみに読ませて頂いています。先日書いてありました「落とし物に注意」読んだ翌日に、財布を落とした事に気付きまして。拾おうとしゃがんだ瞬間に落ちて来た植木鉢を避ける事が出来ました。あの時気付かずに歩いていたらと思うとゾゥっとします。先生は命の恩人です。ありがとうございました。》

うっわぁ!なんか凄いこじつけ感満載やねんけど、まあ良かったヤん。
他にも数通、《先生ありがとう》《先生すごい》《先生うれちい》………
………先生って、アタシなんやけど…ね。テキトーなんやけどネ。
まあ、いっか。
叔母さん結構雑誌の記事の仕事抱えてるし……ふう。続き続き。バイトの続き。

今度は〜、あぁ?来年の運勢?またえらいボワッとした範囲の占いやなコレ。
なんや面倒くさくなってきた。
毎日毎日、おんなじコロッケ揚げ続けてる肉屋のおばちゃん。偉いなぁ。

フゥワァ〜!小腹が膨れたら、なんか眠たくなってきたぁ〜 あふぅ〜。
いつも通りテキトーに書いとこ。パソコン作業眠い〜。課題もせぇなアカンのに………

タタッタタタタ タタ タタタ タ タタタ タタタッ タタッタタタタタッ タタ…………    



「チィちゃん、ホントにありがとう!叔母さん助かったわ。」
退院が決まった叔母さんと缶コーヒーでコツン♪と乾杯する。

「こちらこそ、叔母さん元気になって良かったぁぁ!もう疲れてもうたぁ♡」
「入院中雑誌読んでいたわ♪チィちゃん才能あるわよぉ!ね?弟子になっちゃう?」
「イヤだぁ〜!テキトーに書いてただけやでぇ、後半なんか寝ながら書いたわ(笑)」

そしたら叔母さんは、突然目をキラキラさせて

「そうよ!それで良いのよ。寝ながら…つまりトランス状態になって思いつくまま書く事こそが、いわゆる【降りて来た】という事なのよ。先入観や忖度を無視した先に“予言”があるのよ〜」



「ほっふあ〜♡」
今日もおばちゃんの揚げたコロッケは美味しい!

あれ以来、叔母さんの家に行く回数はちょこっと減った。

叔母さんからは本格的にスカウトの連絡がしつこいくらい入ってくる。
入院中にアタシが書いてた占いが、恐ろしいくらい当たり続けているって
ものすごい評判なんだって。

公園のブランコをぶらぶら漕ぎながらコロッケを平らげた。

空が青いなぁ…。



どうしよう…

半分寝ながらうっかり書いちゃったんだよね。



『来春、日本に大きな隕石が落って来る。』って…






空がチカッと光った気がした。



おしまい。





2019年に書いたお話を手直ししました。懐かしいと思い出してくれた方も、初めての方も、楽しんで読んでくれたら嬉しいです😊

ほんなら、またね(^。^)/”



#リメイク

ありがとうございます!楽しく見て、読んで、愉しんでくださったら嬉しいです\(//∇//)\ 🔔出来るだけ気をつけていますがコメントへのお返事を頂いたのに気づけない事があるかもしれません。もしも失礼があったらごめんなさい😅💦