見出し画像

「モラハラめいたお客様」で思い出した一冊 -「『アンコンシャス・バイアス』マネジメント」を読んで

 「アンコンシャス・バイアス」。グーグルが社員教育活動をしたことで注目されるようになった言葉で「無意識な偏見」「無意識の思い込み」「無意識の偏ったものの見方」をさすそうです。
 例えば、血液型で性格を想像する、出身地でアルコールに強いかどうかを想像する、男のくせに・女のくせにと思うというようなものに始まる日常にあふれたもの。

 数ヶ月前に読んだ「『アンコンシャス・バイアス』マネジメント」を思い出したのは、こちらのえりたさんのツイートを読んだのがきっかけ。

 このツイートで描かれている「モラハラめいたお客様」を見て、内も外にも言葉で攻撃をする人を思い出しました。

 2年前の春ごろから他のメンバーとの間に立って3者間での調整をしなければいけない場面で、それまで少し違和感を感じながら気が付かずにいたことに気付き始めました。
それは攻撃する人が何かその人にとって都合が悪い物事に対し、相手にマウントを取りながら攻撃したり、もしくはその人より相手を下と周りに誇示するということ。またそこへの同調を求められること。
間に立つ中で、問題が起こり仕方なく問題について攻撃する人へやんわりと伝えたところ1週間ほど無視されたこともありました。
あの人が悪い、この人が悪い、対象が変わるものの繰り返される構図。さすがにこれは根本解決にならないのではと思うように。
その後、組織変更などを経て、最終的にその二人の間でメンバーは昨年の秋にメンタル不調で休職→退職という結果になんとも言えない気持ちになったのでした。

 私自身も職場でリーダー職を任され、試行錯誤しながらチーム運営をしていた時に「あんたはマネジメントができてない」という言葉などまともに受け止めて凹むことも多々ありました。
ベンチャーの小さな組織の中でマネジメントの良いモデルケースは分からず、もちろん研修など知識として学ぶ機会はなく、「1社しか経験がない」という比較材料のなさとともに「できていない」と強く言われるとまともに受け止めてしまっていたのでした。
 ただ、はたしてリーダーとは力で強引にでもチームを率いることが正解なのか?について短期的には成果が出たとしても持続するかという点で厳しいような感覚もありました。それでも、その自分の感覚には「感覚」だから自信が持てない状態。

 そんなモヤモヤから会社の外を知るプロボノやボランティアの活動に関わったこと、その中で同時並行で3つの「組織」を見ることで、一つではないリーダー像や組織のありようを知り、少なくとも社外でも最低限はその中での役割をチームとして行うことができるという実感と自分の持ち味を活かせる場を得たことで自信を取り戻していきました。
 また今年の1月から起業家でBBT大学教授の斉藤徹さんが主催される幸せな経営とイノベーションを学ぶ「hintゼミ」に参加し、組織の5段階(衝動型・順応型・達成型・多元型・進化型)をはじめとした学びと他の環境で仕事をする受講生の方とのディスカッションの中で、もちろん聞く耳を持って自分を疑う必要はあるけれど、すでに年単位で試行錯誤していたこと、その中で都合の良い人として我慢して個を削るような状態含め、これは明らかに次に進む時だなと客観的な視点を含めて思えたことは大きな転機になりました。

 そんなタイミングに知ったのがこちらの書籍。「最高のリーダーは自分を信じない」というサブタイトルが気になり、手に取りました。

 書籍の冒頭で下のようなアンコンシャス・バイアスによる大きな影響が冒頭に紹介されています。

リーダーが「無意識の思い込み=アンコンシャス・バイアス」に囚われてしまった結果、チームで何が起きているかご存じでしょうか。

リーダーがメンバーの社歴や性別などで能力を決めつけてしまう
ことで、
同じようなレベルの仕事しか任せることができず、メンバーの成長機会が失われていく。結果として、組織としての成長がストップし、業績が上がらない。

リーダーの思い込みによる評価
で、
メンバーのモチベーションが下がっていく。適正な評価が行われないことで、前向きになれず、やりがいを失い、新たな仕事に挑戦しようと思わなくなってしまう。

リーダーの自己防衛心
で、
メンバーとの信頼関係が失われ、チーム内の心理的安全性が保たれない。互いに言いたいことが言えず、チームとしての一体感が失われ、組織が一丸となって取り組むことができなくなってしまう。
(守屋智敬(2019),『アンコンシャス・バイアス マネジメント』かんき出版 p.4より)

 このアンコンシャス・バイアスの正体は「自己防衛心」なのだそうです。
脳がストレスを回避するために、自分にとって都合のよい解釈をすることによって起きるそう。
 この「自己防衛心」から、自分の都合を優先したり、自分の要望を叶えようとするときに、人は知らず知らずの内に、「決めつける」「押しつける」といった言動をとってしまうようです。
 自分にもある無意識の決めつけや押し付けをまず知るということが大事とのこと。私自身もプロボノの活動をする以前は「子どもがいるから、転職はできないだろう」などいろいろな決めつけを自分に対して持っていました。また私もできるだけいろいろ想像できるようにと思っていても、誰かを知らないうちに傷つけていることもあるかもしれません。
 この本を読むことで代表的なアンコンシャス・バイアスの事例とともに実際どうするとよいのかも知る事ができます。

この書籍では代表的な15のアンコンシャス・バイアスも「こんなことはありませんか?」「起こりうる問題例/影響」「大切なこと」をあわせて紹介されています。

職場の人間関係や仕事に影響する代表的なアンコンシャス・バイアス
1 確証バイアス(自分に都合のいい情報ばかりに目がいってしまう)
2 ステレオタイプ(人の属性や一部の特性をもとに先入観や固定概念で決めつけてしまう)
3 ハロー効果(相手の一部の長所ですべてがよく見える)
4 正常性バイアス(周りが変化していたり、危機的な状況が迫っていても、「私は大丈夫」と、自分に都合のいいように思い込んでしまう)
5 権威バイアス(権威ある人が言うことは、間違いないと思い込む)
6 コミットメントのエスカレート(過去の自分の意思決定を正当化してしまう)
7 アインシュテルング効果(慣れ親しんだ考え方やものの見方に固執してしまい、他のものの見方に気がつかない)
8 集団同調性バイアス(周りと同じように行動してしまう)

キャリアや成長に影響する代表的なアンコンシャス・バイアス

9 ステレオタイプ脅威(自分の「属性」に対する否定的な固定観念が呪縛となる)
10 自己奉仕バイアス(成功は自分の手柄であり、失敗の責任は自分にはないと思い込む)
11 専門偏向(自分の専門領域でものごとを考えてしまう)
12 サンクコスト効果(費やした時間や労力を考えてしまい、やめた方がいいことでもやめられなくなる)
13 バラ色の回顧(過去を美化してしまい、今を否定してしまう)
14 ダニング・クルーガー効果(等身大の自分を隠して過大評価してしまう)
15 インポスター症候群(能力があるにもかかわらず、自分を過小評価してしまう)
(守屋智敬(2019),『アンコンシャス・バイアス マネジメント』かんき出版 p.26-p.29より)

 アンコンシャス・バイアスを抱きやすくなる背景に、他人と比較するからこそ「能力が低い・高い」といったような「自己防衛心」や「嫉妬心」が生まれやすくなる部分もあるようです。
(他人との違いで自分を知る面もあると思うのですが、何かのモノサシで比較しそこに囚われるとまずいのかなと思ったり。「ヤマアラシのジレンマ」じゃないけど近づきたいけど、傷付きたくないのような。)

「私は私。あの人はあの人。それぞれに意味があり、そこに優劣はない」
(守屋智敬(2019),『アンコンシャス・バイアス マネジメント』かんき出版 p.120より)

という感覚を持ち、チームメンバーに対しても誰かや何かとの比較でなく、一人ひとりを見られる状態はやっぱり大切なんだなと思うことができました。

 何事もバランス。変に凝り固まらないためにも同じ場所から意識的に出て「越境」すること。できるだけいろいろな人と出会うこと。その中で新たな経験で「失敗したらどうしよう」という思い込みを塗り替えること。
 先日「これからの生き方。」の感想で書いたように一つのところで集中する時も大事だけれど、「本業では一つのことに打ち込み、副業や趣味で分散させる」という生き方は自分の中の「枠」を広げる、いろいろな人と価値観に出会うきっかけとしても有用な気がします。

 一見真逆に見える、自分を疑いながら、自分を大事にできる人でありたい。
きっとそうあることで自分も幸せに、周りも幸せに生きられるんじゃないか?と思っています。

#読書感想文 #アンコンシャスバイアス #本 #ダイバーシティ #多様性

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?