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夜を乗り越える

 『火花』で芥川賞を獲った又吉直樹さんの「なぜ読書をするのか」という問いの彼なりの答えが書かれている本だ。ちょっとクスッときて、グッとくる熱さもあって、すべての本への愛情が感じられるとてもいい本で、1冊本を紹介するならこの本をオススメする。そうすれば読書が好きになっていくと思うので。

夜を乗り越える

 ふと昨年末、読んだことがない分野の本を読みたいと思い又吉さんの『第二図書係補佐』を手に取った。推理小説や冒険小説のようないわゆる大衆文学を多く読んでいた私にとって、エッセイのような書評のような本は初めてで、又吉さんの細やかな着眼点に惹かれていった。

 『第二図書係補佐』という本は一冊400文字程度の、本そのもの内容というより又吉さん自身の体験を通じた本の紹介だった。あっという間に読み進んだが面白すぎて読み切るのがもったいなく感じて、一日に一冊の紹介だけ味わって読んだ。

 本書はそんな又吉さんの「読書について」の本だ。どんな視点で本を読んでいるのか、どこに面白さを感じているのか、どんな思いで『火花』を書いたのか、太宰・芥川などの好きな作家について、とても誠実に自分の考えをはっきりと述べていた。

 又吉さんが読書についての本に『夜を乗り越える』と付けた意味が痛いほどわかってしまう。まさにそのために読んでいた時があったけど、充実しているときもそのあとに訪れた。そんなこともあり、この本は誰かの支えになれる本だと思う。



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