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マイクロノベル集 163「ココだけの秘密」

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あなたに褒めてもらいたくて集めたの。すごいね。かわいいね。格好いいよ。綺麗だよ。偉いね。すてきな言葉を理論体系化して編み上げる。すごいね。かわいいね。格好いいよ。綺麗だよ。偉いね。あなたを褒めてあげたくて集めたの。


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「この道には秘密があってね。曲がっているように見えるけれど、実はまっすぐ進めるんだ。この先は妖精の世界さ」そんな馬鹿なと思ったけれど、本当にあった。道の奥には立て看板。「注意! この先行き止まり」よっぽど妖精の世界に来る人間が多いんだな。



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「それなら、あと少しだけ一緒にいる」彼女はぼくに神経を接続する。歩くとか、お茶を飲むことなんてAI任せでいいけれど、ぼくの心の機微を知っているのは彼女だけだから。「あなたは欲張りだから困る」彼女は頬を膨らませる。ぼくは頬を引きつらせて苦笑する。


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袋の中にはマフラーが一本。いま買ったのは手袋なのに。「では、譲ってもらえないか?」稲荷神社の狐の提案に乗ったところ家のポストに片方だけの手袋が届いた。はめると、不思議なことに狐の手の感触が伝わる。あっ、これは狐相撲をやってるな。

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