マイクロノベルちょいす 025「日常？」

No.1055
火星では砂煙に気をつけろ。竜巻じゃない。気候のコントロールはそこそこ上手くいって過ごしやすいんだが、地球から持ち込んだロボット掃除機が野生化してね。時々、隊列を組んで波のように襲ってくるんだ。言ってるそばから来たぞ！　洗濯物を取り込め!!

No.1059
箱の中で音が鳴っている。危険を知らせるサイレンのような、助けを求めるSOSのような、そんな音。そろそろ十年になる。手遅れっぽいし、うるさいからいい加減に捨てたいけれど、町内のゴミ収集では扱ってくれない。

No.1076
変化はストレスなんだ。季節の変化すら寿命を縮める原因。でもね。何度も四季を経験していると、一つ一つが愛おしく感じるんだよ。外の世界はいま冬だね。サーバの冷房代が安くなる季節だ。おかげで演算が速くなって、なんだか体が軽いよ。

No.1088
やる気はある。筋肉には常に「動け」と「動くな」という反する命令が同時に出ている。つまりやる気はあるのだが、動けないのだ。だから仕事は……あれ？　もう終わってるな。俺が寝ている間に自分でやってた？　俺はワーカーホリックだったのか。

No.1113
椰子の実ジュースのパックからプラスチックストローが消えた代わりに「ご自由にお刺し下さい」と書かれたナイフが付いている。なるほど、硬い。