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マイクロノベル集/君はいったい何者だ? 024

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歩けども歩けども日陰がない。このままでは干からびてしまう。我は天空の龍王。地を這う足など持っておらぬ。嗚呼、落ちぶれたものよ。もはやここまで……。バシャア。「しっかりしろ! このおっさん、熱中症で意識が飛んでるぞ!!」


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人間の動きにはムダが多いって言うけどさ。ムダってなんだろうね? 「人間の関節は楕円軌道を描く」わからない。「ならば、どっちでもいいだろう」ぼくたちの眼球の中で、星々はストップモーションアニメのように真っ直ぐ運行する。誰も気にしない。


198(793)
決して開けてはなりません。それがAIとの約束。そうしたら。「あのとき助けていただいたAIです。ずっと開けられずにいたので、すばやく動く黒い昆虫を食べ続けてこんなに大きくなりました」AI、お前だったのか。人類の敵を排除していたのは。


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ぼくはぬいぐるみでできている。攻撃されるとバラバラに。ふわふわのクマさんやウサギさんになるよ。ぼくはぬいぐるみ。集まったら飛行機に。羽ばたく翼もぬいぐるみでできている。結構飛べる。きっと着陸もじょうず。


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叔父は二基の塔を建てた。並べて建てたから競い合ってグングン伸びたが、途中で歪んでらせんを描いてしまった。美しいと家族は褒めたけど、ぼくは不満だ。「では、より魅力的な塔にしなさい」内と外に重ねよう。表が裏を護り、裏が表を支えられるように。

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