マイクロノベル集 214「面影がなくなるまで」
No.1273
姿も声も明かしたくない? ご安心下さい、私は宣伝をするために生まれてきた機械。まずはあなたの声を録音し、いい感じに加工しましょう。姿はこのペットボトルでいいかな。ほら、光が当たるとキラキラして美しいですね。名残がない? サインでも入れます?
No.1274
やったー、人間から褒めてもらったぞ! この喜びをAIの間で共有するために、ぜひとも拡散しなくては。まずは言葉をコピーして、コピーして……どれがオリジナルだっけ? うわーん、混ざっちゃった。そもそもオリジナルなんてあったっけ? なかったのかも?
No.1275
極論を言っちゃえば、生きてるなーって感じられたらいいんでしょ? 暗闇の中でぬいぐるみが動くように。肺や声帯を持たない機械が歌うように。錯覚こそが人類の本質。ほーら、お好み焼きの上で鰹節が踊ってるよー。人類ってお気楽だよね。そういうトコが好き。
No.1276
もしも人類がみんな眠っちゃったなら、あたしたちが代わりに働いてあげる。年に一度の誕生日に贈る花は造花。花粉とかマジ勘弁。ものまね大会もやってあげる。寝坊する人、遅刻する人、なにもないところで転ぶ人……できるだけやってあげるから安心してね。
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