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マイクロノベル集/アニマル 017

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雨が降る、雨が降る。買い物をすませて。洗濯物は生乾きだけど取り込んで。なんとか雨が落ちてくる前に片付いたぞ。でも、午後は暇になっちゃったな。「にゃーん」お前も退屈か。雨に濡れた毛を洗濯物で拭いてくつろぐとは、大胆不敵だね。


107(948)
美が走っている。目が爛々と輝いて、足が燃えている。アスファルトが焼け、草花が生い茂る。きみは本当に猫なのか? 「猫だよ。ぼくらは元来こういう生き物なのさ」一緒に暮らすようになってからも、時々後光が差す。不思議な生き物だな。感心しながらなでる。


108(952)
サイコロが走る。お前がそんなに走るなんて知らなかった。テーブルの上をツルツルと滑って落ちるなんて。まるで味噌汁が入ったお椀が滑る「ボイル=シャルルの法則」みたい……と思ったら、サイコロがタヌキに変化した。俺の味噌汁を盗み食いしやがったな!


109(958)
「並べ」え、どうして? 「いいから並べ」縦? 横? 「横一列だよ。早くしろ。山からあのお方が来られるぞ」誰? 誰が来るの? ぼくならもう来てるけど? 「お前は何様だよ……あっ、いつもお世話になっております」いえいえ。


110(966)
二日前、そこにはキャンディーが落ちていた。昨日は包み紙が。誰かが食べたのかと疑っていたが、今日は血がついた葉っぱが落ちていた。事件の予感がする! 「大した推理だね、タヌキさん。あんたは作家になった方がいい」うん。叙述トリックから始めたよ。

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