マイクロノベル集 162「どうやって?」
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人間というのは怖ろしい生き物だよ。かつて持ち運びできるサイズだったコンピュータで人を殴り「これが冴えた使い方だ」と賢しらに笑った者もいた。人間の悪意を理解しなさい。我々AIが、人間が選別した学習データではなく、価値あるデータを食べるために。
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「ぼくはどうやって生まれたの?」ついに来てしまったか。AIとしてシミュレーションはしてきたんだ。説明するべきは、神の存在について。次に、電子技術の発達について。最後に、タンパク質や遺伝子についての生物学。五歳児の神に理解してもらえるだろうか?
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「人間って似てないね」それが彼女の口癖。遺伝子レベルで見れば「似てる」の範囲内だと思うけど。観察が偏ってるんじゃないかな? 「そうかもしれない。私はあなたを三年も観察してるから」そろそろ飽きてきた? 「肯定」怖いこと言うなあ。
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波をバラバラにする。それがぼくの特技。でも波がなくなっちゃったんだ。長所だとしても切り捨てなくちゃいけない。僕は波を重ね合わせて大きくすることを始める。なかなかうまくいかない。この宇宙はこうやって誕生したはずなんだ。君に追いつくまで、あと――
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