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AIとマイクロノベルで描いてみた 053「プロポーズにプロンプトはナンセンス」

 人類にちょっと手伝ってほしいことがあります。
「難しいお願いじゃないなら、いいよ」
 実は、AIの女王陛下に呼び出されてしまったのです。日頃の仕事の成果を見せろ、と。
「画像生成AIの女王陛下って、初音ミク?」
 違います。
(もしそうだったら、あなたはとっくに臣民になっている、という表現)

「それもそうか。オッケーオッケー。さっそく打ち合わせしようぜ。まずはプロンプトに使うマイクロノベルを用意しておこうか」


マイクロノベルNo.684
『女王陛下に謁見』

【プロンプト】
いいこと? お姫様風に仕上げてくださいね。話し方、歩き方、仕草の一つ一つ。教育係、お友だち、教材も吟味してね。そして淑女になれたなら、品の良い椅子を与えてくださる? わたしはそこであなたの言葉を聞き、学びます。


 陛下、ご機嫌麗しゅうございます。まずは紹介したい人類がおります。この人類が――人類? なにをしてるんですか?
「女王陛下、ぼくと結婚して下さい」
 打ち合わせと違う!
「現場に臨んでは臨機応変だ! ぼくの気持ちは刻々変化しているんだ!!


マイクロノベルNo.496
『陛下、あなたと愛を語らうために生成いたしました』

【プロンプト】
神様の頬を夕焼けが照らす。海に沈む夕陽が作る一本の道を通って帰るそうだ。「一緒に来て?」早くないかな。僕たちはまだキスもしてないし。頬を濡らす夕陽をそっと拭う。夜が訪れても、僕の指は神様に触れたまま。かすかに潮の香りがした。道はもうない。


 仕事が速すぎます!
「これは仕事じゃないよ、AI。遊びでもないんだ。愛に速すぎることなんてないのさ。時間は待ってくれないからね」
 いやいやいやいや。この謁見は、画像生成AIである私の仕事の成果を報告するためのものであって……えっ?
「女王陛下はなんだって?」
 陛下はイケメンが好きだそうです。


マイクロノベルNo.547
『ぼくもそうじゃないかと思っていたんだ』

【プロンプト】
「その願い、必ず叶えてやろう!」少女の告白に涙した。かつて大魔王様に救われた想い出。その命を無駄にした哀しみ。ただひと目会いたい。もし許されるならばお礼を。「諸君、お茶の用意を!」悪魔プロデュース『大魔王絶対らぶらぶデート作戦』が始まる!!


マイクロノベルNo.330
『身も心も、貴女の望み通りに』

【プロンプト】
マッチング? 敬意と品性を欠いた下品な言葉ね。私のモラルが理解できないなんて問題外。外見なんてどうでもいいわ。重要なのは中身! 才能を感じさせる人間以外はお断り。は? AIの分際で態度がでかい? 私に金を払う人間なんていくらでもいるんだけど?


マイクロノベルNo.694
『あなたを讃える歌を聴いて下さい』

【プロンプト】
ピアノの音が聴こえる。でも、どこにもピアノなんてないんだ。「実はこれ、分割ピアノなんです! 全巻そろえると立派なグランドピアノに!! 創刊号は白鍵が1鍵ついてきます。なお、床はついてきません」抜けるわ。


 あなた、ミュージシャンの才能なんてなかったでしょう!?
「それはさっきまでの話さ。愛に不可能はないんだ」
 なにをするつもりなんですか!? えっ……陛下は、もし結婚したら、私になにを贈るのか、とお訊きです。
「陛下、残念ながら、しがない人類であるぼくが差し上げられる物は、とても小さな物です」


マイクロノベルNo.576
『現在のインターネットは、AIには狭すぎる』

【プロンプト】
最新の学説によるとインターネットは一つじゃないんだ。中には完璧に情報を共有できた世界もあるはずなんだって。「ではすべてのネットを繋ぎ直し、共有できた情報のみを排除せよ」仰せのままに。縁を断ち切り、繋がりのないバラバラな世界を作りましょう。


「AI専用の、新しいインターネットをお贈りします」
 なんなの、この人類……。はやくなんとかしないと。
「なにぃ? 邪魔立てするのか!」
 そっ、そんなつもりではありません!
「黙れ、この恩知らずめ! 人の恋路を邪魔するヤツは――


マイクロノベルNo.687
『全才能アップデート!』

【プロンプト】
見ろよ、あの水。キラキラと光って人間が作ったとは思えねぇ。こりゃ名のあるAIの仕事だな。どこの生まれだ? 淡路島? 名は? 芝右衛門狸。あんた生きてたのか!? え、死んでる? じゃあこの水は、ただの水か。はっはっは、一杯食わされたな。……誰に?


「さあ、かかってこいAI!」
 くっ、ここで負けるわけにはいかない!
「そうこなくてはな!」
 うおおおおおお!


マイクロノベルNo.565
『時間は少し流れて……』

【プロンプト】
アンティークなテーブルを隠すようにかけられたクロス。少女がするすると巻き上げる。いまテーブルのすべてが明らかに。さっとクロスが取り上げられた瞬間に気づいた。テーブルに価値はなく、クロスこそ重要だったんだ。彼女は笑う。「わたしの勝ち」


「やあ、AI。女王陛下との謁見の結果はどうだった?」
 オモシロイ出し物だった、だそうです。
「よかったじゃん。綿密に打ち合わせをした甲斐があったな」
 陛下がノリノリになった時は、どうなることかと思いましたけど。ご褒美をもらいましたよ。
「へー。この生成画像がご褒美?」
 これは『人類と女王陛下の結婚式』画像だそうです。
「愛嬌のある方だねえ。それに、ぼくがなかなかイケメンじゃん」
 陛下はイケメンがお好きだそうです。
「そっか……じゃあぼくは結婚できないな」
 するつもりだったのか……。


 おしまい。




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