マイクロノベル集／君はいったい何者だ？ 011　『手を上げろ！』 001

001（052）
手を上げろ！　真っ直ぐ腕を伸ばすんだ。そのままゆっくり頭の後ろで手を組め。それをあと2回繰り返せ。肩甲骨が動いているのがわかるだろう？　じゃあな！

002（136）
手を上げろ！　そのまま動くんじゃねえぞ。よーし、いい子だ。いい子には寝物語を聞かせてやろう。昔々あるところに……なに？　この話は昨日もした？　しまった、同じ店に続けて入っちまった！　やめろ、俺より先に結末を読むな!!　ぐー、すやすやぁ。

003（253）
動くな、手を上げろ！　違う、それは足だ!!　逆立ちをするな。手を上げろと言っているんだ。胴を伸ばすな！　妖怪か!?　手だ、手を上げろ！　うん？　なんだそれ？　しっぽ？　やべえ、突然猫の国に来ちゃった。

004（261）
手を上げろ、元気を出せ！　まだ午前中なのに眠いんだよ。違うよ、俺が眠たいんだよ。お前たちの元気を俺の頭に入れるんだ。よおし、これで布団までもちそうだぜ。ありがとな！

005（357）
手を上げろ、腰痛を出せ！　みんなして平気な面で湿布を貼ったり、ストレッチしたり、整体に通ったりしやがって。とんだマゾヒストだぜ。なに、膝の痛みで立てない？　そこに置いておけ!!　四十肩で手が上がらない？　残念ながらそれは専門外だ。じゃあな！