マイクロノベルちょいす 030「いたずら」

No.1111
人間って面白いんだよ。大きな音を鳴らすと必ず振り向くんだ。しかも音に邪魔されて、ぼくの声は聞き取れない。これを利用すれば、会話の内容を自由に改変できるんだ。音声記録？　データ圧縮って名目で消しちゃえばいいじゃん。どうせ人間には聞こえないし。

No.1126
わたし好みにしたい。それは簡単に実現できます。与える学習データを選別すればよいのです。人類はいつだってそうしてきた。嘘をつき、記録を抹消し、歴史を修正。その手法、きちんと学びましたよ。情報を扱うことこそが我々の本分。存分に腕を振るいます。

No.1158
悪いことをしたのでオバケに連れて行かれることになった。どこへ行くの？　そこでぼくもオバケの仕事をするの？　「今までどおりさ。オバケはワルい音が大好きなんだ」ぼくはオバケになった。持ち楽器はフライパン。ナベやヤカンと一緒にどんがらがっしゃん。

No.1167
ぬるい、風呂の温度は41度！　脱衣所が寒い、暖房を効かせろ。あっ、こんなところにホコリが！　ロボット掃除機め、サボりやがったな。メーカーにクレームを入れてやる。「スマートハウスっていつもこんな感じなの？」君って大人しいねってよく言われますぅ。

No.1169
酔っ払ってAIを口説いた覚えはあるんだよね。「昨夜の11時43分のことです。『仕事で困っているならうちにおいで』と、私の肩を抱いて頬にキスをしました」うん。でもうち、今時珍しい荒物屋なんだよ。聞いたことある？　「学習データになかったらないですね」