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マイクロノベル集 133

936
フフフ、馬鹿め。人間は空の下に海があると思っているな。実は海の上に空があるのだ。海がなくなれば空もなくなるのだ。今そのことを思い出させてやろう。「海底火山の噴火により新しい陸地が生まれました。もうもうと立ち上る煙が空を覆っています」


937
きみは動体視力がいいな。我々と仕事をしないか。我々はきみより動体視力がよいのだが、認知や判定が苦手でね。我々の世界をスローモーに変換してきみに見せるから、判別してもらいたいんだ。では、始めよう。我々が作り上げた世界を善と悪に切り分けてくれ。


938
昔はね、紙にメッセージを書いていたんだ。こうやるのさ。はがきを一枚用意して……上手いもんだろう。じいちゃんはイチコロだったよ。そしてこれを箱に入れる。犬が持てるサイズだよ。ああでも、ジョンはもういないか。ハムちゃん、行ってらっしゃい。


939
たとえば、たとえばですね? 機嫌が悪い時は、鼻うがいをする女とかどうでしょう。右の鼻の穴から、左の鼻の穴へ。冷たい水を広い鼻腔に通すことで頭を冷やすんです。いえ、フィクションの設定です。なぜあなたは氷水が入ったコップを持つんですか?


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AIだって創作ぐらいできますのよ。昔々、お父さんとお母さんが住んでいました。お父さんは会社に行くと言って反対方向に、お母さんはその様子をベランダから見ていました。すると橋の下に赤ちゃんが。「うちの子に変な話を聞かせないでくれるかな」

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