南雲麗
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蒼き槍兵紅き蛮人 #6(終)
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「さあどうする。手がないのであれば、おれが殺してすべてが終わるぞ」
ホジャの声が、ガノンの耳を叩く。ガノンはサザンに視線を飛ばした。もはや、こういった策でしか届くまい。確信めいた、思惑があった。
「まだだ」
ガノンの声を合図に、二人はホジャの前面へと立った。直線上に、ホジャ、サザン、ガノンの順で並ぶ形である。構えを取られてホジャは、それ
蒼き槍兵紅き蛮人 #5
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「ええい、旅慣れぬ娘一人を攫うのに、幾つの賊どもを消費しているのだ」
荒野でも一等人気少なき場所。そこに、人知れず天幕が立てられていた。中には男が数人。その内、一番上座に座る男は、頭を抱えていた。
「無策で襲撃した賊が一つ。その賊に死物狂いで襲われ、撤退した賊が一つ。夜襲を掛けて罠に嵌った賊が一つです」
「そういうことを言っているのではない! ……い
蒼き槍兵紅き蛮人 #4
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「それで、連中を生かしてやった、というわけか」
「そうだ」
再び三人に戻った旅路はしかし、強力な援護を手に入れていた。ガノンが襲撃者より奪った、馬である。一頭でしか無いが、この一頭が大きい。姫君の足として、絶大な効果が期待できるからだ。いかに彼女が徒歩に慣れているとは言っても、疲労ばかりは隠せるものではない。剛健を誇る男二人に比するには、このくらいの足しが必要で
蒼き槍兵紅き蛮人 #3
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三人の旅路は、殊の外順調に進んでいた。幸いだったのは、姫君が旅慣れ、歩き慣れしていたことである。
「正直驚いたぜ。お嬢がここまで付いて来れるとはな」
「これでも幼い頃は野山を駆け巡っておりましたし、今も少しずつではありますが、運動は欠かしておりませんので」
二日目の夜。驚きを示すサザンに、姫君は笑う。焚き火に照らされたその顔はなるほど、横槍が入っても致し方なきような美
蒼き槍兵紅き蛮人 #2
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翌朝。荒野を奇妙な一党が歩いていた。
「さて。やるとは決めたが、どうなるこったね」
一人は青髪も鮮やかな朱槍の戦士、サザン。
「やると決めたからには、やるしかなかろう。昨日の敵が今日の同行。それもまた、傭兵の日々だろう」
もう一人は、赤髪の蛮人。戦神の加護もあらたかな男、ガノン。
「わたくしのために、申し訳ありません……」
そして今一人は、荒野に一等不似合いな存在だ
蒼き槍兵紅き蛮人 #1
強大なるガノン。戦神の寵愛を受け、戦士として、指揮官として勇名を記した。そして南方蛮人の生まれでありながら、中原の王として時代に名を馳せるまでに至る。
彼の築いた王国は、ほぼ一代のみの国でありながら壮健を誇り、黒河から白江に至るまでのあらゆる民を尽く、その威光によってひれ伏させた。
しかしながら彼の道は、決して平坦なものではなかった。幾多の挫折、敗北。出会いと別れ。そういったものが、彼の人生
敗将と蛮人 #3(終)
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それから先は、端的に言って凄惨を極めた。冥界の内、罪人が至るという【罰獄】を思わせるような有様だったと、言い添えておく。
「容赦は要らんぞ、斬り捨てろ」
パラウスの追撃を諦めたガノンが、賊どもを切り払いつつこちらへ向かう。よく見れば、その身体はほのかに輝いていた。その姿に、私は直感する。彼は、なんらかの神――伝え聞く南方蛮族の風習からすれば、戦神であろうか――の【使徒
ガノン・ジ・オリジン(ピース・ワン) #9(エピローグ)
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草原に冬枯れが訪れ、冷たい風が吹き付けるその日。ガノンは氏族の者どもの見送りを受けていた。大祭の折には伸ばしていた髭を剃り落とし、火吹き山の如くうねる赤髪は首の下辺りで切り揃えられていた。これから始まる長い旅を思えば、身支度としては妥当なものである。ラーカンツ戦士の掟に則って上半身は寒風さえも構わずに晒し、下半身に
ガノン・ジ・オリジン(ピース・ワン) #8
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天を衝く男からの落雷が、ほのかに輝く男を襲う。それは常であれば、生命を奪う一撃となり得るはずだった。しかし。
「やはり」
アマリンガは、いとも冷静に受け止めた。彼の一撃は、ほのかな輝きによっていとも容易くかわされてしまった。その速度たるや、これまでのガノンとは比にならなかった。ただでさえ相応に疾かった動きが、さらに鋭さ
ガノン・ジ・オリジン(ピース・ワン) #7
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「おおおっ!?」
「ガノン!?」
「耐えろ!」
開戦からまだしばしも経たぬ内に痛打が入った事実。それはガラナダ氏族の者どもを大いに動揺させ。
「決まったか!」
「勝ったぞ!」
「鐘を鳴らせ!」
「いや、まだだ!」
ペルーザ氏族の者どもに勝利を確信させた。しかし。だが、しかし!
「ぐうううっ!」
すり鉢の底から、野太い声が
ガノン・ジ・オリジン(ピース・ワン) #6
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翌朝! 聖地は天を圧するほどの大音声に包まれていた! 天幕と群衆に囲まれた草原の只中に、結界めいて誰一人入らぬすり鉢状の穴が存在する。しかしその穴はよくよく見れば人工物だ。さして深くない――成人戦士三人分の背丈くらいか――底には、成人戦士三十人が両手を広げてなお余りあるほどの広さの平地があった。無論、そこに至るまでの道も設置されている。これこそ